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第26章 会戦
思い乱れて
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信じたくないこと。8機目の機動兵器にサーベルを突き立てながらシャムは涙が流れていくのを感じていた。
「俊平……死んじゃったの……本当に……消えちゃったんだ……アタシを残して……」
倒しても機動兵器はそれをカバーするように現れ、砲台への道を塞ぐ。グレネードで牽制しながら敵のパルスライフルの攻撃を干渉空間で避けてはなんとか道を開こうとするが、数に勝る敵に前進を阻まれていた。
『ナンバルゲニア中尉!急ぐんじゃない!我々が急行するまでなんとか耐えていればいいんだ』
通信でロナルドの第四小隊が向かってきているのがわかるが、それ以上にシャムには砲台のエネルギーチャージが気になっていた。
「今度撃たれたら誠ちゃん達が蒸発しちゃうよ!」
シャムの言葉にロナルドは口をつぐむ。シャムの直感は誰もが共通する認識だった。すでに30パーセントのエネルギーチャージが終わった砲台の砲身が青く不気味に光っている。
「俊平が死んじゃって、今度は誠ちゃん……みんな置いていってしまうんだね、私を」
ヘルメットに涙が滲んだ。シャムはそのまま叫びを上げて9機目の敵の頭部をレールガンで撃ち抜いた。涙はその間も絶え間なく流れていた。
『あれ……ここは?』
シャムは自分が見知らぬ空間に浮かんでいることに気が付いた
『手が透き通ってる……面白―い』
透き通っている体を見てシャムは面白がる。しかし、爆音が下から響くのを聞くとすぐにそちらに目をやった。
『クロームナイト……いや、違うね。よく見ると違う』
見下ろしたのは焦土だった。そこに見慣れた愛機『クロームナイト』とよく似たアサルト・モジュールがか細い少年を見下ろしている。
「少年……貴様は生きたいか」
『アタシ……アタシの声』
人型機械の声が響いた。それは間違いなくシャム自身の声だった。額から血を流しながらも冷静を装うような少年はその声に促されるようにして静かにうなづく。
「もうあなたの人機の他に機械はない。この星には……この星はあなたの意思を受け入れた。あなたは戦うために作られて戦うことを拒否して全てを破壊しつくした。そして僕達も文明を捨てた」
少年と呼ぶにははっきりとした意志の強そうな言葉が響いた。彼の背後の岩肌の周りには機動兵器から身を隠すように多くの人々が様子を伺っているのがわかった。
『あの子……どこかで見たことが……』
シャムはこの光景をどこかで見たことに思いを巡らした。静かにアサルト・モジュールはその手を少年に伸ばした。
「文明を捨てる……人間の生き方かそれは?新石器時代まで文明を遡らせてそれでも貴様は人類を続けるつもりか?」
機動兵器はそう言う言葉を発するとそのまま右手にした剣を振り上げる。少年はそれに怖気付く様子もなくただ丸い目で機動兵器を見つめていた。
「この文明は進みすぎた。……人の遺伝子を弄り、人を模したシステムを作り、宇宙を制覇した。そして、すべてを破壊しつくす存在であるあなたを作り上げた。その結果がこの有様だ……」
皮肉めいた瞳で周りの焦土を眺める少年。機動兵器は剣を振り上げたまま沈黙を守っていた。
「文明を捨ててどうする。土器でも作り畑でも始めるつもりか?」
皮肉めいた笑みを浮かべているであろう自分自身を想像しながらシャムは黙って下の光景を眺めていた。
「国を作る……文明の無い国を」
シャムの問いに即座に少年は言葉を続けた。
『それでどうする』
「文明の無い世界でただ人が生きるべくして生きるように生きる。人は文明を持たなくても生きていける……」
強い調子で少年は言葉を続けた。
「こんな文明が人類を縛る世界を再び受け入れない……そんな世界を作る……」
『できるのか?』
『ダメだよ!殺しちゃ!それじゃあこれまでと同じじゃないの!』
シャムの叫び声は空に吸い込まれていった。かつてのシャムはそのままアサルト・モジュールの剣を振り下ろした。
『ダメ!』
シャムの叫びが虚しく響く。
しかし剣は少年の目の前で止まった。少年はようやく感情らしいもの、少しばかりの笑みを浮かべて手を差し出した。
「君もこちらに来たらどうだい?きっと楽だよ……」
少年の手が機動兵器に向けて掲げられた時、機動兵器の胸のハッチが開いた。
「文明のない世界……」
感情を失ったようなシャムがパイロットスーツを着込んでコックピットに座っていた。
「そう、文明の無い誰も苦しまない世界……こんな焼け野原と無縁な世界……」
少女はそのまま機体の差し出した右手に飛び乗るとそのまま少年に駆け寄る。少年の背後の人々は恐れの声を殺した叫びをあげた。
「怖がることは無いよ。もう彼女も仲間なんだから……」
少年は恐れる民に呟いた。幼く見える少女は無表情のまま少年の手を握り締めた。
「これで君も仲間だ……さあ、国を作ろう……」
