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第16章 引っ越し
希少な法術師
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「とりあえず雑巾絞れ」
そう言ってかなめは誠に雑巾の入ったバケツを突きつけてくる。誠はすぐに彼女が何もしないつもりなのがわかった。
「わかりましたよ」
誠はとりあえず二枚の雑巾をバケツに放り込んで絞り始めた。かなめはその様子を見つめている。
「西園寺さんも手伝ってくださいよ。ここ西園寺さんの部屋になるんですよ」
かなめに手伝うように言っても無理とはわかりつつも誠は自分で二枚目の雑巾を絞る。正直心の中の半分以上はかなめの行動には期待していなかった。しかし、思いもしないほど素直にかなめは搾った雑巾を受け取った。
「まあ一回ぐらいは手伝ってやるよ。一回ぐらいはな」
かなめは雑巾を手に持つと、そのまま部屋の畳を拭い始めた。「神前、聞いて良いか?」
一つ畳を拭き終わったかなめが起き上がり、手の上で雑巾をひっくりかえす。
「はい」
誠は壁についたシミを洗剤でこすって落とそうとしていた。
「オメエ自分の力をどう思ってる?二度も襲われてるんだ、それについてどう見るよ?」
かなめの言葉に誠の手が止まる。誠はとりあえず洗剤を置き、雑巾でシミのついた壁をこすり始めた。
「そうですね。何も知らない時の方が気楽だったかも知れませんね」
「意外だな、お前のことだから怖いですって即答すると思ったんだけどな。わけわからねえで浚われた方が怖くないのか?」
誠の顔がかなめの方に向き直る。かなめは照れたように次の畳を拭き始める。
「自分に力があるなんていうことを知らなければ、ただの偶然でまとめられるじゃないですか。嵯峨隊長はあっちこっちで恨みを買ってますから、そのとばっちりってことで納得できる。自分に原因は無いんだってね。でも今回のは違いましたね。僕はもう自分が法術適正者だと知ってしまった。相手は他の誰でもなく僕を狙ってくるのがわかる。どこへ行っても、どこに隠れても、僕であるというだけで狙われ続けるんですから」
いくらこすっても取れないシミ。誠は今度は雑巾にクレンザーを振りかける。
「そうだな。アタシも気になってさあ、ここのところ法術に関する研究所のデータや軍の資料を当たってみたんだ。公開されてる情報なんてたかが知れているが、それでも先月の近藤事件以降かなりの極秘扱いのデータが公表されるようになったしな」
かなめは雑巾を畳の目に沿ってゆっくりと動かす。
「遼州人のすべてが力を持っているわけじゃねえ。純血の遼州人の家系であることが間違いない遼南王朝の王族ですら、力が確認されている人物は記録に残っているのはたった三人だ。初代皇帝女帝ムジャンタ・カオラ。六代目ムジャンタ・ヘルバの皇太子で廃帝ハド。そして新王朝初代皇帝ムジャンタ・ラスコー、今の戸籍上の名前は嵯峨惟基」
誠はクレンザーの研磨剤で消えていくシミを見ながらかなめの言葉を聴いていた。
「数千人、数万人に一人の確立というわけですか。でも僕は選ばれたと言って喜ぶ気にはなれませんよ」
誠の手が止まる。かなめはそれを見ると立ち上がった。
「不安なのか?」
そう言うとかなめは誠の頭に手を置いた。
「言っただろ?アタシが守るって」
中腰の姿勢から立ち上がる誠。かなめは集中するように畳を拭き続ける。誠はそんな彼女を見下ろす。かなめは一瞬、作業を止めて誠を見上げたが、すぐに目を逸らすと再び畳を拭き始めた。
「勘違いするなよな!アタシはお前の能力を買っているから助けるだけだ。テロリスト連中に捕まってシャムが大好きな特撮モノの怪獣ばりに暴れられたら困るからな……」
誠はこっけいに見えるかなめの姿に笑いをこらえていた。
そう言ってかなめは誠に雑巾の入ったバケツを突きつけてくる。誠はすぐに彼女が何もしないつもりなのがわかった。
「わかりましたよ」
誠はとりあえず二枚の雑巾をバケツに放り込んで絞り始めた。かなめはその様子を見つめている。
「西園寺さんも手伝ってくださいよ。ここ西園寺さんの部屋になるんですよ」
かなめに手伝うように言っても無理とはわかりつつも誠は自分で二枚目の雑巾を絞る。正直心の中の半分以上はかなめの行動には期待していなかった。しかし、思いもしないほど素直にかなめは搾った雑巾を受け取った。
「まあ一回ぐらいは手伝ってやるよ。一回ぐらいはな」
かなめは雑巾を手に持つと、そのまま部屋の畳を拭い始めた。「神前、聞いて良いか?」
一つ畳を拭き終わったかなめが起き上がり、手の上で雑巾をひっくりかえす。
「はい」
誠は壁についたシミを洗剤でこすって落とそうとしていた。
「オメエ自分の力をどう思ってる?二度も襲われてるんだ、それについてどう見るよ?」
かなめの言葉に誠の手が止まる。誠はとりあえず洗剤を置き、雑巾でシミのついた壁をこすり始めた。
「そうですね。何も知らない時の方が気楽だったかも知れませんね」
「意外だな、お前のことだから怖いですって即答すると思ったんだけどな。わけわからねえで浚われた方が怖くないのか?」
誠の顔がかなめの方に向き直る。かなめは照れたように次の畳を拭き始める。
「自分に力があるなんていうことを知らなければ、ただの偶然でまとめられるじゃないですか。嵯峨隊長はあっちこっちで恨みを買ってますから、そのとばっちりってことで納得できる。自分に原因は無いんだってね。でも今回のは違いましたね。僕はもう自分が法術適正者だと知ってしまった。相手は他の誰でもなく僕を狙ってくるのがわかる。どこへ行っても、どこに隠れても、僕であるというだけで狙われ続けるんですから」
いくらこすっても取れないシミ。誠は今度は雑巾にクレンザーを振りかける。
「そうだな。アタシも気になってさあ、ここのところ法術に関する研究所のデータや軍の資料を当たってみたんだ。公開されてる情報なんてたかが知れているが、それでも先月の近藤事件以降かなりの極秘扱いのデータが公表されるようになったしな」
かなめは雑巾を畳の目に沿ってゆっくりと動かす。
「遼州人のすべてが力を持っているわけじゃねえ。純血の遼州人の家系であることが間違いない遼南王朝の王族ですら、力が確認されている人物は記録に残っているのはたった三人だ。初代皇帝女帝ムジャンタ・カオラ。六代目ムジャンタ・ヘルバの皇太子で廃帝ハド。そして新王朝初代皇帝ムジャンタ・ラスコー、今の戸籍上の名前は嵯峨惟基」
誠はクレンザーの研磨剤で消えていくシミを見ながらかなめの言葉を聴いていた。
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誠の手が止まる。かなめはそれを見ると立ち上がった。
「不安なのか?」
そう言うとかなめは誠の頭に手を置いた。
「言っただろ?アタシが守るって」
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「勘違いするなよな!アタシはお前の能力を買っているから助けるだけだ。テロリスト連中に捕まってシャムが大好きな特撮モノの怪獣ばりに暴れられたら困るからな……」
誠はこっけいに見えるかなめの姿に笑いをこらえていた。
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