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第五章 『特殊な部隊』の帰る人
第15話 こたつ会議、ふれあい至上主義
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「全くここは邪魔ばかりはいるのね……会議に集中しろって茜ちゃんは言うけどこんなことじゃ会議に集中なんてできないじゃないの!じゃあさっきの話の続きをするわね!」
ゲートを閉め、かなめがこたつへ戻ってくるのを待たずに、アメリアは話を始めた。拳を握りしめるかなめの手を握ってカウラが首を振った。かなめはそれを見てようやく落ち着いてコタツの外に正座している誠に勝ち誇った笑みを浮かべてみせた。
「まず誕生日会ですけど」
「素直にクリスマスがやりたいって言えばいいのに……」
ぼそりとつぶやくかなめに鋭いアメリアの流し目が飛んだ。肩をすくめて舌を出したかなめを見ると、アメリアは再び話を続けた。
「いろいろ考えたのよ。寮でにぎやかに行う。月島屋でパーとやる。でもそれでは私達が求めている家族とのふれあいという要素が満たせないのよね。今回のテーマは『ふれあい』これで行きましょう。これが基本コンセプト。良いわね!」
誠はカウラの顔を見てみた。カウラはアメリアの言うような家族とのふれあいを求めているわけじゃないとはっきりわかるような苦笑を浮かべていた。ふれあいを求めているのはむしろアメリアの方では無いかと言うことでカウラと誠の心は通じ合っていた。
「そこで誠ちゃんにお願いがあるの。ここに居るメンバーでは誠ちゃんにしかできないお願いなの。聞いてくれる?」
ずいとコタツに身を乗り出してアメリアは誠を見つめてきた。いつもは瞳の線すら見えない糸目が見開かれて放たれるアメリアの眼力に誠はつい身をそらして避けてしまう。アメリアの視線ははっきりと誠を捉えているのがわかった。いつものことだがこういう時のアメリアの発言はろくでもないことであることはわかりきっていた。しかし、同時にこの中で唯一の下士官の誠に拒否権が無いことも十分理解していた。
「誠ちゃんの家で誕生日会。お願いできるかしら?私もカウラちゃんも家族のいない『ラスト・バタリオン』でしょ?かなめちゃんの実家ははるか遠くの甲武だし。あんなとこまで行ってる時間がもったいないし。ねえ、良いアイディアでしょ?協力してよ」
予想は的中した。誠は助けを求めるようにカウラを見た。カウラは諦めたように首を横に振った。今度はかなめを見た。タレ目はニヤニヤ笑いながら誠の発するだろう泣き言を想像しているように見えた。
「うちって……クリスマスはやりませんよ。うちは真言宗智山派なんで……まあ、宗派の問題というより、うち、他人を呼ぶ準備ができてなくて……」
誠はとりあえず何を言っても無駄だろうと諦め半分の反論をした。
「いいのよ。クリスマスじゃなくてカウラちゃんのお誕生日会なんだから!別に仏教の何宗だろうが関係ないわよ!」
そう言うと満面の笑みでアメリアは誠を見つめてきた。こういう時のアメリアに関わるとろくなことにならない。この数か月で誠が学んだ多くの事の一つがそれだった。
「でも……確か父は学校の行事とかでこの当たりの日はいないのが普通ですけど。家庭を味わいたいなら他の人に頼んでみたらどうですか?ひよこさんとかなら詩が好きな人ですからそれこそ『ふれあい』にぴったりなパーティーを企画してくれると思いますよ。それにひよこさんの家は母子家庭ですからきっと喜ばれます。うちは父が出かけているんで確かに母子家庭みたいなものですが、母は長い事剣道場の主をしているので近所の人にも信頼されているので、わざわざ僕がかえって手間をかけるのは申し訳なくって……」
抵抗するように誠はそう言ってみた。元々全寮制の私立高校教師の誠の父である誠一がクリスマス前後に家にいないことが多いのは事実だった。誠も子供の頃は年末には父はいないものだと思い込んでいた時期もあったくらいである。母と二人きりの年末を過ごすのが普通のことだった。ひよこの名前を出したのは、母子家庭でいつも弟に良い思いをさせてあげたいと言うひよこの為に金持ちのかなめが豪勢なクリスマスディナーを用意することなどたやすいことだと誠なりに気を使っての事だった。
だが、アメリアはまるでひるむ様子もない。一度アメリアの脳内で決めた決定事項は揺るぐことが無い。舌なめずりをしているように見えるのは気のせいだと誠は思い込むことにしながらアメリアの眼力に耐えていた。
「じゃあ誠ちゃんはお母さんに連絡して場所の確保をお願いするわ」
アメリアは誠の意見など完全になかったものとして端末を取り出して通信を始めた。
「僕の意見は無視ですか!僕に確認を取ったさっきの一言は何だったんですか!」
誠の抗議をよそに、アメリアは端末へ視線を落とした。奇妙に力のある眼に見つめられて焦っていた誠はようやくそれから解放されて大きく息を吐いた。
「それでお料理……」
こう言ってアメリアは黙り込んだ。
アメリア、カウラ、かなめ。家事とは縁のない三人である。寮の料理当番では三人がすさまじい能力を発揮してみせたことは伝説となりつつあった。
アメリアに任せると味付けが崩壊した。包丁の使い方は二年ほど落語家の前座修行と称して家事全般を任されていたので手慣れたものだった。レシピどおりに火を通し手早く作業を進めた。だが味付けで普通を拒否する彼女は絶対に適量を守ることはなかった。それ以来彼女は食材切りがかりとして味付け担当を別に設けて料理当番を務めることになった。
カウラの場合手際が悪いのが問題だった。まるで理科実験をしているとでも言うように、計りに目を向けて動かなくなる。そんなカウラに笑っていられたのは最初に当番のときだけだった。ともかく計る。何でも計る。そして間違えないようにと調理中にも計る。次第に料理を作っているのか食材の重さの検査をしているのかわからなくなる。当然時間は数倍かかり、朝食を食わないで寮を飛び出す隊員が続出した。それ以来彼女は食事当番が免除されることとなった。
正反対なのがかなめだった。適当、いい加減、そして短気。野菜炒めは半生。目玉焼きはスクランブルエッグ化。味噌汁はぬるかった。それを当の本人は全く気にせず腹に溜まればそれでいいという感じで食べるだけにさらに性質が悪かった。当然、彼女も食事当番免除組である。
「ほら!クリスマスの時期ってオードブルの広告とか一杯出ているじゃないですか!何とかなりますよ!それに母は料理が得意なんで……皆さんの料理の勉強にもなるかも知れませんよ。今から考える必要なんて有りません!」
明るく作り笑いを浮かべて誠は叫んだ。とりあえずアメリア達が作る料理は食べたくないと言うはっきりした意志がそこには現れていた。自覚のあるカウラは引きつった笑いを浮かべてうなずき、自分のことは棚に上げているだろうが、とりあえずアメリアとカウラの料理は食べたくないかなめが納得したように引きつった笑みを浮かべていた。
「そうね……じゃあ料理は出前でOKっと。期待してるわよ、誠ちゃんの『おふくろの味』」
誠は胸をなでおろした。コタツから追放されて正座している誠の足を隙間風が襲った。
「神前。寒いんじゃないのか?」
カウラはそう言うとかなめをにらみつけた。一人、こたつに入ることを許されずに正座を続けていた誠は確かに寒かった。そればかりでなくなんとなくはじめた正座のせいで足がしびれてきていてぴょこぴょこと足を動かしてそれを我慢していた。
「仕方ないなあ……ここに足を入れろよ。少しは暖まるだろ」
ずるずるとかなめは横に移動した。そしてそこに足一本分くらいのスペースが出来た。
「おい、西園寺。それじゃあ入れないんじゃないのか?神前はこの長身だ。足も長い。そんな幅じゃ入りきらないぞ」
カウラは大柄な誠を気遣ってそう言ってくれた。
「良いんだよ!片方ずつ変わりばんこに入れればあったかくなるだろ?それになんなら……」
タレ目のかなめの上目遣いの視線を感じて誠は寒気がした。舌なめずりをしているその顔にはなんともいえない色気が立ち込めた。誠も一瞬だまされそうになるがカウラの冷たい視線で我に返った。
「無茶言わないでくださいよ。それにそんなに密着してたらセクハラじゃないですか。僕は日野少佐じゃありません!」
「安心しろ、アタシが望んでいないかえでのそれはセクハラだがアタシが望んでいる神前のそれはアタシがセクハラと認めない。つまりこれはセクハラではねえんだ。何ならオメエの望む結末まで……。目の前の振られた哀れな女共にそのすべてを見せつけられると考えるとアタシとしても興奮して来るわ」
かなめの舌なめずりはマジであることを誠はその言葉で確信した。
