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新婚編
裁判長は途方に暮れる
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ラダマンティス視点です
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「妻を娶ることになった」
ラダマンティスが聞いたのはハデスが帰還したことを祝う席でのことだった。皆が一様に驚く中、更に爆弾発言が続いた。
「ペルセポネが私の妃としてこのエリュシオンに滞在するのは年に3か月だけ…。」
その言葉にラダマンティスは嫌な予感がした。彼は地獄の裁判長を務めている。その彼がハデスの言葉に嫌な予感がした原因は『三か月だけ』の妻だという点だった。つまり、その間ペルセポネにベッタリと甘い時間を過ごすことが考えられた。だから、その間は普段の政務はしないと言いだすのではないか。そう思ったのである。
「はぁ。胃薬は私の永遠の友のようです」
などと独りごちたのは言うまでもない。そして、翌日それが現実となったわけである。
「ラダマティス」
「はい。何でございましょう」
「ペルセポネがこちらにいる間、裁定はすべてお前に任せる」
「…………………」
(やっぱり言われてしまいました。つまり、死者の裁きはしないってことですよね。でも、最重要案件くらいはやってくださいますよね?)
ラダマンティスはそう期待を込めて視線を合わせたのだが・・・。
「すべて其方の判断に任せる。私は一切口を挟まないからそのつもりで励んでくれ」
ヒュゥゥゥゥゥゥ
ラダマンティスには木枯らしが私の目の前を通りすぎる音が聞こえた。これについては決定事項で覆ることはないようだ。
(どうしましょうか?私の胃に穴が開きそうです。とりあえず、皆さんに相談してきましょうか)
ラダマンティスは重くなた足を引きずりその場を後にしたのだった。
****************************************************************
――――――――ヘカーテの執務室――――――――
「…というわけなんです」
「それはお気の毒です」
「どうにかする方法はないでしょうか?」
「ございません」
「………………」
「我が君の命は絶対です」
「それはそうですが」
「ならば、受けた以上はこないしてください」
ラダマンティスは取りつく島もなかった。どうやら相談する相手を間違えたようである。ラダマンティスはがっくりと肩を落としその場を後にした。
****************************************************************
――――――――ヒュプノスの執務室――――――――
「…というわけなんです」
ラダマンティスはヘカーテと同じ話をする。ヒュプノスは少し考えるふうに顎に手をやる。そして、一つ息を吐き出して彼に向き直った。
「ラダマンティス」
「はい」
「残念ですが、それは私にもどうしようもできませんよ」
「え?」
「我が君はこうと決められたら決して覆すことはありませんから」
「あ…」
「という訳で、今回の件は諦めてください」
ニッコリ笑って、ぴしゃりと話を終わらせてしまう。ラダマンティスは途方に暮れ神殿内をフラフラと歩くことになってしまったのだった。
****************************************************************
――――――――冥府軍・練兵場――――――――
気が付くと、ラダマンティスは普段立ち入ることのないここへ辿り着いていた。
「あれ、珍しいじゃんか?」
「タナトス…」
「どうした? そんな暗い顔して」
タナトスの心配そうな声にラダマンティスの感情は決壊してしまう。そして、子供のようにみっともなく泣きじゃくった。
「申し訳ありません」
「いや、別にいいけど」
「本当に申し訳ない」
「で、何があった?」
「我が君から奥方が滞在される3か月間は最低に一切関わらないと」
「ははは。それはご愁傷さま」
「どんな重要案件も自身で判断せよとおっしゃるのですよ!!」
「だったら、自分ですりゃいいじゃん」
「しかし!!」
「何年『地獄の裁判長』やってるんだ?もっと、自分に自信持てよ」
「ですが」
「心配せんでも、何とかなるさ。お前はスゲェ有能なんだからさ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。もっと自信持ちなって。それにお妃さまが来るまではまだ時間あるから、難しい案件は今のうちに振っとけよ」
「なるほど」
