1,551 / 1,557
仕事も終わり
将軍家と関白太閤殿下
しおりを挟む
「そんなことよりずっと気になってたんすけど」
ビールを飲み終えた島田がゆっくりと手を挙げた。
「なんだよヤンキー」
「田安ってそんな幕府聞いたことがねえんですけど……徳川の間違いじゃねえんですか?」
島田の突然の発言にかなめはため息をつく。
「あのなあ……甲武には徳川なんて言う貴族はごまんといるんだ。アタシが女学校に言ってた時クラスのうち十人は徳川か松平なんだぜ……区別つけなきゃ……訳がわかんねえだろ」
かなめの言葉を聞いても島田はまだ納得できないでいた。
「そうですわね。紀伊、尾張、水戸の御三家と田安、一橋、清水の御三卿は甲武に末裔がそろってますものね……他にも松平をいれるとそれはもう大変な数の徳川・松平家がありますもの」
「確か徳川家康って子だくさんだったわよね。さらに徳川吉宗とか徳川家斉とか子だくさんの将軍がいっぱいいて……」
アメリアは麗子の言葉を継いでそう言った。
「大体日本の苗字なんてそれ言い始めたら『源平藤橘』でほとんど占めてんだ……まあ東和の庶民のオメエには関係ねえがな」
かなめはあきらめたようにそう言うとため息をついた。
「でもまあ複雑なんですね、甲武は……でもなんでしたっけ?関白太政……」
「関白太政大臣!記憶力ねえのか!テメエは!」
感心した様子の島田をかなめが怒鳴りつける。
「怒鳴んなくなっていいじゃないですか……その関白とかは何をするんですか?西園寺さんの親父さんが宰相をしてるんでしょ?あの国」
島田は馬耳東風と言うようにそう尋ねてくる。かなめも麗子も呆れたようにため息をついた。
「あのなあ。宰相は誰かに任命されてやるもんだ。あの国には皇帝はいないから代わりに貴族が任命する制度になってるんだ」
「そうですわ。左大臣は外交に関する大臣を任命し、右大臣は将軍を任命する。そして内政に関しては内大臣」
かなめと麗子が立て続けにそう言った。
「じゃあ、宰相は誰が任命するんです?全権握ってるんでしょ?宰相は」
島田はそう食い下がった。
「本来なら関白太政大臣が任命するんですけど……」
そこまで言うと麗子はちびりちびりラムを飲んでいるかなめに目をやった。
「あの国、関白今はいねえな」
かなめはあっさりとそう言った。あまりにもあっさりしていたので誠は拍子抜けした。
「じゃあ誰が任命してるんです?宰相を」
誠は思わずそう尋ねていた。
「かなめさんがわがまま言うから……」
麗子はそう言ってかなめに笑いかける。
「親父は自分のわがままで貴族の位をアタシに譲って平民になった……その場合、アタシか妻……アタシのお袋な、そいつが親父を任命する。アタシは関白にはなってねえから結論は出てるだろ?」
かなめはそう言って笑いかけた。
「西園寺さんのお母さん……」
誠はあの嵯峨惟基を『人斬り新三郎』と呼ばれるまでに鍛え上げたという女傑のことを思い出した。
「お袋にはなんの権限も無いことになってる……まあなってるがな……」
かなめはそう言って乾いた笑みを浮かべた。
「まあそうですわね。制度的には」
麗子もそれを認めてほほ笑む。
「でも『甲武の鬼御前』と言えば西園寺康子女史のことだろ?」
カウラはそう言ってかなめを見つめた。
「まあな。『官派』の面々もお袋には頭が上がらねえんだ……弱みを握られてるからな」
「弱み?」
かなめのあいまいな口調に誠は思わずそうツッコんだ。
「まあな……いろいろとあるんだ。あの国の貴族制って奴のおかげで良い目を見てることがばれると『官派』の連中も市民の支持を無くす。ただでさえ親父の平民主義が人気のところへそんな爆弾投下されたらたまらねえだろ?」
「例えば?」
明らかに興味深そうにアメリアがそう言うがかなめは大きくため息をついて署っとグラスからラムを飲んだ。
「アタシに言わせるな……それにアタシが知ってるレベルの話なら甲武の新聞社の記者でも知ってる話だ……そんなのが脅しに使えるか」
「ゆすりの類か……西園寺の母親なら得意そうだな」
「カウラ!そりゃどういう意味だ!」
「言った通りの意味だ。他意はない」
憤るかなめをやり過ごすとカウラはボンジリ串を口に運んだ。
「なるほど……怖い人なんですね、西園寺さんのお母さんは」
「ああ、あれは鬼だ。まあかえでから性癖を抜いて戦闘能力を五千倍にして同じく陰険さを五千倍にしたらああなる。気をつけろよ」
かなめの口からは具体的なことは聞き出せないと誠はあきらめた。
ビールを飲み終えた島田がゆっくりと手を挙げた。
「なんだよヤンキー」
「田安ってそんな幕府聞いたことがねえんですけど……徳川の間違いじゃねえんですか?」
島田の突然の発言にかなめはため息をつく。
「あのなあ……甲武には徳川なんて言う貴族はごまんといるんだ。アタシが女学校に言ってた時クラスのうち十人は徳川か松平なんだぜ……区別つけなきゃ……訳がわかんねえだろ」
かなめの言葉を聞いても島田はまだ納得できないでいた。
「そうですわね。紀伊、尾張、水戸の御三家と田安、一橋、清水の御三卿は甲武に末裔がそろってますものね……他にも松平をいれるとそれはもう大変な数の徳川・松平家がありますもの」
「確か徳川家康って子だくさんだったわよね。さらに徳川吉宗とか徳川家斉とか子だくさんの将軍がいっぱいいて……」
アメリアは麗子の言葉を継いでそう言った。
「大体日本の苗字なんてそれ言い始めたら『源平藤橘』でほとんど占めてんだ……まあ東和の庶民のオメエには関係ねえがな」