誠の泣き言が響く警備室の中は暖房は聞いているがこたつの中で無いととても耐えられるものでは無い。だが、コタツの上で画面を黙っていじっているアメリアは彼等のことなど眼中になかった。
「それでね、私達三人はカウラちゃんにプレゼントをしないといけないわけよね。これはカウラちゃんの誕生日パーティーなんだから。これもコンセプトの『ふれあい』に沿ってそれぞれ決めてね♪」
またアメリアは無茶な提案をしてきた。プレゼントと言うが、一番の浪費家で金欠続きのアメリア自身にそんな小遣いが残っているのか誠は疑っていた。
「遠慮する。貴様等の趣味は知っている。貴様等のプレゼントなど部屋に余計な場所を取られるだけで迷惑だ。自分の必要なものは自分の給料で買う。それが私の主義だ」
アメリアの言葉にカウラは即答した。その言葉を聞くとアメリアはいかにも残念そうな表情を浮かべた。
「その方が賢明だよなあ。アメリアの部屋を見てみろ。まるでゴミ屋敷だ。プレゼントなんてもらっても即ゴミ箱行きが決まってるのにする必要なんてねえだろ」
また少しだけコタツのスペースを作るべく動きながらかなめがつぶやいた。
「もしかして乙女ゲーとかを用意していたんじゃないですか……しかも自分が飽きた中古のやつ」
「……違うわよ!(0.2秒遅れて)違わないけど!」
誠の言葉にアメリアが微妙な反応をするので誠の言葉が図星だったのだとかなめもカウラもすぐに理解した。
「図星か……それはプレゼントとは言わないぞ。それに私はゲームはしない。やるのはパチンコとスロットだけだ」
カウラはため息をつきながらアメリアの思惑に呆れ果てていた。
「違うのよ!今度は新品の奴を!」
「まず最初に自分がデバッグと称して遊ぶんだろ?……それか落語の動画。これも先に自分が見たのを押し付けるわけだ。それのどこが『ふれあい』なんだ?説明しろ。コンセプト間違ってるじゃねえか」
カウラとかなめに突っ込まれて思い切り沈んだ顔でアメリアは誠に助けを求めるような視線を投げてきた。だが誠もさすがにこの状態で彼女をかばうことは出来ず視線を落とした。
「アメリアさん。プレゼントは相手の事を考えてしましょうね。そこんところを間違えるとただの嫌がらせですよ」
誠からアメリアに言える言葉はそれだけだった。事実、アメリアのしようとしていることはカウラからすれば嫌がらせ以外の何物でもなかった。
ゲートを閉め、かなめがこたつへ戻ってくるのを待たずに、アメリアは話を始めた。拳を握りしめるかなめの手を握ってカウラが首を振った。かなめはそれを見てようやく落ち着いてコタツの外に正座している誠に勝ち誇った笑みを浮かべてみせた。
「まず誕生日会ですけど」
「素直にクリスマスがやりたいって言えばいいのに……」
ぼそりとつぶやくかなめに鋭いアメリアの流し目が飛んだ。肩をすくめて舌を出したかなめを見ると、アメリアは再び話を続けた。
「いろいろ考えたのよ。寮でにぎやかに行う。月島屋でパーとやる。でもそれでは私達が求めている家族とのふれあいという要素が満たせないのよね。今回のテーマは『ふれあい』これで行きましょう。これが基本コンセプト。良いわね!」
誠はカウラの顔を見てみた。カウラはアメリアの言うような家族とのふれあいを求めているわけじゃないとはっきりわかるような苦笑を浮かべていた。ふれあいを求めているのはむしろアメリアの方では無いかと言うことでカウラと誠の心は通じ合っていた。
「そこで誠ちゃんにお願いがあるの。ここに居るメンバーでは誠ちゃんにしかできないお願いなの。聞いてくれる?」
ずいとコタツに身を乗り出してアメリアは誠を見つめてきた。いつもは瞳の線すら見えない糸目が見開かれて放たれるアメリアの眼力に誠はつい身をそらして避けてしまう。アメリアの視線ははっきりと誠を捉えているのがわかった。いつものことだがこういう時のアメリアの発言はろくでもないことであることはわかりきっていた。しかし、同時にこの中で唯一の下士官の誠に拒否権が無いことも十分理解していた。
「誠ちゃんの家で誕生日会。お願いできるかしら?私もカウラちゃんも家族のいない『ラスト・バタリオン』でしょ?かなめちゃんの実家ははるか遠くの甲武だし。あんなとこまで行ってる時間がもったいないし。ねえ、良いアイディアでしょ?協力してよ」
