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第七章 アサルト・モジュール
秘匿されたシステム不可解な演習場
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『本当に彼に使えるの?……法術システムを?』
『法術システム』。仕様書でその概念の説明を見たときに、有る程度はその内容を明華も理解していた。
簡単に言えば、遼州人の一部には強力な思念波を発生させられる人間がいる。その思念波は時に時空間そのものに干渉してしまい、空間を変質させることすらある。05式乙型はそれを増幅し、大規模に展開するシステム搭載のアサルト・モジュールとされていた。
だが、明華は念のためその基礎理論をネットで拾おうとすると、軍や軍事産業会社、それどころか研究機関や大学に至るまですべての情報にプロテクトがかけられていた。彼女の出身の遼北人民共和国に於いてすら技術大佐のランクのアクセス権限では役に立つような情報は皆無だった。
その方面での専門家のヨハンも、その基礎理論や乙式の法術系兵装やオペレーションシステムのハード面での運用に必要なことは話すものの、肝心のその起動キーとなるブラックボックスについては口を開くことが無かった。
目の前の身長だけは一人前の気弱そうな青年にそんな力がある。明華はその事実に少し疑いを持ちながら嬉しそうに個人設定を行っている誠を眺めた。
正直、明華は技術部の新入隊員歓迎会で全裸になろうとして周りの人間に袋叩きにされている姿を見て、いかにも体育会系の下っ端と言う感じの誠にあまり好感を持ってはいなかった。
そんな誠は設定画面が起動したのか、いかにも嬉しそうに作業を続けている。
明華はモニターを続けながら暇つぶしに誠のデータ入力速度を計ってみた。
それなりだ。特に早くも遅くも無い。
手元に送られてきた脳内各種波動は典型的な遼州人のそれであり、この機体のシステムを動かすには不十分な数値しか出なかった。
『嵯峨隊長は何か隠してるわね』
その数値が逆に明華の探究心を刺激した。
「何見てんのかな?」
突然後ろから声をかけられて、明華は驚いて振り返った。
いつランニングの列から抜けてきたのか、嵯峨がつまらなそうに周りの機材類を見渡している。
「今回は俺の意志では隠し事はしてないよ。少なくともお前さんが不安に思っている情報統制に関しては、俺なんか手が出せないほど上からの指示でね。まあ政治家さんが絡むレベルの話は俺がどうこう出来る話じゃないよ」
そう言うと嵯峨は誠の作業の様子が映っている明華の携帯端末をのぞいた。
「今回はと言うことは、いつもはしているということですね?」
その自分でも自覚している冷たい視線で明華は嵯峨をにらんだ。嵯峨はただ困ったように薄笑いを浮かべるだけだった。
「絡むねえ。確かに遼南内戦の時は、お前さんにも秘密にしてたことが結構あったけどね。それにまあ情報なら吉田に聞けば良いじゃん。俺は本当に今回は隠し事はしてないんだって。むしろ吉田やシュペルターの方が神前についちゃあ情報を握ってるくらいだ」
そう言うと嵯峨は引きつっている明華のまゆ毛を見つけて後ずさりした。
「怒るなよ。俺も基礎理論についちゃあ素人同然なんだから。どうせ奴等に中身を聞いてもお前さんに説明できるほどわかる自信はないよ」
嵯峨はそう言って誠の作業の進捗状況に目をやった。
もうすでにデータ入力は完了して機械のほうが勝手にシステムの再構築を行っていた。
「俺はね、明華よ。皆さんが無事にここを卒業してくれりゃあそれでいいと思ってんだよ。それまで退屈せずに和気藹々とお仕事できる環境を作るのが俺の仕事だ。お前さんは勘ぐるよりまず、目の前の仕事やってくれや」
この人は読めない。
いつもの事ながら明華は嵯峨にもてあそばれている様な気がして視線を落とした。嵯峨はそれを見やると親指で目の前の特機を指した。
「それと05式(こいつら)の運用試験。胡州の海軍演習場でやるから。ヨロシクね」
突然の話に明華は目が点になった。
「胡州帝国軍?なんで……遼州軌道上の東和の訓練場で済む話じゃないですか!」
同盟でも政治的に不安定な胡州帝国の訓練場。なぜそんな場所が選ばれたのかと明華はたたみかけて聞くつもりだった。
うろたえる明華に嵯峨はしてやったりと言うように満面の笑みを浮かべる。
「今度は隠し事させてもらうけど、そこじゃなきゃいけないわけがあるんだよ。まあ、そのうち話すから待っててね。それとこの件で吉田に聞いても無駄だよ。明華に一番初めに話したんだ。奴も俺が胡州海軍にそこの使用の許可申請をしていることくらいしか知らんはずだよ」
