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2.バタバタ!入学までにもイベント盛りだくさん!
なんにだって使いようってもんがあるでしょ?
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知らず茂みの奥深くに入り込んでいたらしく、騎士に担がれ運ばれる俺たち。ついさっき通った訓練場を越え連れられた先には確かに小さいが綺麗な小屋が建っていた。
元々、俺の魔力がどうしようもなく乱れた時のため、魔力的影響を受けない場所として用意していたらしい小屋。そんな理由からか中はかなり綺麗に掃除されており、すぐにでも使えるよう整えられていたベッドに彼は寝かせられた。
「元気になってね……」
意識が無くとも気配は感じ取れるのか、俺が離れようとすると彼の眉間にシワが寄るためベッドの隣に座り俺は声をかける。
ついでに彼の手を取り、回復魔法を流し込むのも忘れない。魔力を遮断といっても、触れ合うほどに近ければ流石に魔法も使えるみたいだ。
真っ当な水魔法を全力で放てることにある意味感動している俺、だけどその後ろに控えているロバートさんは非常に、ひっじょうに『遺憾である』という顔をしていた。
まぁそりゃ危なくないように、と隔離しようとしたのに、彼らの立場的に最も守るべき俺まで中に入ってきた挙句警戒対象の手を握り魔法を使ってるのだから。
俺の魔法が効くということは、あっちからの魔法も効くということで。先のやりとりからして引かないことを察されたのだろう、もう怪我をするのは自業自得くらいの感じで、被害にあっても回復できる範囲に留まるよう苦心されている。
その結果、現在の俺はどこから取り出したのか防御やらなんやらの魔法が刻まれている魔具を山ほど付けられていた。迷惑をかけて申し訳ない……。
だが、そこまで譲歩されたのだから俺のやる気にも火が付くというもの。領地を回っては小屋に行き、勉強をしては彼の手を握る。
俺の自由にできる時間の全てを彼に回復魔法を注ぐ時間にし、1週間したころにようやく彼は意識を取り戻した。
「……ここ、は……ぁ……ゴホッ!」
「あ、無理しないで。ずっと寝てたんだから、まずは水を。はい」
ぴく、と睫毛が震えた後、ゆっくりと開いた瞼。灰の瞳は虚ろに空をさまよっていたかと思うと、近くに座る俺の姿を認めてひたと動きを止める。
一瞬その瞳に浮かんだのは戸惑いだろうか。小さく声を漏らした彼は、何かを語ろうと息を吸い込み、そして咽た。
そんな姿にそっと水の入ったコップを差し出した俺は、片手でそれを支えながらもう片方の手で彼の背中を撫でる。出会った時にもそうしていたのを思い出したようで、少々混乱気味であったのが多少の落ち着きを取り戻していった。
「ふ……あり、がとう」
「どういたしまして」
随分と喉が渇いていたのだろう、あっという間に水を飲み干した彼は口元を緩めて俺への礼を口にした。うん、やはり危険じゃないという俺の予感は間違っていなかったのだ。
今どんな状況なのか問い質したいだろうに、まずは感謝を口にするその心。緊張が解けたおかげか寝ていた時よりも表情が柔らかくなり、まだ頼りなさすぎる体を少しだけ俺に預けてくれている。
「……可愛いな」
「? なに、か……?」
「っ、いや! なんでもない!」
なんだか擦り寄っているような動きにちょっと吊り上がった目も相まってふと近所にいた猫を思い出し、ポロっと口から言葉が漏れた。大層失礼なことを言ってしまったが幸いにも彼には聞こえていなかったようで、ほっとしながらも部屋の端からぶつけられるメイミさんの鋭い視線を甘んじて受ける。
そう。この小屋には当然であるが他にも人がいる。今日はメイミさんと、騎士が3人ほど。
その目の前で少々近い距離で寄り添っていれば、呆れられるのも致し方ないことだろう。
こほん、と咳ばらいをして仕切り直す俺。俺以外にも人がいることに気付き強張る体を軽く叩き、俺に意識を向けさせてからまずは聞いておかなければならないことを彼に問いかけた。
「さて……ここはアルベント領にある侯爵家が所有する小屋。俺と出会った直後に倒れた君は、1週間ぶりに目覚めた。まずは、どうしてあれほど死にかけの状態だったのか教えてくれるかな……エドワード」
・・・・・
彼こそは、俺の友人として名前が上がっていたエドワード。フォーリン辺境伯令息であり、今は病気で伏せっている……と言われていた人物であった。
