聖女の仕事を理解しないなら、魔王と一緒に夜逃げしますわ

アイララ

文字の大きさ
2 / 7

キシュタン王国よ、さようなら

しおりを挟む
不思議だけど、私の聖女としての仕事を理解してくれるのは人間より魔物なのよね。

それも、かなり好意的に。だって、吸血鬼や人狼みたいに人の事情に詳しい魔物がいるのよ。

そんな魔物が私の苦労を知って、『大変だな。』なんて言われた時は思わず笑っちゃったわ。

だからこそ、魔王は私と協力する事にしたの。

『ほんの少しだけ魔物に国へ入らせてくれ、代わりに人間を襲わせたりしないから。』という感じで。

それで私は協力してくれる人を頑張って集めて、キシュタン王国の平和を護ってる訳ね。

人間の血しか食べられない吸血鬼に血を分けてくれる人や、人の状態になってる人狼に服を分けてくれる人とか。

そんな努力で成り立っていた平和なのに、どうして国の偉い人は邪魔するのかしら?

一応、ちゃんと言ったのよ。魔物を少しだけ入らせるから、この国の平和は続いているのよって。

魔物の入国を一切禁じたら、魔物が怒って戦争になるわとも。だけど、国の偉い人は一切聞かなかった。

おまけに、私が国を護る聖女なのが気に入らないのか、同僚の聖女に嫉妬されて訴えられちゃったし。

そうして今は裁判の結果、死刑が決まったから処刑の日まで牢屋に入れられてるの。

そして、そんな状況を見かねたのか、魔王がコッソリ牢屋にやって来ちゃった。

短く、シュッとした髪。キリッとした目。スッとした長い耳。そしてスラッとした黒と紫の服。

妖艶さと気品さ、それに優しさも包まれてる美しい姿。そんな彼が今、私の隣にいる。

『全く、人間のやる事はよく分からんな。お前の様な立派な聖女を牢屋に入れるとは。』

「入れただけじゃないわ、死刑もされるの。」『本当か?まさか人間がここまで愚かとは。

国の為に働いた聖女を、あろうことか自らの手で処刑しようとはな。』

そう話す目は、私を憐れんでいる様だった。『聖女・スヨミルよ、私の国へ一緒に来るか?』

「貴方の国まで?」『そうだ。お前の様な人間を失わせる訳にはいかん。

勿論、来た後に私と協力しろとは言わない。今まで十分、我らが魔物を助けてくれたからな。』

魔王の話は意外だった。だって、確かに私は魔物と仲良くしてきたわよ。

だけど人間と魔物は別の種族だし、理解し合えないと思ってた。だからこそ、私の答えは決まってる。

「貴方がそこまで言うなら、勿論よ。さぁ、私を貴方の国に連れていって。」

そう言うと彼は私の手を取って、共に黒い風となった。牢屋と、そしてキシュタン王国に別れを告げて。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。

吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

聖女の力に目覚めた私の、八年越しのただいま

藤 ゆみ子
恋愛
ある日、聖女の力に目覚めたローズは、勇者パーティーの一員として魔王討伐に行くことが決まる。 婚約者のエリオットからお守りにとペンダントを貰い、待っているからと言われるが、出発の前日に婚約を破棄するという書簡が届く。 エリオットへの想いに蓋をして魔王討伐へ行くが、ペンダントには秘密があった。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

処理中です...