かなめはあきらめたようにそう言うとため息をついた。
「でもまあ複雑なんですね、甲武は……でもなんでしたっけ?関白太政……」
「関白太政大臣!記憶力ねえのか!テメエは!」
感心した様子の島田をかなめが怒鳴りつける。
「怒鳴んなくなっていいじゃないですか……その関白とかは何をするんですか?西園寺さんの親父さんが宰相をしてるんでしょ?あの国」
島田は馬耳東風と言うようにそう尋ねてくる。かなめも麗子も呆れたようにため息をついた。
「あのなあ。宰相は誰かに任命されてやるもんだ。あの国には皇帝はいないから代わりに貴族が任命する制度になってるんだ」
「そうですわ。左大臣は外交に関する大臣を任命し、右大臣は将軍を任命する。そして内政に関しては内大臣」
かなめと麗子が立て続けにそう言った。
「じゃあ、宰相は誰が任命するんです?全権握ってるんでしょ?宰相は」
島田はそう食い下がった。
「本来なら関白太政大臣が任命するんですけど……」
そこまで言うと麗子はちびりちびりラムを飲んでいるかなめに目をやった。
「あの国、関白今はいねえな」
かなめはあっさりとそう言った。あまりにもあっさりしていたので誠は拍子抜けした。
「じゃあ誰が任命してるんです?宰相を」
誠は思わずそう尋ねていた。
「かなめさんがわがまま言うから……」
麗子はそう言ってかなめに笑いかける。
「親父は自分のわがままで貴族の位をアタシに譲って平民になった……その場合、アタシか妻……アタシのお袋な、そいつが親父を任命する。アタシは関白にはなってねえから結論は出てるだろ?」
かなめはそう言って笑いかけた。
「西園寺さんのお母さん……」
誠はあの嵯峨惟基を『人斬り新三郎』と呼ばれるまでに鍛え上げたという女傑のことを思い出した。
「お袋にはなんの権限も無いことになってる……まあなってるがな……」
かなめはそう言って乾いた笑みを浮かべた。
「まあそうですわね。制度的には」
麗子もそれを認めてほほ笑む。
「でも『甲武の鬼御前』と言えば西園寺康子女史のことだろ?」
カウラはそう言ってかなめを見つめた。
「まあな。『官派』の面々もお袋には頭が上がらねえんだ……弱みを握られてるからな」
「弱み?」
かなめのあいまいな口調に誠は思わずそうツッコんだ。
「まあな……いろいろとあるんだ。あの国の貴族制って奴のおかげで良い目を見てることがばれると『官派』の連中も市民の支持を無くす。ただでさえ親父の平民主義が人気のところへそんな爆弾投下されたらたまらねえだろ?」
「例えば?」
明らかに興味深そうにアメリアがそう言うがかなめは大きくため息をついて署っとグラスからラムを飲んだ。
「アタシに言わせるな……それにアタシが知ってるレベルの話なら甲武の新聞社の記者でも知ってる話だ……そんなのが脅しに使えるか」
「ゆすりの類か……西園寺の母親なら得意そうだな」
「カウラ!そりゃどういう意味だ!」
「言った通りの意味だ。他意はない」
憤るかなめをやり過ごすとカウラはボンジリ串を口に運んだ。
「なるほど……怖い人なんですね、西園寺さんのお母さんは」
「ああ、あれは鬼だ。まあかえでから性癖を抜いて戦闘能力を五千倍にして同じく陰険さを五千倍にしたらああなる。気をつけろよ」
かなめの口からは具体的なことは聞き出せないと誠はあきらめた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
時き継幻想フララジカ
日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。
なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。
銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。
時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。
【概要】
主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。
現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
完結 シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣
織部
ファンタジー
ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。
背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。
母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。
セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。
彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。
セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。
「セラ、ウミ」
「ええ、そうよ。海」
ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します!
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる