3 / 17
第一章『星の奇跡編』
星の奇跡 ―2―
しおりを挟む
モニカ・エストレイラは魔法が使えない。
通常、初等教育が完了する頃には、個人差はあれどほとんどの基礎魔法を使えるようになるはずだった。モニカも例に漏れず、「魔法の発現が少し遅い子」だと思われていた。だが、モニカが12歳になっても魔法は発言しなかった。飛翔、引寄、光源、防御魔法……など、数ある魔法のたったひとつでさえ、モニカは扱うことが出来なかったのだ。しかし幸いなことに、明るく、社交的だったモニカは魔法が使えずとも周囲に馴染むことができていた。
そう、魔法が使えないことは、モニカにとって大した問題ではなかった。問題だったのは、それでいて、モニカが「特別」だったからだ。
(また……視える)
魔法の代わりにモニカに与えられた力。それは、「見えないものを見る目」だった。物心つく前から、モニカには実体のない「何か」が見えていた。
(星……綺麗だなぁ)
モニカの見上げた夜空に、星はなかった。三日月の浮かぶノーチェスの空は、一瞬でも気を緩めてしまえば吸い込まれてしまいそうなほど深い藍で染まっている。星など、あるはずがない。
モニカは時折、今日のように芝生の上で大の字になりながら、愚痴をこぼすことがある。子供の頃からのストレス発散だったそれは、歳を重ねるごとに増えていき、14歳になった今では週に2、3回にまで増え、今では習慣になってしまった。
「……こんな「目」じゃなくて、魔法を使いたかったな」
モニカの目には、何が見えているのか。それは本人もよく分かっていなかった。それは幽霊かもしれないし、妖精かもしれないし、妖かもしれない。もしくは気とも言えるだろう。少なくとも、モニカは「この世のものではない何か」と繋がっている。
「も~! なんで運命ってこんなに残酷なの~!」
そう、繋がっているのだ。本人は気づきもしていないが、モニカは、この世と、この世ではないどこかの世界を繋ぐ架け橋になっている。そして、何かの拍子に、その2点を繋ぐ「扉」が開いてしまったら……一体どうなるだろうか。
「はぁ~あ、何かの間違いで魔法、使えるようにならないかな」
ふと、空を見上げて、モニカは母の言っていたおまじないの言葉を思い出した。今でも、心の中で唱えると、心が落ち着く言葉。
「……”ストラト・ステラ”」
思えば、初めてその言葉を口に出したような気がした。どんな時でも、モニカを安心させてくれる魔法のような言葉。
(星……私にしか見えない、空に浮かぶ景色……)
モニカが自分だけの景色に浸っていると、ふと、空に一筋のほうき星が流れた。指を組んで、願いを星に込める。このほうき星が消えるまでに……
(……願い事とか、あんまり思い浮かばないけど、もし、私の願いが叶うのなら、どうか――)
ほうき星が宇宙を駆ける。9つの尾を引き、ノーチェスの宙を廻る。星を伝い、まるで何かを描くように流れるほうき星は、やがて……
(あれ、落ちてきてない……?)
通常、初等教育が完了する頃には、個人差はあれどほとんどの基礎魔法を使えるようになるはずだった。モニカも例に漏れず、「魔法の発現が少し遅い子」だと思われていた。だが、モニカが12歳になっても魔法は発言しなかった。飛翔、引寄、光源、防御魔法……など、数ある魔法のたったひとつでさえ、モニカは扱うことが出来なかったのだ。しかし幸いなことに、明るく、社交的だったモニカは魔法が使えずとも周囲に馴染むことができていた。
そう、魔法が使えないことは、モニカにとって大した問題ではなかった。問題だったのは、それでいて、モニカが「特別」だったからだ。
(また……視える)
魔法の代わりにモニカに与えられた力。それは、「見えないものを見る目」だった。物心つく前から、モニカには実体のない「何か」が見えていた。
(星……綺麗だなぁ)
モニカの見上げた夜空に、星はなかった。三日月の浮かぶノーチェスの空は、一瞬でも気を緩めてしまえば吸い込まれてしまいそうなほど深い藍で染まっている。星など、あるはずがない。
モニカは時折、今日のように芝生の上で大の字になりながら、愚痴をこぼすことがある。子供の頃からのストレス発散だったそれは、歳を重ねるごとに増えていき、14歳になった今では週に2、3回にまで増え、今では習慣になってしまった。
「……こんな「目」じゃなくて、魔法を使いたかったな」
モニカの目には、何が見えているのか。それは本人もよく分かっていなかった。それは幽霊かもしれないし、妖精かもしれないし、妖かもしれない。もしくは気とも言えるだろう。少なくとも、モニカは「この世のものではない何か」と繋がっている。
「も~! なんで運命ってこんなに残酷なの~!」
そう、繋がっているのだ。本人は気づきもしていないが、モニカは、この世と、この世ではないどこかの世界を繋ぐ架け橋になっている。そして、何かの拍子に、その2点を繋ぐ「扉」が開いてしまったら……一体どうなるだろうか。
「はぁ~あ、何かの間違いで魔法、使えるようにならないかな」
ふと、空を見上げて、モニカは母の言っていたおまじないの言葉を思い出した。今でも、心の中で唱えると、心が落ち着く言葉。
「……”ストラト・ステラ”」
思えば、初めてその言葉を口に出したような気がした。どんな時でも、モニカを安心させてくれる魔法のような言葉。
(星……私にしか見えない、空に浮かぶ景色……)
モニカが自分だけの景色に浸っていると、ふと、空に一筋のほうき星が流れた。指を組んで、願いを星に込める。このほうき星が消えるまでに……
(……願い事とか、あんまり思い浮かばないけど、もし、私の願いが叶うのなら、どうか――)
ほうき星が宇宙を駆ける。9つの尾を引き、ノーチェスの宙を廻る。星を伝い、まるで何かを描くように流れるほうき星は、やがて……
(あれ、落ちてきてない……?)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる