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二章 王国・魔国 戦争編
8話 シルヴィアの説得
しおりを挟む「あそこにシルヴィアはいるわ」
「わかった。エルシアも心の準備は整ったか?」
「えぇ、行きましょう」
シルヴィアの近くまで気配を消して近づくと、結界を展開して素早くシルヴィアの前に姿を見せる。
幸いにも、シルヴィアは1人でいたので、認識阻害の結界を展開するだけで周りを気にする必要はなくなる。
「だ、誰!?人を呼びますよ!」
「魔国軍指揮官のシルヴィアだな?軍の撤退をさせて欲しい。エルシアは生きている」
「何を言って!!エルシア様の遺体はこの目で確認しました!これ以上ふざけたこと言うならこの場で殺しますよ!」
シルヴィアは殺気のこもった瞳でルドラを睨みつける。
ピリピリとした空気が張り詰めるそこに、少し遅れて入ってきたエルシアがシルヴィアに話しかける。
「本当よ。シルヴィアならわかるでしょう?」
「え、エルシア様!生きておられたのですか!?」
「そうよ。ごめんなさいね、何も言わずに居なくなったりして」
「い、いえ!ご無事でなによりです‥‥ぐすっ」
エルシアの無事がよほど嬉しかったようで、シルヴィアは途中から涙を流し始める。
そんな彼女をエルシアも温かい目で眺めていた。
「というわけで、軍を撤退させてほしい」
感動の再会の場面に水を差すのはどうかと思ったが、いつ勇者がやってくるかわからない以上、あまり余裕を持っていられない。
だが、シルヴィアはゆっくり首を横に振ると、長い髪を後ろにまとめて戦闘の準備をした。
「私に命令するなら力を示しなさい。力のない者にエルシア様を任せるわけにはいきません」
ようするに、決闘で自分を負かしてみろということらしい。
前ももこんなことがあったなとルドラは思い出しつつ、その言葉に乗ることにした。
「わかった。じゃあ、始めようか」
「全力でいきます」
エルシアが結界の補強をし、シルヴィアとルドラの戦闘が始まった。
「『白銀の弾丸』」
まずはシルヴィアから仕掛けた。
手のひらに氷の魔力を込め、弾丸のように連続で撃ち出す。
ほとんど間隔も空かずに連発しているにも関わらず、1発ごとの威力もかなり高い。
「『シールド』、『フレアストライク』!」
シールドでシルヴィアの攻撃を防ぎ、すぐさま無詠唱の魔法で反撃する。
それをシルヴィアは雷魔法で相殺すると、後ろに跳んで距離をとった。
「『氷嵐』」
「『ウィンドブラスト』!」
双方の魔力がぶつかり合い、爆発にも似た衝撃が生じる。
ルドラはシールドを展開することで踏ん張ることができたが、シルヴィアは耐えきれずに吹き飛ばされた。
「はぁ、はぁっ‥‥ま、まだです!」
「まだ続けるのか?もう分かっただろ?」
複合魔法の方が強力だということは、魔法使いにとって常識だ。
ルドラは単属性の魔法でシルヴィアの複合魔法を相殺したので、実力
「えぇ。あなたは私より強いです」
「じゃあ」
「でも!そう簡単にエルシア様を任せるわけにはいきません!エルシア様を任せて欲しければ本気で戦うことです!」
息を切らしながらも魔法の詠唱を始める。
ルドラには、彼女がそこまでエルシアのことを想う理由は分からないが、その想いには応えなければならないと思った。
「覚悟してくださいっ!」
「ああ、かかってこい!俺も全力で迎え撃とう!」
シルヴィアは魔力で氷の鎧と剣を作り出し、さらに身体強化の魔法までかける。
あまりに消費魔力が多すぎるため短期決戦にしか使えないだろうが、瞬間的な強さは圧巻の一言だ。
「これが私の切り札です!はあぁぁぁっ!」
裂帛の気合とともにシルヴィアが氷剣を振るう。
氷剣には雷の魔力が込められていて安易に剣で受けようとすると感電してしまう。
そのため、避けるか、物理と魔法の両方の防御をしなければならない、大変やっかいな攻撃だ。
しかし、そんな攻撃を分かった上で、ルドラは剣で受ける。
当然、雷が剣に奔るが、その雷がルドラにまで届くことはなかった。
ルドラの持つ神聖スキル『アイギス』の結界をシルヴィアの雷は破ることができなかったのだ。
そして、シルヴィアが怯んだ隙に剣を振り抜いた。
吹き飛ばされて尻餅をついたシルヴィアの前に向かい、剣を突きつけて言う。
「これで認めてもらえたかな?」
「‥‥参りました。貴方にならエルシア様のことを任せられます」
魔人族の中でもエルシアに次ぐ実力を持っていたシルヴィアからすれば、人間に、それも全力でない相手に負けることなど屈辱的なことだろう。
しかし、シルヴィアは清々しい表情を浮かべていた。
彼女にとって、自分のプライドや魔人族としての本能よりエルシアの方が大切なのだ。
「最後に1つだけ言っておきます。エルシア様を悲しませるようなことがあったら許しませんからね」
「あぁ、そんなことはしない。約束しよう」
ルドラの発言の真偽を確かめるようにじっと見つめ、しばらくしてふっと力を抜くと初めて笑顔を見せた。
「ふふっ、信じましょう」
そして、片膝を地面につき、頭を下げた。
「エルシア様の次に忠誠を捧げます」
「期待を裏切らないように努力するよ」
こんな時までエルシアを優先するのが少し可笑しかった。
「それでは、私は魔国軍を撤退させて、共に国へ帰ります。エルシア様、またお会いしましょう。お元気で」
こうして、魔国軍はシルヴィアの指揮で撤退していった。
「ギリギリ間に合ったな」
「えぇ、アリアとクレアが機転を利かせてくれたおかげね」
「何かお礼をしないとなぁ。アリアとクレアだけじゃなくて他のみんなにも」
勇者が到着していたことは2人とも気づいていて、途中からは内心かなり焦っていた。
アリアが妨害してくれていなけれは、エルシアに協力してもらってでも、強引に撤退させなければならないところだった。
「クロノスとの戦いまでそう遠くないのに、大国同士で戦争なんてさせてられないからな」
遠くから勇者を讃える声が聞こえて来る。
おそらく、勇者の仲間である賢者の女が誘導したのだろう。
勇者と王国軍はそのまま街へと引き返して行った。
そして、王国軍も真国軍も撤退したのを確認してから、ルドラとエルシアもアイテールへと帰還した。
今回の件で、戦争を止められた上に魔国の実質的なトップであるシルヴィアに認めてもらうことができた。
それに一応、勇者の名声の強化にも繋がった。
無駄な面倒だと思っていたが、大きな収穫もあり、満足のいく結果となった。
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