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「ねえ先生、付き合ってる人いる?」
子犬のような、と表現して良いのでしょう、ともかく彼はそういう男の子でした。男の子、いいやすでに立派な大人でした。何せ大学生でしたから少年などでなく青年の域にいた、そうであったからこそ、
「いないよ」
私の答えは実にぶっきらぼう、無愛想とでも言えたでしょうか、ともかく私は楽譜に今日の日付を書き込みながらそう答えるのでありました。
「じゃあ、好きな人は?」
重ねて問う彼の目はつぶらで、二十歳であるとは到底思えない、それが率直な感想でしたね。
名を緋実くんといいました。土曜日の夕方になると毎週、私のもとにピアノを習いに来ておりました。私を先生と呼ぶようになってから半年ほどが経過した頃でしたか、私にそういった相手がいるかどうかを気にし始めたのは。
「先生」
「いないよ」
私は七歳下の生徒にふっと笑いかけるのみでありました。
鍵盤の前に座った緋実くんは真っすぐに揃った前髪の下、私を見上げてそれは嬉しそうに笑うのです。
「俺はいるよ、好きな人」
そうして私は思わず声を上げて笑ってしまうのでありました。俺、と言うのが緋実くんにはどうにも似合わないのですから。
子犬のような、と表現して良いのでしょう、ともかく彼はそういう男の子でした。男の子、いいやすでに立派な大人でした。何せ大学生でしたから少年などでなく青年の域にいた、そうであったからこそ、
「いないよ」
私の答えは実にぶっきらぼう、無愛想とでも言えたでしょうか、ともかく私は楽譜に今日の日付を書き込みながらそう答えるのでありました。
「じゃあ、好きな人は?」
重ねて問う彼の目はつぶらで、二十歳であるとは到底思えない、それが率直な感想でしたね。
名を緋実くんといいました。土曜日の夕方になると毎週、私のもとにピアノを習いに来ておりました。私を先生と呼ぶようになってから半年ほどが経過した頃でしたか、私にそういった相手がいるかどうかを気にし始めたのは。
「先生」
「いないよ」
私は七歳下の生徒にふっと笑いかけるのみでありました。
鍵盤の前に座った緋実くんは真っすぐに揃った前髪の下、私を見上げてそれは嬉しそうに笑うのです。
「俺はいるよ、好きな人」
そうして私は思わず声を上げて笑ってしまうのでありました。俺、と言うのが緋実くんにはどうにも似合わないのですから。
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