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2.バタバタ!入学までにもイベント盛りだくさん!
まるで夜空に浮かぶ月のような
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「くそ、どんだけ巡回ガバガバ……っ!」
魔物を逃しまくっている辺境伯に悪態をつきつつすぐさま纏わせていた魔力の層を分厚くし、目の前の茂みに意識を向ける俺。逃げることも考えたのだが背中を見せれば襲い掛かられかねないため、密かに持たされていた緊急用呼び出し魔具(いきなり体調が悪くなった時用)に魔力を流してメイミさんたちに危機を知らせておくのも忘れない。
しかし相変わらず俺の攻撃手段は肉片爆弾しかないため、どこまでいっても受け身の戦闘になる。徐々に近づく生ぬるい息に腕に牙が食い込む感覚。それらが脳裏に浮かび足が震えるが、バリアも張れるようになったのだ、と自分を奮い立たせて視線は茂みから逸らさないようにする。
そうして緊張を保つこと数十秒。俺にとっては数時間にも思えるほどに気を張り詰めた時間であったが、茂みから魔物が飛び出してくる気配は一向にない。
依然茂みからは確かに覚えのあるねっとりとした重い空気が流れてくるが、じりじりと濃くなっていく速度はまるで焦らされているよう。
「ひっ……」
張り詰めて張り詰めて、ガサリと茂みが揺れた瞬間思わず喉から引き絞ったような声が出る。
またあの濁った目と対峙すると気合を入れた俺、しかし見えたものは予想と全く違っていた。
「…………は」
周囲を呑み込むほどに真っ黒な靄の中、浮かび上がるのはあまりにも透き通った灰色。知らず息が漏れるくらいに美しいその2つは、一瞬丸くなったかと思うとスッと姿を消していく。
「! ま、待って!」
あれは違う。魔物じゃない!
躊躇ったのは一瞬、弾けるように駆け出した足は、そのまま茂みに突っ込み闇の中を掻き分けていく。
これじゃ駄目なんだ。ここで彼を突き放しては!
「待って、エド!!」
口が勝手に知らぬ名を紡いだと同時に、手に何かが触れる。伸ばした己の指先すら見えない黒、だけど必死にその何かを俺は掴んだ。
握り込めそうなほどに細く、しかし硬い何か。なおも逃げようとするソレを一層強く握りしめ、思いっきり腕を曲げて俺はソレを近くに引き寄せた。
「っ……」
想像以上に軽く、ふわりと俺の腕の中に収まったソレ。
未だ闇は濃いものの触れ合うほどに近ければ流石に姿形は視界に映り、こちらを見ようとしていなくてもこの抱き留めたものが人であると分かる。
藻掻く体を更に抱きしめ、宥めるように背中を擦る。魔力の遮断膜なんか全く役に立っていないんじゃないかってくらい体からはどんどん力が脱けていき、立っていられない俺は地面に座り込む、どころか最早押し倒されているような格好になっている。
それでも、背中に回した腕は離さない。
しばらくしてようやく動きを止めた後、彼は恐る恐るといったように俺を見上げてきた。先ほどと同じ眩い薄墨。2つのそれが俺を映し、きらりと透明な膜が張る。
よくよく見てみれば俺が掴んでいたのは、痩せて枯れ枝のようになっている彼の腕。
抵抗もなく俺に抱き寄せられたのは、薄く軽い体であったからなのだろう。
「大丈夫。俺は味方だから」
何があったのか分からないが、子供がこんな風になって良いわけがない。
背中に回していた手を片方頭まで持っていき、強張る体に恐れることはないのだとパサついた髪を漉くように優しく撫でる。
「……凄い、見事に真っ黒だ。綺麗だな」
「っ!」
刹那、信じられないというように目を見開いた彼。しかしすぐに俺の胸に顔を伏せたため、その後どんな顔をしていたのかはわからない。
硬く緊張していた体が緩み、先ほどよりもずしりとした重みが俺にのしかかる。