ここに来るときはずっとフードを被っていたし、もう一人の友人、エリザベスの方に意識が向きがちでエドワードが黒髪だということは使用人の誰も気づいていなかったそう。
それでも極度の飢餓状態から回復していったエドワードの姿に見覚えはあったらしく、特にロバートさんはあまりの変わりように驚きあの場ではああ言うことが正しかったとはいえ気付けなかったことに悔しさを滲ませていた。
そんなこともあり当初の闇属性何するものぞという敵対心満々な空気から、警戒はしつつも受け入れる雰囲気くらいにはなっていった。
しかし、元からの知り合いでどうみても酷い目に遭っていると分っても厳しい目を向けられているあたり、この世界での闇属性の扱いが分かるというもの。正直、ここまで忌避されるものだとは思ってもいなかった。魔物が使うというのもあるが、闇属性の人間が滅多にいないせいで誤解を解く機会もなかったのかもしれない。
俺の意思をきき取り敢えず目覚めた後話をさせてはくれるようだが、その後辺境伯へ送り返そうとしている気配を察した俺は少々策を練っている。
ロバートさんたちが気付かなかったということは恐らく昔のエドワードはちゃんと世話されていたんだろうし、それが変わる原因とすると多分辺境伯の代替わりが関係しているんだろう。
休憩を挟みながらぽつぽつと語られた内容からするとそんな俺の予想は正しく、なんなら考えていたよりももっと悪い環境にエドワードが置かれていたことに顔も知らない現辺境伯に怒りを覚えた。
未知の力を恐れたのならまだわかるが、明らかに何かに利用するため虐げていたとなると納得もできない。
言葉の通じない魔物相手ならまだしも、話し合うこともなく忌避するのはいかがなものか。それを訴えかけてみたが、同情は買えてもイマイチな感触。こうなるのが分かっていたのか諦めたような顔付きになったエドワードに、ならばと俺は立ち上がった。
「エド、魔力の判定ってもうした?」
「……した」
「……ねぇメイミさん、前に言ってた畑に紛れ込んだっていう外来種のスゴクツヨイクサって、まだ邪魔してる?」
「それはもう。モサモサに生えて畑が使い物になりません」
「なら……エドワード、やってもらいたいことがあるんだ」
「?」
不思議そうに俺たちの話を聞いていたエドワードに、俺の言葉に首を捻るメイミさん。騎士たちも一様にお互いの顔を見合わせており、俺の考えていることに検討がついていない様子である。
ふふふ、ならば驚くがいい。
題して「闇属性魔法って意外と便利!」作戦だ!
元々、俺の魔力がどうしようもなく乱れた時のため、魔力的影響を受けない場所として用意していたらしい小屋。そんな理由からか中はかなり綺麗に掃除されており、すぐにでも使えるよう整えられていたベッドに彼は寝かせられた。
「元気になってね……」
意識が無くとも気配は感じ取れるのか、俺が離れようとすると彼の眉間にシワが寄るためベッドの隣に座り俺は声をかける。
ついでに彼の手を取り、回復魔法を流し込むのも忘れない。魔力を遮断といっても、触れ合うほどに近ければ流石に魔法も使えるみたいだ。
真っ当な水魔法を全力で放てることにある意味感動している俺、だけどその後ろに控えているロバートさんは非常に、ひっじょうに『遺憾である』という顔をしていた。
まぁそりゃ危なくないように、と隔離しようとしたのに、彼らの立場的に最も守るべき俺まで中に入ってきた挙句警戒対象の手を握り魔法を使ってるのだから。
俺の魔法が効くということは、あっちからの魔法も効くということで。先のやりとりからして引かないことを察されたのだろう、もう怪我をするのは自業自得くらいの感じで、被害にあっても回復できる範囲に留まるよう苦心されている。
その結果、現在の俺はどこから取り出したのか防御やらなんやらの魔法が刻まれている魔具を山ほど付けられていた。迷惑をかけて申し訳ない……。
だが、そこまで譲歩されたのだから俺のやる気にも火が付くというもの。領地を回っては小屋に行き、勉強をしては彼の手を握る。
俺の自由にできる時間の全てを彼に回復魔法を注ぐ時間にし、1週間したころにようやく彼は意識を取り戻した。
「……ここ、は……ぁ……ゴホッ!」
「あ、無理しないで。ずっと寝てたんだから、まずは水を。はい」
ぴく、と睫毛が震えた後、ゆっくりと開いた瞼。灰の瞳は虚ろに空をさまよっていたかと思うと、近くに座る俺の姿を認めてひたと動きを止める。
一瞬その瞳に浮かんだのは戸惑いだろうか。小さく声を漏らした彼は、何かを語ろうと息を吸い込み、そして咽た。
そんな姿にそっと水の入ったコップを差し出した俺は、片手でそれを支えながらもう片方の手で彼の背中を撫でる。出会った時にもそうしていたのを思い出したようで、少々混乱気味であったのが多少の落ち着きを取り戻していった。
「ふ……あり、がとう」
「どういたしまして」
随分と喉が渇いていたのだろう、あっという間に水を飲み干した彼は口元を緩めて俺への礼を口にした。うん、やはり危険じゃないという俺の予感は間違っていなかったのだ。
今どんな状況なのか問い質したいだろうに、まずは感謝を口にするその心。緊張が解けたおかげか寝ていた時よりも表情が柔らかくなり、まだ頼りなさすぎる体を少しだけ俺に預けてくれている。
「……可愛いな」
「? なに、か……?」
「っ、いや! なんでもない!」
なんだか擦り寄っているような動きにちょっと吊り上がった目も相まってふと近所にいた猫を思い出し、ポロっと口から言葉が漏れた。大層失礼なことを言ってしまったが幸いにも彼には聞こえていなかったようで、ほっとしながらも部屋の端からぶつけられるメイミさんの鋭い視線を甘んじて受ける。
そう。この小屋には当然であるが他にも人がいる。今日はメイミさんと、騎士が3人ほど。
その目の前で少々近い距離で寄り添っていれば、呆れられるのも致し方ないことだろう。
こほん、と咳ばらいをして仕切り直す俺。俺以外にも人がいることに気付き強張る体を軽く叩き、俺に意識を向けさせてからまずは聞いておかなければならないことを彼に問いかけた。
「さて……ここはアルベント領にある侯爵家が所有する小屋。俺と出会った直後に倒れた君は、1週間ぶりに目覚めた。まずは、どうしてあれほど死にかけの状態だったのか教えてくれるかな……エドワード」
・・・・・
彼こそは、俺の友人として名前が上がっていたエドワード。フォーリン辺境伯令息であり、今は病気で伏せっている……と言われていた人物であった。
ここに来るときはずっとフードを被っていたし、もう一人の友人、エリザベスの方に意識が向きがちでエドワードが黒髪だということは使用人の誰も気づいていなかったそう。
それでも極度の飢餓状態から回復していったエドワードの姿に見覚えはあったらしく、特にロバートさんはあまりの変わりように驚きあの場ではああ言うことが正しかったとはいえ気付けなかったことに悔しさを滲ませていた。
そんなこともあり当初の闇属性何するものぞという敵対心満々な空気から、警戒はしつつも受け入れる雰囲気くらいにはなっていった。
しかし、元からの知り合いでどうみても酷い目に遭っていると分っても厳しい目を向けられているあたり、この世界での闇属性の扱いが分かるというもの。正直、ここまで忌避されるものだとは思ってもいなかった。魔物が使うというのもあるが、闇属性の人間が滅多にいないせいで誤解を解く機会もなかったのかもしれない。
俺の意思をきき取り敢えず目覚めた後話をさせてはくれるようだが、その後辺境伯へ送り返そうとしている気配を察した俺は少々策を練っている。
ロバートさんたちが気付かなかったということは恐らく昔のエドワードはちゃんと世話されていたんだろうし、それが変わる原因とすると多分辺境伯の代替わりが関係しているんだろう。
休憩を挟みながらぽつぽつと語られた内容からするとそんな俺の予想は正しく、なんなら考えていたよりももっと悪い環境にエドワードが置かれていたことに顔も知らない現辺境伯に怒りを覚えた。
未知の力を恐れたのならまだわかるが、明らかに何かに利用するため虐げていたとなると納得もできない。
言葉の通じない魔物相手ならまだしも、話し合うこともなく忌避するのはいかがなものか。それを訴えかけてみたが、同情は買えてもイマイチな感触。こうなるのが分かっていたのか諦めたような顔付きになったエドワードに、ならばと俺は立ち上がった。
「エド、魔力の判定ってもうした?」
「……した」
「……ねぇメイミさん、前に言ってた畑に紛れ込んだっていう外来種のスゴクツヨイクサって、まだ邪魔してる?」
「それはもう。モサモサに生えて畑が使い物になりません」
「なら……エドワード、やってもらいたいことがあるんだ」
「?」
不思議そうに俺たちの話を聞いていたエドワードに、俺の言葉に首を捻るメイミさん。騎士たちも一様にお互いの顔を見合わせており、俺の考えていることに検討がついていない様子である。
ふふふ、ならば驚くがいい。
題して「闇属性魔法って意外と便利!」作戦だ!
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