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第一章『星の奇跡編』
モニカとパーシー
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※百合注意です。ご理解いただいた上でお読みいただけると幸いです。
*
「モーニーカー!」
腹ごしらえを終え、モニカが食器を片していると、外からパーシーの呼ぶ声がした。昨日のことがあった手前、モニカはなんだか顔を合わせずらかったが、パーシーはそんなことを気にするような性格をしていない。その上、家が隣同士なのだから、このままずっと会わないなんてあり得ることではない。
「入っていいよ~」
「はーい、おじゃま~。様子見にきたよ~って、なんだ元気そうじゃん」
やけに大きな声で挨拶をしながら、パーシーが家に入ってきた。
「お陰様でね。パーシーが家まで運んでくれたんでしょ?」
「え? そんなわけないじゃん。まさか覚えてないの?」
「……そうですけど」
「あっはははは! あんな事しといてほんとに覚えてないの?! 超面白いんだけど!」
余程面白かったのか、顔を真っ赤にしながらパーシーが大笑いしているのを他所に、モニカはソファで寝ている小狐にこっそり目をやった。満腹になって満足したのか、丸くなってすやすやと寝てしまっている。やはりと言うべきか、どうやら小狐の姿はパーシーには見えていないようで、気がついていないのか、パーシーは寝ている小狐の隣に座ってしまった。
「そっか、覚えてないんだ……」
小さな声でパーシーが言う。食器を洗っている水音で、モニカには聞こえていない。
「ん? 何か言った?」
「いやなんでも! モニカといると飽きないな~って」
「そ。それで、私どうやって帰ってきたの?」
しばらくパーシーが沈黙する。何か言いづらいことでもあるのか、また顔を赤くして何も言わず俯いたままだ。
「……パーシー?」
「ん!? ううん、なんでもない!」
「はぁ……しっかりしてよね」
「昨日は普通に歩いて帰ったよ。ふらふらだったから、私が介抱しながらだったけどね」
「そっか、ありがと」
モニカが食器を洗い終えてソファに座ると、パーシーはビクリと大袈裟な反応をして今度はじっとモニカの顔を見つめる。パーシーとモニカの間には、気の抜けたような安らかな表情で眠る小狐が寝返りをうってゴロゴロと喉を鳴らしている。
「どうしたの、パーシー?」
「……も、モニカってさ、その……」
「?」
しどろもどろになって調子を乱すパーシーは、爆発しそうなくらい顔を真っ赤にしている。
「大丈夫? 熱でもあるんじゃない?」
いくらなんでも様子がおかしいと思い、モニカはパーシーとおでこを密着させる。
「ほら、すごく熱いよ」
「ち、ちちちちち、近い! ちょっと離れて!」
「あんまり動かないで! ちゃんと熱計らなくちゃ」
「そ、そうじゃなくて!」
「じゃあなんだっていうのよ! いいからじっとしてて!」
ばたばたと言い争いながら、2人がソファーの上で暴れる。先手を取ったのはモニカだった。床に転げ落ちながらも、パーシーの両腕を固定し、見事に捕まえてしまった。パーシーの顔は赤くなっていく一方だ。
「ふふん、捕まえた。もう逃げられないから、覚悟してね」
「ま、待って……まだ、こ……ここ、心の準備が……」
「問答無用!」
モニカがパーシーの顔のすぐ目の前まで接近する。しかし、両手の塞がったこの状態では、熱を計れない。モニカはまたしてもおでこをくっつけて体温を確かめようとする。残り1ミリ。いや、それよりも近い距離まで近づいたところで、パーシーが腕を振りほどいて魔法を唱える。
「”反重力”!!!」
モニカの身体がふわふわと宙に浮き上がる。甘く、荒い息を吐きながら、パーシーは体制を整えて、ゆっくりとモニカをソファの上に下ろして言った。
「きょ、今日は……やっぱり調子悪いから帰る!」
「うん、ちゃんと休んでね」
笑顔で見送るモニカの顔を見ることもできずに、パーシーは玄関の目の前まで走り去っていく。何か考えているかのように少し立ち止まり、一瞬振り返って言う。
「わ、私は! モニカのこと、友達だと思ってるから!」
「……? わ、私もだよ?」
「じゃあねっ!」
なんだか訳の分からないまま、パーシーは家を飛び出した。バタンと、大きな音を立てて閉まる扉の音で目が覚めたのか、大きなあくびをして小狐が目を覚ました。
*
「モーニーカー!」
腹ごしらえを終え、モニカが食器を片していると、外からパーシーの呼ぶ声がした。昨日のことがあった手前、モニカはなんだか顔を合わせずらかったが、パーシーはそんなことを気にするような性格をしていない。その上、家が隣同士なのだから、このままずっと会わないなんてあり得ることではない。
「入っていいよ~」
「はーい、おじゃま~。様子見にきたよ~って、なんだ元気そうじゃん」
やけに大きな声で挨拶をしながら、パーシーが家に入ってきた。
「お陰様でね。パーシーが家まで運んでくれたんでしょ?」
「え? そんなわけないじゃん。まさか覚えてないの?」
「……そうですけど」
「あっはははは! あんな事しといてほんとに覚えてないの?! 超面白いんだけど!」
余程面白かったのか、顔を真っ赤にしながらパーシーが大笑いしているのを他所に、モニカはソファで寝ている小狐にこっそり目をやった。満腹になって満足したのか、丸くなってすやすやと寝てしまっている。やはりと言うべきか、どうやら小狐の姿はパーシーには見えていないようで、気がついていないのか、パーシーは寝ている小狐の隣に座ってしまった。
「そっか、覚えてないんだ……」
小さな声でパーシーが言う。食器を洗っている水音で、モニカには聞こえていない。
「ん? 何か言った?」
「いやなんでも! モニカといると飽きないな~って」
「そ。それで、私どうやって帰ってきたの?」
しばらくパーシーが沈黙する。何か言いづらいことでもあるのか、また顔を赤くして何も言わず俯いたままだ。
「……パーシー?」
「ん!? ううん、なんでもない!」
「はぁ……しっかりしてよね」
「昨日は普通に歩いて帰ったよ。ふらふらだったから、私が介抱しながらだったけどね」
「そっか、ありがと」
モニカが食器を洗い終えてソファに座ると、パーシーはビクリと大袈裟な反応をして今度はじっとモニカの顔を見つめる。パーシーとモニカの間には、気の抜けたような安らかな表情で眠る小狐が寝返りをうってゴロゴロと喉を鳴らしている。
「どうしたの、パーシー?」
「……も、モニカってさ、その……」
「?」
しどろもどろになって調子を乱すパーシーは、爆発しそうなくらい顔を真っ赤にしている。
「大丈夫? 熱でもあるんじゃない?」
いくらなんでも様子がおかしいと思い、モニカはパーシーとおでこを密着させる。
「ほら、すごく熱いよ」
「ち、ちちちちち、近い! ちょっと離れて!」
「あんまり動かないで! ちゃんと熱計らなくちゃ」
「そ、そうじゃなくて!」
「じゃあなんだっていうのよ! いいからじっとしてて!」
ばたばたと言い争いながら、2人がソファーの上で暴れる。先手を取ったのはモニカだった。床に転げ落ちながらも、パーシーの両腕を固定し、見事に捕まえてしまった。パーシーの顔は赤くなっていく一方だ。
「ふふん、捕まえた。もう逃げられないから、覚悟してね」
「ま、待って……まだ、こ……ここ、心の準備が……」
「問答無用!」
モニカがパーシーの顔のすぐ目の前まで接近する。しかし、両手の塞がったこの状態では、熱を計れない。モニカはまたしてもおでこをくっつけて体温を確かめようとする。残り1ミリ。いや、それよりも近い距離まで近づいたところで、パーシーが腕を振りほどいて魔法を唱える。
「”反重力”!!!」
モニカの身体がふわふわと宙に浮き上がる。甘く、荒い息を吐きながら、パーシーは体制を整えて、ゆっくりとモニカをソファの上に下ろして言った。
「きょ、今日は……やっぱり調子悪いから帰る!」
「うん、ちゃんと休んでね」
笑顔で見送るモニカの顔を見ることもできずに、パーシーは玄関の目の前まで走り去っていく。何か考えているかのように少し立ち止まり、一瞬振り返って言う。
「わ、私は! モニカのこと、友達だと思ってるから!」
「……? わ、私もだよ?」
「じゃあねっ!」
なんだか訳の分からないまま、パーシーは家を飛び出した。バタンと、大きな音を立てて閉まる扉の音で目が覚めたのか、大きなあくびをして小狐が目を覚ました。
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