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第14章 初めての休日
かなめの歌
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「いっぱい買っちゃった」
誠はおもちゃ屋で買った袋を下げて寮の自分の部屋の扉を開けた。
「あれ?空調は止めたつもりだけど……」
ひんやりとした空気に違和感を感じながら部屋の戸を開けると、誠はそこに人影を見つけた。
「よう!」
おかっぱ頭に黒のタンクトップ。そして左脇には愛銃『スプリングフィールドXDM40』。それは西園寺かなめ中尉だった。
「なんだ、西園寺さんが来てたんですか……」
誠は安どのため息をつきながら手提げ袋を部屋の片隅に置いた。
「なんだ、いい部屋じゃねえか。島田が寮長をやってるって聞いてたからもっと壁に落書きでもしてあるような部屋を想像してたのに」
「なんでそんなゲットーみたいなイメージなんですか?島田先輩は何者なんですか?」
「そりゃあヤンキー」
ベッドに腰かけて真顔でそう答えるかなめを見ながら誠は呆れたように立ち尽くす。
「あのー……それ、ギターですか?」
誠はかなめの足元にあるギターケースを見てそう言った。
「なんだよ。アタシが銃以外を持ってるのが不服か?」
「そんなことは無いですけど……」
かなめは誠に絡みながらギターケースを開けた。年季の入ったアコースティックギターがかなめの手の中に納まる。
「なんだかぴったりですね」
「褒めてもなんもでねえぞ」
そう言ってかなめは笑いながらギターを軽く撫でる。
「好きなんですか?」
「嫌いで弾く馬鹿はいねえだろ?それよりいつまで立ってるつもりだよ。そこに座れよ」
ベッドに腰かけたかなめは部屋の中央で立ち続けている誠にそう言った。仕方なく、誠はその場に腰かけた。
「西園寺さん」
「アタシは自由人なの。ギターを弾きたいときに弾いて歌いたいときに歌う。それだけ」
そう言うとかなめはギターをかき鳴らし始めた。
「聞いとけ。アタシの歌」
かなめはゆっくりとした曲を弾き始めた。
『……アイツのことを……思いながら……』
彼女のかすれたような歌声にマッチした悲しげな旋律だった。
かなめが歌うのは道ならぬ恋に悩みつつ前を向いて生きていく女性の歌だった。
『西園寺さんが好きなのは……フォーク?』
誠はサビに行くにしたがって盛り上がっていくかなめのギターと歌声を聞きながらそんなことを考えていた。
かなめの絶唱が終わると、ギターの音が止み静寂が訪れた。
「西園寺さん……」
誠は笑顔で気持ちよく余韻に浸っているかなめの顔を見つめた。
「アタシは歌いたいから歌った。まあ、オメエには残って欲しいんだ。うちにな」
そう言いながらかなめはギターをケースにしまう。
「え?もう帰るんですか?」
「アタシは自由人なの。好きに生きてるの。オメエがどうこうできることはねえよ」
そう言って笑いながらかなめは立ち上がった。
「あの、寮の入り口まで送ります」
「いいよ。オメエも昨日は一日走って疲れてんだろ?しばらくは姐御の基礎体力トレーニングが続くから……そいじゃ!」
軽く笑ったかなめはそのまま誠の部屋を出て行った。
「西園寺さん……」
誠はなんだか優しい気分に包まれながらかなめの座っていたベッドの縁に腰を掛けてぼんやりと部屋を眺めていた。
誠はおもちゃ屋で買った袋を下げて寮の自分の部屋の扉を開けた。
「あれ?空調は止めたつもりだけど……」
ひんやりとした空気に違和感を感じながら部屋の戸を開けると、誠はそこに人影を見つけた。
「よう!」
おかっぱ頭に黒のタンクトップ。そして左脇には愛銃『スプリングフィールドXDM40』。それは西園寺かなめ中尉だった。
「なんだ、西園寺さんが来てたんですか……」
誠は安どのため息をつきながら手提げ袋を部屋の片隅に置いた。
「なんだ、いい部屋じゃねえか。島田が寮長をやってるって聞いてたからもっと壁に落書きでもしてあるような部屋を想像してたのに」
「なんでそんなゲットーみたいなイメージなんですか?島田先輩は何者なんですか?」
「そりゃあヤンキー」
ベッドに腰かけて真顔でそう答えるかなめを見ながら誠は呆れたように立ち尽くす。
「あのー……それ、ギターですか?」
誠はかなめの足元にあるギターケースを見てそう言った。
「なんだよ。アタシが銃以外を持ってるのが不服か?」
「そんなことは無いですけど……」
かなめは誠に絡みながらギターケースを開けた。年季の入ったアコースティックギターがかなめの手の中に納まる。
「なんだかぴったりですね」
「褒めてもなんもでねえぞ」
そう言ってかなめは笑いながらギターを軽く撫でる。
「好きなんですか?」
「嫌いで弾く馬鹿はいねえだろ?それよりいつまで立ってるつもりだよ。そこに座れよ」
ベッドに腰かけたかなめは部屋の中央で立ち続けている誠にそう言った。仕方なく、誠はその場に腰かけた。
「西園寺さん」
「アタシは自由人なの。ギターを弾きたいときに弾いて歌いたいときに歌う。それだけ」
そう言うとかなめはギターをかき鳴らし始めた。
「聞いとけ。アタシの歌」
かなめはゆっくりとした曲を弾き始めた。
『……アイツのことを……思いながら……』
彼女のかすれたような歌声にマッチした悲しげな旋律だった。
かなめが歌うのは道ならぬ恋に悩みつつ前を向いて生きていく女性の歌だった。
『西園寺さんが好きなのは……フォーク?』
誠はサビに行くにしたがって盛り上がっていくかなめのギターと歌声を聞きながらそんなことを考えていた。
かなめの絶唱が終わると、ギターの音が止み静寂が訪れた。
「西園寺さん……」
誠は笑顔で気持ちよく余韻に浸っているかなめの顔を見つめた。
「アタシは歌いたいから歌った。まあ、オメエには残って欲しいんだ。うちにな」
そう言いながらかなめはギターをケースにしまう。
「え?もう帰るんですか?」
「アタシは自由人なの。好きに生きてるの。オメエがどうこうできることはねえよ」
そう言って笑いながらかなめは立ち上がった。
「あの、寮の入り口まで送ります」
「いいよ。オメエも昨日は一日走って疲れてんだろ?しばらくは姐御の基礎体力トレーニングが続くから……そいじゃ!」
軽く笑ったかなめはそのまま誠の部屋を出て行った。
「西園寺さん……」
誠はなんだか優しい気分に包まれながらかなめの座っていたベッドの縁に腰を掛けてぼんやりと部屋を眺めていた。
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