相変わらず食えない人だ。
明華はそう思いながら去っていく嵯峨の後姿を見ていた。
『法術システム』。仕様書でその概念の説明を見たときに、有る程度はその内容を明華も理解していた。
簡単に言えば、遼州人の一部には強力な思念波を発生させられる人間がいる。その思念波は時に時空間そのものに干渉してしまい、空間を変質させることすらある。05式乙型はそれを増幅し、大規模に展開するシステム搭載のアサルト・モジュールとされていた。
だが、明華は念のためその基礎理論をネットで拾おうとすると、軍や軍事産業会社、それどころか研究機関や大学に至るまですべての情報にプロテクトがかけられていた。彼女の出身の遼北人民共和国に於いてすら技術大佐のランクのアクセス権限では役に立つような情報は皆無だった。
その方面での専門家のヨハンも、その基礎理論や乙式の法術系兵装やオペレーションシステムのハード面での運用に必要なことは話すものの、肝心のその起動キーとなるブラックボックスについては口を開くことが無かった。
目の前の身長だけは一人前の気弱そうな青年にそんな力がある。明華はその事実に少し疑いを持ちながら嬉しそうに個人設定を行っている誠を眺めた。
正直、明華は技術部の新入隊員歓迎会で全裸になろうとして周りの人間に袋叩きにされている姿を見て、いかにも体育会系の下っ端と言う感じの誠にあまり好感を持ってはいなかった。
そんな誠は設定画面が起動したのか、いかにも嬉しそうに作業を続けている。
明華はモニターを続けながら暇つぶしに誠のデータ入力速度を計ってみた。
それなりだ。特に早くも遅くも無い。
手元に送られてきた脳内各種波動は典型的な遼州人のそれであり、この機体のシステムを動かすには不十分な数値しか出なかった。
『嵯峨隊長は何か隠してるわね』
その数値が逆に明華の探究心を刺激した。
「何見てんのかな?」
突然後ろから声をかけられて、明華は驚いて振り返った。
いつランニングの列から抜けてきたのか、嵯峨がつまらなそうに周りの機材類を見渡している。
「今回は俺の意志では隠し事はしてないよ。少なくともお前さんが不安に思っている情報統制に関しては、俺なんか手が出せないほど上からの指示でね。まあ政治家さんが絡むレベルの話は俺がどうこう出来る話じゃないよ」
そう言うと嵯峨は誠の作業の様子が映っている明華の携帯端末をのぞいた。
「今回はと言うことは、いつもはしているということですね?」
その自分でも自覚している冷たい視線で明華は嵯峨をにらんだ。嵯峨はただ困ったように薄笑いを浮かべるだけだった。
「絡むねえ。確かに遼南内戦の時は、お前さんにも秘密にしてたことが結構あったけどね。それにまあ情報なら吉田に聞けば良いじゃん。俺は本当に今回は隠し事はしてないんだって。むしろ吉田やシュペルターの方が神前についちゃあ情報を握ってるくらいだ」
そう言うと嵯峨は引きつっている明華のまゆ毛を見つけて後ずさりした。
「怒るなよ。俺も基礎理論についちゃあ素人同然なんだから。どうせ奴等に中身を聞いてもお前さんに説明できるほどわかる自信はないよ」
嵯峨はそう言って誠の作業の進捗状況に目をやった。
もうすでにデータ入力は完了して機械のほうが勝手にシステムの再構築を行っていた。
「俺はね、明華よ。皆さんが無事にここを卒業してくれりゃあそれでいいと思ってんだよ。それまで退屈せずに和気藹々とお仕事できる環境を作るのが俺の仕事だ。お前さんは勘ぐるよりまず、目の前の仕事やってくれや」
この人は読めない。
いつもの事ながら明華は嵯峨にもてあそばれている様な気がして視線を落とした。嵯峨はそれを見やると親指で目の前の特機を指した。
「それと05式(こいつら)の運用試験。胡州の海軍演習場でやるから。ヨロシクね」
突然の話に明華は目が点になった。
「胡州帝国軍?なんで……遼州軌道上の東和の訓練場で済む話じゃないですか!」
同盟でも政治的に不安定な胡州帝国の訓練場。なぜそんな場所が選ばれたのかと明華はたたみかけて聞くつもりだった。
うろたえる明華に嵯峨はしてやったりと言うように満面の笑みを浮かべる。
「今度は隠し事させてもらうけど、そこじゃなきゃいけないわけがあるんだよ。まあ、そのうち話すから待っててね。それとこの件で吉田に聞いても無駄だよ。明華に一番初めに話したんだ。奴も俺が胡州海軍にそこの使用の許可申請をしていることくらいしか知らんはずだよ」
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明華はそう思いながら去っていく嵯峨の後姿を見ていた。
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