特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』 遼州の闇

出会い……それは『あって欲しくない』社会との出会いだった

第32話 新たなる『難敵』

　次の瞬間、誠の左わき腹に乱暴な『蹴り』が入った。

　誠はその痛みに驚いて上半身を持ち上げた。

「神前とか言ったな。俺は島田正人曹長、整備班長だ。司法局実働部隊の『技術』を統括しているのが俺だ。いつまで寝てんだ？ボケ」

　その島田と名乗った先輩は連続して誠のわき腹を蹴り上げる。

「後輩の自覚のねえ奴だな。じゃあ、『10円』やるから『2分』で『かつ丼』作れ。金は後で払う」

　島田は意味不明な音声を口から吐いた。

　誠は島田を見上げる。そこには絵にかいたような『好青年』が立っていた。白いTシャツとベージュのズボンが似合っていた。

　『好青年』は口にタバコをくゆらせて、手に『マックスコーヒー』のロング缶を持っている以外は特におかしなところは無いように見えた。

「アタシは『生ハムの薄切り』。『500円』やるから、ここで作れ。あれは手間がかかるから、それなりに時間をやる。『10分』で作れ」

　かなめまで妙なことを言い始めた。誠は体を起こして両脇に立つ発想が『特殊』な先輩二人を眺めた。

「できませんよ……」

　理屈は通じないとはわかっていたが、薄ら笑いを浮かべながら誠はそう言った。

『やれよ！根性見せろよ！やってみねえで結論出すなよ！あきらめるなよ！』

　両脇から男女のステレオで言葉の使い方を間違えた、理解不能な叫び声が誠の耳を直撃した。

「西園寺さん！俺が先にこいつに『かつ丼作れ』って言ったんですよ！当然、俺の10円も払ってくれるんでしょうね！」

「なんでアタシが島田の10円を払わなきゃならねえんだよ！死ね！バーカ『野生動物』は野生の王国に帰れ！」

　両脇の『特殊』な思考の先輩二人は、金をどちらが払うかで揉めてつかみ合いを始めた。

　誠はこの『特殊』な集団から逃げ出すべく、自分の置かれた状況を把握しようと周りを見回した。

　高校の教室くらいの広さの畳の部屋に誠はいた。

　テーブルが乱雑に置かれ、その上には『ザ・沖縄料理』のようなものが並んでいる。ジョッキが無造作に置かれているのが普通の飲み会のようにも感じられた。

　二人の誠の理解を超えた『特殊』な金銭欲の塊の争いから逃げようと、誠は這いつくばって一つのテーブルにたどり着いた。