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第2章 取材開始
新型のお披露目
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「ああ、荷物なら部屋に運んでおきましたよ 」
階段で待っていた伊藤の突然の声がそう告げる。彼はクリスの前を歩く明華を見て少しばかり意外そうな顔をしていた。
「二式のお披露目をするんですか? 」
「ええ、隊長命令よ 」
そう言うと明華は伊藤を無視して階段を下っていく。
「いきなりスクープじゃないか。さっき『委託』って言ってたって事は、どこかの国か企業が開発に協力したって事だろ 」
「そういう相談事は小声でしていただけますか? 菱川重工ですよ 」
さらりと明華が話した言葉にクリスは目を見開いた。
「菱川? つまり東和共和国首相、菱川重四郎の会社じゃないですか! 」
クリスは一言だけ言って隊舎から出て行こうとする明華に叫んだ。
「東和は遼南でのアメリカの利権獲得に危機感を抱いているのはご存知よね? 悪名高い『遼南航空戦力禁止宣言』にあるとおり、遼南共和政府のアメリカ軍との共同作戦開始と言う事実に対抗する布石として二式の開発を遼北から請け負っていたわけ。まあ、遼北国内の教条主義勢力の反対で試作段階で計画は頓挫しちゃったけど 」
明華は振り向かず、そのまま隊舎の隣の巨大な格納庫群に向かって歩き続けている。野球に興じていた隊員、そのピッチャーをしていた色白の男がクリス達に向かって歩いてきた。
「明華! 何してるんだ? 」
男は作業服の袖で流れる汗を拭きながら明華の前に立った。
「邪魔よ! 」
男を避けるとそのまま隣の格納庫へ向かおうとする明華。男はそれでも諦めずに彼女について歩く。
「あのなあ、一応、この人たちはプレス関係者だろ? ここの中のもの見せちゃって大丈夫なのか? 」
男はそう言うと、キーラの方に目をやる。キーラは黙って明華を見つめた。そんなキーラに視線を奪われるクリス。キーラの銀色の髪が風になびいている。
「御子神中尉。これは隊長の許可を取っているのよ。どうせ明日からは敵にもその姿をさらすことになるんだから 」
御子神中尉と呼ばれた男は頭をかきながらクリスの方を警戒しながら見つめている。いつの間にかこの騒動を聞きつけて、野球をしていた隊員や、観戦していた女性兵士までもが集まり始めた。
「それじゃあ入るわよ 」
そう言うとまるで生徒を引率する教師のように、明華は先頭に立って格納庫の隙間から中へと入る。クリスとハワード、キーラが続く。その後ろにはぞろぞろと御子神達野次馬連が続く。
薄暗い光の中、そびえ立つ12.05メートルの巨人。
「これが通称『二式』。北兼軍の誇る最新戦力よ 」
誇らしげに明華の声が響く。退屈そうに偽装作業を進めていた隊員がクリス達を眺めている。
「じゃあ、写真撮らせてもらうんで! 」
そう言うとハワードは点検中のレールガンを避けるようにしてそのまま六機の二式に向かって歩いていく。
「これが東和製? 」
「そうですよ。整備性重視の中国や遼北の機体には見えないでしょ? あくまでパワーと運動性の上昇のために各部品の精度はかなりシビアにとってあるわ 」
誇らしげに言う明華。確かに見慣れたアメリカの旧式輸出用アサルト・モジュールM5と比べると無骨に見えるその全景。だが、間接部などどちらかと言えばクリアランスを取ることが多い遼北の機体とは一線を画すタイトな作りが見て取れた。
「確かにどこかしら東和やアラブ連盟のアサルト・モジュールっぽいと言えなくも無いような 」
しきりにシャッターを切るハワードを横目に、クリスはただ目の前の個性のないとしか見えない新型を見上げていた。
階段で待っていた伊藤の突然の声がそう告げる。彼はクリスの前を歩く明華を見て少しばかり意外そうな顔をしていた。
「二式のお披露目をするんですか? 」
「ええ、隊長命令よ 」
そう言うと明華は伊藤を無視して階段を下っていく。
「いきなりスクープじゃないか。さっき『委託』って言ってたって事は、どこかの国か企業が開発に協力したって事だろ 」
「そういう相談事は小声でしていただけますか? 菱川重工ですよ 」
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「邪魔よ! 」
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「あのなあ、一応、この人たちはプレス関係者だろ? ここの中のもの見せちゃって大丈夫なのか? 」
男はそう言うと、キーラの方に目をやる。キーラは黙って明華を見つめた。そんなキーラに視線を奪われるクリス。キーラの銀色の髪が風になびいている。
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「それじゃあ入るわよ 」
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