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『力』を持つ者の定め 『特殊な部隊』の通過儀礼としての『事件』

第64話 『機械の体』の西園寺かなめ大尉、見参!

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 誠はただ両手を手錠で拘束されたまま、ぼろぼろの雑居ビルの一室に監禁されていた。

 突然、ドアの前で大きな物音と、男のうめき声がした。そしてその直後に銃声が二発響く。誠は身を起こしてじっとドアを見つめた。

 ドアを撃つ銃声がして、扉が蹴破られると、そこには光学迷彩式戦闘服姿のかなめが拳銃を構えて立っていた。

「はーい、囚われの王子様。『円卓の騎士』がお迎えにあがりましたぜ!」 

 笑顔を向けるかなめだが、誠には彼女の顔よりもその足元に頭を吹き飛ばされた死体が転がっている方に目が行った。

「んだ?アタシが助けたんだぜ、見るならアタシの顔でも見ろよ、この『愛玩動物』」 

 誠はあたりに漂う『人間の血液』の匂いに酔いながらかなめの作り笑顔を見つめる。

「西園寺さん……どうして僕のいる場所が」

 初めての『拉致監禁』事件の当事者となった誠には、そんな言葉を口にするのが精一杯だった。

「発信機兼盗聴器をあの『駄目人間』からもらったろ?当然、アタシの『電子の脳』にはバレバレなわけ」

 そう言うとかなめは誠の顎をつかんで顔を近づける。

「手錠か。ちょっと待てよ」 

 そう言うとかなめは素手で手錠の鎖をねじ切った。

「このくらい簡単だ。アタシは『生身』じゃねえからな。この体はすでに『機械化』済みだ……まあ、よく我慢したな。さすがアタシが仕込んだだけある。立派な『ペット』だ」

 誠は笑顔でそう言うかなめを見た。そこには、あまりに美しくて、うつろなかなめのたれ目があった。
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