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プロローグ
異国への旅立ち
しおりを挟む大海を4隻のガレオン船が編隊を汲んで航行する。その中で最も大きな船の監視台に立っていた少年が遠くに陸地を見つけ、甲板に向かって叫ぶ。
「頭領! 陸が見えてきました!!」
「漸くか…。」
頭領と呼ばれた青年が船首に向かい、少年の指し示したほうを見やる。それに続き真紅の生地に錦糸で六文銭をあしらった陣羽織を羽織った壮年の男と黒の陣羽織に大槍を持った壮年の男。
「秀頼様、いよいよですな。」
「ここからが本番だ。 皆、頼りにしているぞ。」
「秀頼様、先陣はこの又兵衛にお任せあれ!
この無双の槍にて南蛮人など黙らせて見せましょうぞ!!」
「又兵衛殿、戦に参るわけではありませんぞ。」
「何を言う。 儂はいざという時のためにだな…。」
そんなやり取りをする親父二人に苦笑いしか出てこぬ秀頼。
「秀頼さま。」
「千か…。」
「とうとう、ここまで来ましたね。」
「だが、これからよ。 ここから先は俺たちだけで切り開いていかねばならぬ。」
「ですが、千は楽しゅうございます。」
「俺もだ。」
秀頼は妻である千を抱き寄せ、徐々に大きくなり始めた陸地を見つめる。
「大助! 又七郎や忠輝にも合図を。」
「御意!」
秀頼は見張り台にいた少年に大声で指示をする。すると、手旗を用いて他の船に合図を送る。それぞれの船へも指示が伝わったのか、甲板上は慌ただしくなり始める。
皆一様にその顔は期待に心躍らるようであった。
故郷を追われざるを得なかった者たちを率いて飛び出した秀頼はその期待の重さが肩にのしかかる。だが、それでも自ら望んだことだと鼓舞する。
それに気づいたのか、そっと寄り添う妻・千の笑顔に彼の心は救われる。
(ようやくここまで来た。 ここまで来るのは長い道のりであった…。)
秀頼は既に東のかなたに消えてしまった故郷でのことを思い出すのだった。
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お読みいただきありがとうございます。
次回より過去が語られます。
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