特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』 遼州の闇

橋本 直

文字の大きさ
135 / 187
『出動』のブリーフィング

第135話 『特殊な部隊』には『無用』の自分

しおりを挟む
「それでは時計あわせ、三、二、一」 

 司法局実働部隊運用艦『ふさ』、機動部隊控え室。

 その名前にもかかわらず、誠はここに乗艦以来、一度も入ったことは無かった。

 第一小隊小隊長のカウラ・ベルガーが一番左に立っていた。その隣には第一小隊二番機担当の西園寺かなめの姿がある。そして『05式特戦乙型』を与えられる予定の『回収・補給』係の神前誠は直立不動の姿勢でその隣に立っていた。

 機動部隊長であり『偉大なる中佐殿』と呼ばれるクバルカ・ラン中佐がその前に立っていた。それぞれに腕時計をして、作戦時間の時計合わせをしていた。

「今回の『クーデター首謀者処刑』作戦の特機運用はこのメンバーでやる。他からの支援はねーかんな!」 

 部下達を見回した後、ランはそう言い切った。

「いいぜ、そんなもんだろ?」

 まるで勝利が決まっているかのようにかなめはそう言った。

 誠は気が気でなかった。

 相手は第六艦隊のエリート部隊である。その総戦力すら『補給係』の誠には聞かされていない。

「僕にも敵の戦力ぐらい教えてくださいよ」

 誠は恐る恐る手を挙げてそう言った。 

「質問は後!現在|11:00ひとひとまるまる時。12:00ひとふたまるまる時にベルガー、西園寺、神前はハンガーに集合。そして別命あるまで乗機にて待機。以上質問は?」 

「ハイ!ハーイ!」 

 まるで小学生が出来た答えを発表するような勢いで誠は手を上げた。

「ちなみに神前の質問はすべて却下する!」 

「そんな!僕だって出撃するんですよ!補給は!回収はどうするんですか!」 

 誠は当たり前の抗議をした。しかし、ランは全く聞く耳を持たない。

「全部アタシが考えて指示を出す!アタシは『人類最強』だから相手は死ぬ!だからオメーみたいな使えねーのに教える意味はねー!」 

 ランは無茶苦茶な叫び声をあげた。

「神前は逃げりゃあいいんだよ。叔父貴だって逃げていいって言ってんだから」

 誠の隣に立つかなめがそうつぶやいてたれ目で誠を見上げた。

「……僕は……必要無いんですか?」

 かなめに言っても無駄だと思った誠は小隊長のカウラの顔を見てそう言った。

「特に必要ないな。貴様は私にとってはいれば便利だという程度だ」

 カウラの非情な言葉が誠の耳に響いた。

 誠は『逃げる方法』を訪ねようと、機動部隊長のランに目をやった。

 かわいらしいランの顔に笑顔が浮かんだ。

「逃げてもいーぜ。アタシ等はオメーを恨まねーし、責めねーよ。それもまー人生だ。まー、人生においては『戦う』より『逃げる』ことの方が難しいんだけどな」

 ランの微笑みが誠にはまぶしすぎた。

 自分が役に立たないことは誠にも分かっていた。おそらく足手まといになる。でも、この『特殊な部隊』の役に立ちたい気持ちはあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...