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『特殊な部隊』の『特殊』な宴会

第163話 準備万端

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「誠ちゃん、着いたわよ!」 

 アイシャはそう言って笑った。ハンガーの出入り口には宴会場の設営の為に動き回る各部隊員が出入りしている。

「ヒーローが来たぞ!」 

 椅子を並べる指示を出していた司法局実働部隊の制服を着た男性将校の一言に、会場であるハンガーが一斉にわく。

 それに合わせて一升瓶を抱えたランが誠達に歩み寄ってくる。

「いいタイミングだな。酒を選ぶのに悩んだが……『クエ鍋』だかんな。やはりここは日本酒の『辛口』で行こーと思うんだわ。西園寺!ラム一ケースあるがどうする?」 

 いくら『不老不死』とは言え、どう見ても8歳女児が『日本酒の辛口』と言い切る姿に違和感を覚えながら誠はカウラと一緒に宴会場である格納庫の床を進んだ。

「糞餓鬼!アタシのは誰にもやらねえよ!まあ『ペット』に『御褒美』としてならあげても良いかも知れねえがな」 

 かなめはそう言うとランが指さした木箱に向けてそそくさと走り去った。

「来たわね!誠ちゃんはそこに座って!」 

 凛とした調子でアメリアが誠達に声をかける。そこは上座らしくちっちゃなラン用の座椅子が置いてある。誠はそのまま手を差し出すアメリアに導かれてそのテーブルに引かれていく。

「アタシ等はどうするんだよ!」

 木箱から一本のラムの瓶を取り出してきたかなめが口をとがらして抗議した。 

「かなめちゃん達はどこか隅っこにでもゴザを敷いて座れば良いじゃない。『愚民』の気持ちがわかるかもよ」 

「殺すぞテメエ」

 かなめは誠の予想通り銃にてをやる。

「どこが『女王様』なんだ?ただの暴力馬鹿だな」

 何気なくつぶやくカウラの一言に、さすがのかなめも銃から手を離した。
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