予想は的中した。誠は助けを求めるようにカウラを見た。カウラは諦めたように首を横に振った。今度はかなめを見た。タレ目はニヤニヤ笑いながら誠の発するだろう泣き言を想像しているように見えた。
「うちって……クリスマスはやりませんよ。うちは真言宗智山派なんで……まあ、宗派の問題というより、うち、他人を呼ぶ準備ができてなくて……」
誠はとりあえず何を言っても無駄だろうと諦め半分の反論をした。
「いいのよ。クリスマスじゃなくてカウラちゃんのお誕生日会なんだから!別に仏教の何宗だろうが関係ないわよ!」
そう言うと満面の笑みでアメリアは誠を見つめてきた。こういう時のアメリアに関わるとろくなことにならない。この数か月で誠が学んだ多くの事の一つがそれだった。
「でも……確か父は学校の行事とかでこの当たりの日はいないのが普通ですけど。家庭を味わいたいなら他の人に頼んでみたらどうですか?ひよこさんとかなら詩が好きな人ですからそれこそ『ふれあい』にぴったりなパーティーを企画してくれると思いますよ。それにひよこさんの家は母子家庭ですからきっと喜ばれます。うちは父が出かけているんで確かに母子家庭みたいなものですが、母は長い事剣道場の主をしているので近所の人にも信頼されているので、わざわざ僕がかえって手間をかけるのは申し訳なくって……」
抵抗するように誠はそう言ってみた。元々全寮制の私立高校教師の誠の父である誠一がクリスマス前後に家にいないことが多いのは事実だった。誠も子供の頃は年末には父はいないものだと思い込んでいた時期もあったくらいである。母と二人きりの年末を過ごすのが普通のことだった。ひよこの名前を出したのは、母子家庭でいつも弟に良い思いをさせてあげたいと言うひよこの為に金持ちのかなめが豪勢なクリスマスディナーを用意することなどたやすいことだと誠なりに気を使っての事だった。
だが、アメリアはまるでひるむ様子もない。一度アメリアの脳内で決めた決定事項は揺るぐことが無い。舌なめずりをしているように見えるのは気のせいだと誠は思い込むことにしながらアメリアの眼力に耐えていた。
「じゃあ誠ちゃんはお母さんに連絡して場所の確保をお願いするわ」
アメリアは誠の意見など完全になかったものとして端末を取り出して通信を始めた。
「僕の意見は無視ですか!僕に確認を取ったさっきの一言は何だったんですか!」
誠の抗議をよそに、アメリアは端末へ視線を落とした。奇妙に力のある眼に見つめられて焦っていた誠はようやくそれから解放されて大きく息を吐いた。
「それでお料理……」
こう言ってアメリアは黙り込んだ。
アメリア、カウラ、かなめ。家事とは縁のない三人である。寮の料理当番では三人がすさまじい能力を発揮してみせたことは伝説となりつつあった。
アメリアに任せると味付けが崩壊した。包丁の使い方は二年ほど落語家の前座修行と称して家事全般を任されていたので手慣れたものだった。レシピどおりに火を通し手早く作業を進めた。だが味付けで普通を拒否する彼女は絶対に適量を守ることはなかった。それ以来彼女は食材切りがかりとして味付け担当を別に設けて料理当番を務めることになった。
カウラの場合手際が悪いのが問題だった。まるで理科実験をしているとでも言うように、計りに目を向けて動かなくなる。そんなカウラに笑っていられたのは最初に当番のときだけだった。ともかく計る。何でも計る。そして間違えないようにと調理中にも計る。次第に料理を作っているのか食材の重さの検査をしているのかわからなくなる。当然時間は数倍かかり、朝食を食わないで寮を飛び出す隊員が続出した。それ以来彼女は食事当番が免除されることとなった。
正反対なのがかなめだった。適当、いい加減、そして短気。野菜炒めは半生。目玉焼きはスクランブルエッグ化。味噌汁はぬるかった。それを当の本人は全く気にせず腹に溜まればそれでいいという感じで食べるだけにさらに性質が悪かった。当然、彼女も食事当番免除組である。
「ほら!クリスマスの時期ってオードブルの広告とか一杯出ているじゃないですか!何とかなりますよ!それに母は料理が得意なんで……皆さんの料理の勉強にもなるかも知れませんよ。今から考える必要なんて有りません!」
明るく作り笑いを浮かべて誠は叫んだ。とりあえずアメリア達が作る料理は食べたくないと言うはっきりした意志がそこには現れていた。自覚のあるカウラは引きつった笑いを浮かべてうなずき、自分のことは棚に上げているだろうが、とりあえずアメリアとカウラの料理は食べたくないかなめが納得したように引きつった笑みを浮かべていた。
