1,471 / 1,557
毎朝のように
おやつ
しおりを挟む
「あ……」
よく見ればかなめの一撃を受けたのは部隊最年少の整備班員の西高志兵長だった。出勤時間間際。食事を終えて安心しきっていたところへの一撃に思わず西はうずくまる。
「ごめんね……馬鹿が暴れて」
アメリアの謝罪にはまるで誠意の感じられない。
「ええ、大丈夫です……鼻血も出ていないみたいですし」
西は顔を抑えながらもなんとか自力で立ち上がった。鉄の規律と結束で知られる整備班員はその様子を見ながらもニヤニヤ笑って見せるだけ。まるで助ける様子も無い。そこには日ごろの西への整備班員の嫉妬があった。
部隊一の人気者、部隊付き看護師の神前ひよこ軍曹と彼が付き合っているのは公然の秘密だった。当然、嫉妬に狂う技術部員達は西を目の敵にしている。
「誰か助けてあげなさいよー」
そんな技術部員の感情をよく知っているアメリアの明らかに助ける気の無い言葉が響く。
「べ……別に大丈夫ですから」
西はそう叫ぶとそのまま鼻を押さえて食堂を飛び出して行った。快かなとそれを見送る古参兵達をアメリアは白い目で眺める。
「それじゃあ行くか!」
「後で西に謝って置けよ」
「アタシは上官だぜ……面倒くせえ」
かなめがつぶやくようにそう言うとアメリアもカウラも呆れたような視線で見上げる。
「かなめちゃん謝りなさいよ。大人でしょ?」
そんなアメリアの一言にかなめの顔がゆがむ。
「分かったよ……後で謝っておくから」
「ちゃんと謝るのよ……」
アメリアはそう言うとそのまま立ち上がる。手にはどんぶり。誠も今度はアメリアの手を煩わせまいと自分のどんぶりを手に取る。
「行きましょ」
そのままどんぶりをカウンターに返すとそのままアメリアは出口へと向かった。
「そうだ、ラーナ。飯は食ったか?」
いつの間にか手に湯飲みを持ってくつろいでいたラーナにかなめが話題を振る。突然のことに戸惑うように視線を泳がせた後、静かにうなづく。
「ええ、まあ」
「食べたのならいいけどな。神前。アタシはおやつが食べたい」
突然のかなめの一言。誠は先週警備部の新人が買ってきた月餅が厨房の冷蔵庫にあることを思い出して立ち上がる。
「ああ、誠ちゃん私のも!」
アメリアも叫ぶ。誠はそのまま厨房に飛び込んだ。
食事当番の管理部の面々が冷たい視線で大きな業務用冷蔵庫に飛びつく誠を迎える。
「相手が女性ばかりで……うらやましいねえ」
洗い場で背中を向けている菰田の言葉に肝を冷やしながら誠は月餅を取り出すとそのままカウンターに走る。先ほど慌ててかなめが湯飲みを返したことと、カウラの湯飲みが無いことを思い出した誠はそれをトレーに乗せると急ぎ足でかなめ達の所に辿り着いた。
「ご苦労」
「ありがとうな」
当然のことのように受け取るかなめ。カウラはすぐさまポットに手を伸ばす。
「本当に……神前曹長、いつもお疲れさまっす」
そんなラーナの気遣いの言葉を聞いて誠は苦笑いを浮かべる。
「いつものことですから」
「そうだな、いつものことだ」
かなめはそう言うとうまそうに月餅を口に運ぶ。
「そう言えば機動隊のパスでサーバーにアクセスするんだよな。機動隊の部隊長権限でどこまで入れるんだ?」
カウラにポットから番茶を注いでもらったものに手を伸ばしながらかなめがつぶやいた。
「まあある程度限定されるでしょうね……でもねえ。かなめちゃん。何の為にかなめちゃんがいるのよ。そういう時は……」
「おい、アメリア。アタシを犯罪者にしたいのか?」
アメリアの明らかにハッキングしろと言う態度に苦笑いを浮かべるかなめ。だが冷たくなった番茶を啜りながら誠はどうせ証拠が見つかるまで止めてもかなめがやたらとアクセスする光景を予想して苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、皆さんいいっすか?」
「茶ぐらい飲ませろよ」
月餅を頬張りながらかなめがつぶやく。アメリアはそれを見て呆れたように大きくため息をつく。
「なんだよその態度。潰すぞこのアマ」
アメリアとかなめの掛け合い漫才を見ながら仕方が無いと言うように笑うカウラと誠は立ち上がった。かなめも湯飲みを置くとそのまま静かに立ちあがる。
「神前、かたしておけよ」
かなめはそういい残してラーナ達と一緒に食堂を出て行った。置き去りにされた誠は厨房の当番の同僚達から冷ややかな視線を浴びながら仕方なく湯飲みを手に洗いものの棚に運んだ。
よく見ればかなめの一撃を受けたのは部隊最年少の整備班員の西高志兵長だった。出勤時間間際。食事を終えて安心しきっていたところへの一撃に思わず西はうずくまる。