「逆転の発想って奴だな。三か月間、仕事しないっていうなら。残りの期間で三か月分を上乗せして働いてもらえばいいんじゃないか?」
「あ・・・」
タナトスの言葉はまさに『目から鱗』。
「そうですよね。我が君の3か月分の仕事を前倒しでこなしてもらえばいいだけです」
「そういうことだ」
善は急げ。ラダマンティスはすぐに取り掛かるべく、頭の中で整理をし始める。後手に回るとハデスはのらりくらりと交わされるに決まっているからだ。
「タナトス、ありがとうございました」
「おう、何だか知らんが元気になったのなら良かった」
「では、私は準備に取り掛かりますのでこれで失礼します」
そう言い残して練兵場を後にしたラダマンティスの足取りは軽くなっていた。
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――――――――ラダマンティスも執務室――――――――
ラダマンティスはペルセポネを迎えるまでのプロセスを練ることから始める。兎に角、自身の職務に支障が出ないようにするためにはどうすべきなのか。それだけを考え、手順書を作成していく。
「ふぅ…。できました」
二日ほど練ってようやく完成したそれは惚れ惚れするものであった。
(これなら私の職務が激増することはないでしょう)
それを持ってハデスの元へと向かう。
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――――――――ハデスの執務室――――――――
ラダマンティスは扉をノックする。
「ラダマンティスでございます」
「入れ」
ラダマンティスはゆっくりと扉を開ける。正直、今携えた予定表に目を通したハデスがどう反応されるか恐ろしくもある。
「何かあったのか?」
「何、という訳でもありませんが」
「?」
「これに目を通していただきたく」
「なんだ?」
先ほど完成したばかりの予定表をハデスに差し出す。
「これは?」
「今後の予定表でございます」
「何故このようなものを?」
「3か月の間全ての最低を私に任せるということは我が君がその期間は休養されるということと取りました」
「だから?」
「ですので、残りの期間で休養中に裁定いただくであろう分量を上乗せしてこなしていただくことにします。なので、早速ですがこちらの案件の決裁を至急お願いします」
ラダマンティスは後ろに控えていた部下に目配せして持参した書類をハデスの机にドカッと積み上げた。その量の多さにハデスの顔が引きつっている。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「これくらいはこなしていただきませんと。何せ、3か月分我が君の仕事を肩代わりするのですから」
「…………」
「そうそう、大変ですからこれも置いておきますね」
そう言って、置いたのはラダマンティス愛用の胃薬。ハデスがげんなりした顔をしていたのは言うまでもない。逆にラダマンティスの気持ちは晴れたわけだが。
「では、よろしくお願いします」
それだけ言うとラダマンティスは部下と一緒にハデスの元を辞した。
(我が君が蜜月過ごしてる間私はヒィヒィ言いながら仕事こなすわけですから、これくらいはしてくださいね)
ラダマンティスの気分は少しだけ上向きになった。
「念のため胃薬多めに買っておくかな?」
ラダマンティスは冬の間のことを考え、新しい胃薬をどこに発注するか思案しする。
(奥方になるペルセポネ様がお優しい方であってくれるといいのですが。地上ではそろそろ収穫祭でしょうか?)
間もなくやってくる冬の季節を思いながらラダマンティスは自身の仕事に戻るのであった。
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「妻を娶ることになった」
ラダマンティスが聞いたのはハデスが帰還したことを祝う席でのことだった。皆が一様に驚く中、更に爆弾発言が続いた。
「ペルセポネが私の妃としてこのエリュシオンに滞在するのは年に3か月だけ…。」
その言葉にラダマンティスは嫌な予感がした。彼は地獄の裁判長を務めている。その彼がハデスの言葉に嫌な予感がした原因は『三か月だけ』の妻だという点だった。つまり、その間ペルセポネにベッタリと甘い時間を過ごすことが考えられた。だから、その間は普段の政務はしないと言いだすのではないか。そう思ったのである。
「はぁ。胃薬は私の永遠の友のようです」
などと独りごちたのは言うまでもない。そして、翌日それが現実となったわけである。
「ラダマティス」
「はい。何でございましょう」
「ペルセポネがこちらにいる間、裁定はすべてお前に任せる」
「…………………」
(やっぱり言われてしまいました。つまり、死者の裁きはしないってことですよね。でも、最重要案件くらいはやってくださいますよね?)
ラダマンティスはそう期待を込めて視線を合わせたのだが・・・。
「すべて其方の判断に任せる。私は一切口を挟まないからそのつもりで励んでくれ」
ヒュゥゥゥゥゥゥ
ラダマンティスには木枯らしが私の目の前を通りすぎる音が聞こえた。これについては決定事項で覆ることはないようだ。
(どうしましょうか?私の胃に穴が開きそうです。とりあえず、皆さんに相談してきましょうか)
ラダマンティスは重くなた足を引きずりその場を後にしたのだった。
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――――――――ヘカーテの執務室――――――――
「…というわけなんです」
「それはお気の毒です」
「どうにかする方法はないでしょうか?」
「ございません」
「………………」
「我が君の命は絶対です」
「それはそうですが」
「ならば、受けた以上はこないしてください」
ラダマンティスは取りつく島もなかった。どうやら相談する相手を間違えたようである。ラダマンティスはがっくりと肩を落としその場を後にした。
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――――――――ヒュプノスの執務室――――――――
「…というわけなんです」
ラダマンティスはヘカーテと同じ話をする。ヒュプノスは少し考えるふうに顎に手をやる。そして、一つ息を吐き出して彼に向き直った。
「ラダマンティス」
「はい」
「残念ですが、それは私にもどうしようもできませんよ」
「え?」
「我が君はこうと決められたら決して覆すことはありませんから」
「あ…」
「という訳で、今回の件は諦めてください」
ニッコリ笑って、ぴしゃりと話を終わらせてしまう。ラダマンティスは途方に暮れ神殿内をフラフラと歩くことになってしまったのだった。
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――――――――冥府軍・練兵場――――――――
気が付くと、ラダマンティスは普段立ち入ることのないここへ辿り着いていた。
「あれ、珍しいじゃんか?」
「タナトス…」
「どうした? そんな暗い顔して」
タナトスの心配そうな声にラダマンティスの感情は決壊してしまう。そして、子供のようにみっともなく泣きじゃくった。
「申し訳ありません」
「いや、別にいいけど」
「本当に申し訳ない」
「で、何があった?」
「我が君から奥方が滞在される3か月間は最低に一切関わらないと」
「ははは。それはご愁傷さま」
「どんな重要案件も自身で判断せよとおっしゃるのですよ!!」
「だったら、自分ですりゃいいじゃん」
「しかし!!」
「何年『地獄の裁判長』やってるんだ?もっと、自分に自信持てよ」
「ですが」
「心配せんでも、何とかなるさ。お前はスゲェ有能なんだからさ」
「そうでしょうか?」
「そうだよ。もっと自信持ちなって。それにお妃さまが来るまではまだ時間あるから、難しい案件は今のうちに振っとけよ」
「なるほど」
「逆転の発想って奴だな。三か月間、仕事しないっていうなら。残りの期間で三か月分を上乗せして働いてもらえばいいんじゃないか?」
「あ・・・」
タナトスの言葉はまさに『目から鱗』。
「そうですよね。我が君の3か月分の仕事を前倒しでこなしてもらえばいいだけです」
「そういうことだ」
善は急げ。ラダマンティスはすぐに取り掛かるべく、頭の中で整理をし始める。後手に回るとハデスはのらりくらりと交わされるに決まっているからだ。
「タナトス、ありがとうございました」
「おう、何だか知らんが元気になったのなら良かった」
「では、私は準備に取り掛かりますのでこれで失礼します」
そう言い残して練兵場を後にしたラダマンティスの足取りは軽くなっていた。
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――――――――ラダマンティスも執務室――――――――
ラダマンティスはペルセポネを迎えるまでのプロセスを練ることから始める。兎に角、自身の職務に支障が出ないようにするためにはどうすべきなのか。それだけを考え、手順書を作成していく。
「ふぅ…。できました」
二日ほど練ってようやく完成したそれは惚れ惚れするものであった。
(これなら私の職務が激増することはないでしょう)
それを持ってハデスの元へと向かう。
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――――――――ハデスの執務室――――――――
ラダマンティスは扉をノックする。
「ラダマンティスでございます」
「入れ」
ラダマンティスはゆっくりと扉を開ける。正直、今携えた予定表に目を通したハデスがどう反応されるか恐ろしくもある。
「何かあったのか?」
「何、という訳でもありませんが」
「?」
「これに目を通していただきたく」
「なんだ?」
先ほど完成したばかりの予定表をハデスに差し出す。
「これは?」
「今後の予定表でございます」
「何故このようなものを?」
「3か月の間全ての最低を私に任せるということは我が君がその期間は休養されるということと取りました」
「だから?」
「ですので、残りの期間で休養中に裁定いただくであろう分量を上乗せしてこなしていただくことにします。なので、早速ですがこちらの案件の決裁を至急お願いします」
ラダマンティスは後ろに控えていた部下に目配せして持参した書類をハデスの机にドカッと積み上げた。その量の多さにハデスの顔が引きつっている。だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「これくらいはこなしていただきませんと。何せ、3か月分我が君の仕事を肩代わりするのですから」
「…………」
「そうそう、大変ですからこれも置いておきますね」
そう言って、置いたのはラダマンティス愛用の胃薬。ハデスがげんなりした顔をしていたのは言うまでもない。逆にラダマンティスの気持ちは晴れたわけだが。
「では、よろしくお願いします」
それだけ言うとラダマンティスは部下と一緒にハデスの元を辞した。
(我が君が蜜月過ごしてる間私はヒィヒィ言いながら仕事こなすわけですから、これくらいはしてくださいね)
ラダマンティスの気分は少しだけ上向きになった。
「念のため胃薬多めに買っておくかな?」
ラダマンティスは冬の間のことを考え、新しい胃薬をどこに発注するか思案しする。
(奥方になるペルセポネ様がお優しい方であってくれるといいのですが。地上ではそろそろ収穫祭でしょうか?)
間もなくやってくる冬の季節を思いながらラダマンティスは自身の仕事に戻るのであった。
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