「そうね……じゃあ料理は出前でOKっと。期待してるわよ、誠ちゃんの『おふくろの味』」
誠は胸をなでおろした。コタツから追放されて正座している誠の足を隙間風が襲った。
「神前。寒いんじゃないのか?」
カウラはそう言うとかなめをにらみつけた。一人、こたつに入ることを許されずに正座を続けていた誠は確かに寒かった。そればかりでなくなんとなくはじめた正座のせいで足がしびれてきていてぴょこぴょこと足を動かしてそれを我慢していた。
「仕方ないなあ……ここに足を入れろよ。少しは暖まるだろ」
ずるずるとかなめは横に移動した。そしてそこに足一本分くらいのスペースが出来た。
「おい、西園寺。それじゃあ入れないんじゃないのか?神前はこの長身だ。足も長い。そんな幅じゃ入りきらないぞ」
カウラは大柄な誠を気遣ってそう言ってくれた。
「良いんだよ!片方ずつ変わりばんこに入れればあったかくなるだろ?それになんなら……」
タレ目のかなめの上目遣いの視線を感じて誠は寒気がした。舌なめずりをしているその顔にはなんともいえない色気が立ち込めた。誠も一瞬だまされそうになるがカウラの冷たい視線で我に返った。
「無茶言わないでくださいよ。それにそんなに密着してたらセクハラじゃないですか。僕は日野少佐じゃありません!」
「安心しろ、アタシが望んでいないかえでのそれはセクハラだがアタシが望んでいる神前のそれはアタシがセクハラと認めない。つまりこれはセクハラではねえんだ。何ならオメエの望む結末まで……。目の前の振られた哀れな女共にそのすべてを見せつけられると考えるとアタシとしても興奮して来るわ」
かなめの舌なめずりはマジであることを誠はその言葉で確信した。
誠の泣き言が響く警備室の中は暖房は聞いているがこたつの中で無いととても耐えられるものでは無い。だが、コタツの上で画面を黙っていじっているアメリアは彼等のことなど眼中になかった。
「それでね、私達三人はカウラちゃんにプレゼントをしないといけないわけよね。これはカウラちゃんの誕生日パーティーなんだから。これもコンセプトの『ふれあい』に沿ってそれぞれ決めてね♪」
またアメリアは無茶な提案をしてきた。プレゼントと言うが、一番の浪費家で金欠続きのアメリア自身にそんな小遣いが残っているのか誠は疑っていた。
「遠慮する。貴様等の趣味は知っている。貴様等のプレゼントなど部屋に余計な場所を取られるだけで迷惑だ。自分の必要なものは自分の給料で買う。それが私の主義だ」
アメリアの言葉にカウラは即答した。その言葉を聞くとアメリアはいかにも残念そうな表情を浮かべた。
「その方が賢明だよなあ。アメリアの部屋を見てみろ。まるでゴミ屋敷だ。プレゼントなんてもらっても即ゴミ箱行きが決まってるのにする必要なんてねえだろ」
また少しだけコタツのスペースを作るべく動きながらかなめがつぶやいた。
「もしかして乙女ゲーとかを用意していたんじゃないですか……しかも自分が飽きた中古のやつ」
「……違うわよ!(0.2秒遅れて)違わないけど!」
誠の言葉にアメリアが微妙な反応をするので誠の言葉が図星だったのだとかなめもカウラもすぐに理解した。
「図星か……それはプレゼントとは言わないぞ。それに私はゲームはしない。やるのはパチンコとスロットだけだ」
カウラはため息をつきながらアメリアの思惑に呆れ果てていた。
「違うのよ!今度は新品の奴を!」
「まず最初に自分がデバッグと称して遊ぶんだろ?……それか落語の動画。これも先に自分が見たのを押し付けるわけだ。それのどこが『ふれあい』なんだ?説明しろ。コンセプト間違ってるじゃねえか」
カウラとかなめに突っ込まれて思い切り沈んだ顔でアメリアは誠に助けを求めるような視線を投げてきた。だが誠もさすがにこの状態で彼女をかばうことは出来ず視線を落とした。
「アメリアさん。プレゼントは相手の事を考えてしましょうね。そこんところを間違えるとただの嫌がらせですよ」
誠からアメリアに言える言葉はそれだけだった。事実、アメリアのしようとしていることはカウラからすれば嫌がらせ以外の何物でもなかった。
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