二人に笑みが浮かぶ。化学物質が焼けるような匂いの中、人々は二人が焼け野原の中に向けて歩いていく様をただじっと眺めていた。
『そうだ……遼州はここから始めたんだ。アタシが始めた……だからアタシが守らなきゃならないんだ……そして……』
「俊平……死んじゃったの……本当に……消えちゃったんだ……アタシを残して……」
倒しても機動兵器はそれをカバーするように現れ、砲台への道を塞ぐ。グレネードで牽制しながら敵のパルスライフルの攻撃を干渉空間で避けてはなんとか道を開こうとするが、数に勝る敵に前進を阻まれていた。
『ナンバルゲニア中尉!急ぐんじゃない!我々が急行するまでなんとか耐えていればいいんだ』
通信でロナルドの第四小隊が向かってきているのがわかるが、それ以上にシャムには砲台のエネルギーチャージが気になっていた。
「今度撃たれたら誠ちゃん達が蒸発しちゃうよ!」
シャムの言葉にロナルドは口をつぐむ。シャムの直感は誰もが共通する認識だった。すでに30パーセントのエネルギーチャージが終わった砲台の砲身が青く不気味に光っている。
「俊平が死んじゃって、今度は誠ちゃん……みんな置いていってしまうんだね、私を」
ヘルメットに涙が滲んだ。シャムはそのまま叫びを上げて9機目の敵の頭部をレールガンで撃ち抜いた。涙はその間も絶え間なく流れていた。
『あれ……ここは?』
シャムは自分が見知らぬ空間に浮かんでいることに気が付いた
『手が透き通ってる……面白―い』
透き通っている体を見てシャムは面白がる。しかし、爆音が下から響くのを聞くとすぐにそちらに目をやった。
『クロームナイト……いや、違うね。よく見ると違う』
見下ろしたのは焦土だった。そこに見慣れた愛機『クロームナイト』とよく似たアサルト・モジュールがか細い少年を見下ろしている。
「少年……貴様は生きたいか」
『アタシ……アタシの声』
人型機械の声が響いた。それは間違いなくシャム自身の声だった。額から血を流しながらも冷静を装うような少年はその声に促されるようにして静かにうなづく。
「もうあなたの人機の他に機械はない。この星には……この星はあなたの意思を受け入れた。あなたは戦うために作られて戦うことを拒否して全てを破壊しつくした。そして僕達も文明を捨てた」
少年と呼ぶにははっきりとした意志の強そうな言葉が響いた。彼の背後の岩肌の周りには機動兵器から身を隠すように多くの人々が様子を伺っているのがわかった。
『あの子……どこかで見たことが……』
シャムはこの光景をどこかで見たことに思いを巡らした。静かにアサルト・モジュールはその手を少年に伸ばした。
「文明を捨てる……人間の生き方かそれは?新石器時代まで文明を遡らせてそれでも貴様は人類を続けるつもりか?」
機動兵器はそう言う言葉を発するとそのまま右手にした剣を振り上げる。少年はそれに怖気付く様子もなくただ丸い目で機動兵器を見つめていた。
「この文明は進みすぎた。……人の遺伝子を弄り、人を模したシステムを作り、宇宙を制覇した。そして、すべてを破壊しつくす存在であるあなたを作り上げた。その結果がこの有様だ……」
皮肉めいた瞳で周りの焦土を眺める少年。機動兵器は剣を振り上げたまま沈黙を守っていた。
「文明を捨ててどうする。土器でも作り畑でも始めるつもりか?」
皮肉めいた笑みを浮かべているであろう自分自身を想像しながらシャムは黙って下の光景を眺めていた。
「国を作る……文明の無い国を」
シャムの問いに即座に少年は言葉を続けた。
『それでどうする』
「文明の無い世界でただ人が生きるべくして生きるように生きる。人は文明を持たなくても生きていける……」
強い調子で少年は言葉を続けた。
「こんな文明が人類を縛る世界を再び受け入れない……そんな世界を作る……」
『できるのか?』
『ダメだよ!殺しちゃ!それじゃあこれまでと同じじゃないの!』
シャムの叫び声は空に吸い込まれていった。かつてのシャムはそのままアサルト・モジュールの剣を振り下ろした。
『ダメ!』
シャムの叫びが虚しく響く。
しかし剣は少年の目の前で止まった。少年はようやく感情らしいもの、少しばかりの笑みを浮かべて手を差し出した。
「君もこちらに来たらどうだい?きっと楽だよ……」
少年の手が機動兵器に向けて掲げられた時、機動兵器の胸のハッチが開いた。
「文明のない世界……」
感情を失ったようなシャムがパイロットスーツを着込んでコックピットに座っていた。
「そう、文明の無い誰も苦しまない世界……こんな焼け野原と無縁な世界……」
少女はそのまま機体の差し出した右手に飛び乗るとそのまま少年に駆け寄る。少年の背後の人々は恐れの声を殺した叫びをあげた。
「怖がることは無いよ。もう彼女も仲間なんだから……」
少年は恐れる民に呟いた。幼く見える少女は無表情のまま少年の手を握り締めた。
「これで君も仲間だ……さあ、国を作ろう……」
二人に笑みが浮かぶ。化学物質が焼けるような匂いの中、人々は二人が焼け野原の中に向けて歩いていく様をただじっと眺めていた。
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