安心、できただろうか。漏れ聞こえる静かな吐息を耳にしながら、俺は意識を途切れさせた彼をただ撫でていた。
魔物を逃しまくっている辺境伯に悪態をつきつつすぐさま纏わせていた魔力の層を分厚くし、目の前の茂みに意識を向ける俺。逃げることも考えたのだが背中を見せれば襲い掛かられかねないため、密かに持たされていた緊急用呼び出し魔具(いきなり体調が悪くなった時用)に魔力を流してメイミさんたちに危機を知らせておくのも忘れない。
しかし相変わらず俺の攻撃手段は肉片爆弾しかないため、どこまでいっても受け身の戦闘になる。徐々に近づく生ぬるい息に腕に牙が食い込む感覚。それらが脳裏に浮かび足が震えるが、バリアも張れるようになったのだ、と自分を奮い立たせて視線は茂みから逸らさないようにする。
そうして緊張を保つこと数十秒。俺にとっては数時間にも思えるほどに気を張り詰めた時間であったが、茂みから魔物が飛び出してくる気配は一向にない。
依然茂みからは確かに覚えのあるねっとりとした重い空気が流れてくるが、じりじりと濃くなっていく速度はまるで焦らされているよう。
「ひっ……」
張り詰めて張り詰めて、ガサリと茂みが揺れた瞬間思わず喉から引き絞ったような声が出る。
またあの濁った目と対峙すると気合を入れた俺、しかし見えたものは予想と全く違っていた。
「…………は」
周囲を呑み込むほどに真っ黒な靄の中、浮かび上がるのはあまりにも透き通った灰色。知らず息が漏れるくらいに美しいその2つは、一瞬丸くなったかと思うとスッと姿を消していく。
「! ま、待って!」
あれは違う。魔物じゃない!
躊躇ったのは一瞬、弾けるように駆け出した足は、そのまま茂みに突っ込み闇の中を掻き分けていく。
これじゃ駄目なんだ。ここで彼を突き放しては!
「待って、エド!!」
口が勝手に知らぬ名を紡いだと同時に、手に何かが触れる。伸ばした己の指先すら見えない黒、だけど必死にその何かを俺は掴んだ。
握り込めそうなほどに細く、しかし硬い何か。なおも逃げようとするソレを一層強く握りしめ、思いっきり腕を曲げて俺はソレを近くに引き寄せた。
「っ……」
想像以上に軽く、ふわりと俺の腕の中に収まったソレ。
未だ闇は濃いものの触れ合うほどに近ければ流石に姿形は視界に映り、こちらを見ようとしていなくてもこの抱き留めたものが人であると分かる。
藻掻く体を更に抱きしめ、宥めるように背中を擦る。魔力の遮断膜なんか全く役に立っていないんじゃないかってくらい体からはどんどん力が脱けていき、立っていられない俺は地面に座り込む、どころか最早押し倒されているような格好になっている。
それでも、背中に回した腕は離さない。
しばらくしてようやく動きを止めた後、彼は恐る恐るといったように俺を見上げてきた。先ほどと同じ眩い薄墨。2つのそれが俺を映し、きらりと透明な膜が張る。
よくよく見てみれば俺が掴んでいたのは、痩せて枯れ枝のようになっている彼の腕。
抵抗もなく俺に抱き寄せられたのは、薄く軽い体であったからなのだろう。
「大丈夫。俺は味方だから」
何があったのか分からないが、子供がこんな風になって良いわけがない。
背中に回していた手を片方頭まで持っていき、強張る体に恐れることはないのだとパサついた髪を漉くように優しく撫でる。
「……凄い、見事に真っ黒だ。綺麗だな」
「っ!」
刹那、信じられないというように目を見開いた彼。しかしすぐに俺の胸に顔を伏せたため、その後どんな顔をしていたのかはわからない。
硬く緊張していた体が緩み、先ほどよりもずしりとした重みが俺にのしかかる。
安心、できただろうか。漏れ聞こえる静かな吐息を耳にしながら、俺は意識を途切れさせた彼をただ撫でていた。
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