「ごめんね……馬鹿が暴れて」
アメリアの謝罪にはまるで誠意の感じられない。
「ええ、大丈夫です……鼻血も出ていないみたいですし」
西は顔を抑えながらもなんとか自力で立ち上がった。鉄の規律と結束で知られる整備班員はその様子を見ながらもニヤニヤ笑って見せるだけ。まるで助ける様子も無い。そこには日ごろの西への整備班員の嫉妬があった。
部隊一の人気者、部隊付き看護師の神前ひよこ軍曹と彼が付き合っているのは公然の秘密だった。当然、嫉妬に狂う技術部員達は西を目の敵にしている。
「誰か助けてあげなさいよー」
そんな技術部員の感情をよく知っているアメリアの明らかに助ける気の無い言葉が響く。
「べ……別に大丈夫ですから」
西はそう叫ぶとそのまま鼻を押さえて食堂を飛び出して行った。快かなとそれを見送る古参兵達をアメリアは白い目で眺める。
「それじゃあ行くか!」
「後で西に謝って置けよ」
「アタシは上官だぜ……面倒くせえ」
かなめがつぶやくようにそう言うとアメリアもカウラも呆れたような視線で見上げる。
「かなめちゃん謝りなさいよ。大人でしょ?」
そんなアメリアの一言にかなめの顔がゆがむ。
「分かったよ……後で謝っておくから」
「ちゃんと謝るのよ……」
アメリアはそう言うとそのまま立ち上がる。手にはどんぶり。誠も今度はアメリアの手を煩わせまいと自分のどんぶりを手に取る。
「行きましょ」
そのままどんぶりをカウンターに返すとそのままアメリアは出口へと向かった。
「そうだ、ラーナ。飯は食ったか?」
いつの間にか手に湯飲みを持ってくつろいでいたラーナにかなめが話題を振る。突然のことに戸惑うように視線を泳がせた後、静かにうなづく。
「ええ、まあ」
「食べたのならいいけどな。神前。アタシはおやつが食べたい」
突然のかなめの一言。誠は先週警備部の新人が買ってきた月餅が厨房の冷蔵庫にあることを思い出して立ち上がる。
「ああ、誠ちゃん私のも!」
アメリアも叫ぶ。誠はそのまま厨房に飛び込んだ。
食事当番の管理部の面々が冷たい視線で大きな業務用冷蔵庫に飛びつく誠を迎える。
「相手が女性ばかりで……うらやましいねえ」
洗い場で背中を向けている菰田の言葉に肝を冷やしながら誠は月餅を取り出すとそのままカウンターに走る。先ほど慌ててかなめが湯飲みを返したことと、カウラの湯飲みが無いことを思い出した誠はそれをトレーに乗せると急ぎ足でかなめ達の所に辿り着いた。
「ご苦労」
「ありがとうな」
当然のことのように受け取るかなめ。カウラはすぐさまポットに手を伸ばす。
「本当に……神前曹長、いつもお疲れさまっす」
そんなラーナの気遣いの言葉を聞いて誠は苦笑いを浮かべる。
「いつものことですから」
「そうだな、いつものことだ」
かなめはそう言うとうまそうに月餅を口に運ぶ。
「そう言えば機動隊のパスでサーバーにアクセスするんだよな。機動隊の部隊長権限でどこまで入れるんだ?」
カウラにポットから番茶を注いでもらったものに手を伸ばしながらかなめがつぶやいた。
「まあある程度限定されるでしょうね……でもねえ。かなめちゃん。何の為にかなめちゃんがいるのよ。そういう時は……」
「おい、アメリア。アタシを犯罪者にしたいのか?」
アメリアの明らかにハッキングしろと言う態度に苦笑いを浮かべるかなめ。だが冷たくなった番茶を啜りながら誠はどうせ証拠が見つかるまで止めてもかなめがやたらとアクセスする光景を予想して苦笑いを浮かべた。
「じゃあ、皆さんいいっすか?」
「茶ぐらい飲ませろよ」
月餅を頬張りながらかなめがつぶやく。アメリアはそれを見て呆れたように大きくため息をつく。
「なんだよその態度。潰すぞこのアマ」
アメリアとかなめの掛け合い漫才を見ながら仕方が無いと言うように笑うカウラと誠は立ち上がった。かなめも湯飲みを置くとそのまま静かに立ちあがる。
「神前、かたしておけよ」
かなめはそういい残してラーナ達と一緒に食堂を出て行った。置き去りにされた誠は厨房の当番の同僚達から冷ややかな視線を浴びながら仕方なく湯飲みを手に洗いものの棚に運んだ。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
蒼穹の裏方
Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し
未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる