115 / 187
出航の時
第115話 少数精鋭の『司法執行機関』
しおりを挟む
食事を終えた誠はランと別れて居住スペースへと向かった。
これまで乗ったどの艦よりもその通路は広く、若干閉所恐怖症気味の誠には少しばかり安心できた。
エレベータを降りた、男子居住スペースの入り口のところで誠はカウラとアメリアに遭遇した。
「カウラさん……とアメリアさん」
「なんでアタシが後なの?アタシはこの艦の艦長!一番偉いの!」
抗議するアメリアを無視してカウラは静かにほほ笑んだ。
「貴様はブリッジでお笑い小唄の練習でもしていろ。私は神前の案内をする」
カウラはそう言いながら通路をまっすぐ歩き続ける。
「カウラちゃんはずいぶんと淡白なのね……誠ちゃんはこれからどうする気?」
アメリアはカウラの言葉にわざとらしく驚いた風を装いながら誠に目を移した。
「自分はとりあえず荷物の整理をします」
「私も手伝うわよ、誠ちゃんの部屋については私も興味あるし」
アメリアの顔にいたずらっ子のような笑みが浮かんだ。誠は断っても無駄だろうことを悟って歩き始めた。汎用戦闘艦は幹部候補研修で何度か乗ったことがあるが、『ふさ』の艦内は明らかにそれまで乗った船とは違っていた。
ランがあれほど得意げだったのもこの艦の居住区画を50メートル歩けば理解できることだった。
第一、通路が非常に広く明るい。対消滅式エンジンの膨大な出力があるからといって、明らかにそれは実用以上の明るさに感じた。
それに食堂の隣が道場、そしてその隣にフリースペースとも言える卓球台と自動麻雀卓を置いた娯楽室のようなものまである。
「やっぱり変でしょ?この船の内装。全部隊長が自腹で改修資金出した施設だから。おかげで定員が1200名から360名に減っちゃったけど」
「それってまずいんじゃないですか?」
技術下士官達が出航までの待ち時間を潰しているのか、ドアを開けたままの部屋が多い下士官用と思われる区画を進む。さすがにここまでくるとどの部屋も狭苦しく感じる。ちらちら覗き込んでいる誠に配慮したように歩みを緩めたアメリアは言葉を続けた。
「うちの持ち味は少数精鋭なのよ。実際、艦内のシステム管理要員は技術部の数名だけで十分だし、こう見えて『特殊部隊』なんで、白兵戦闘時にはそれなりの個人の技量を発揮するから、別にそんなにたくさんの人間は要らないの」
アイシャに続いて誠はエレベーターに乗り込む。
「しかし長期待機任務の時はどうするんですか?」
「部隊編成自体、長期間の戦闘を予測してないのよ。第一、今のところアサルト・モジュール一個小隊しか抱えていない司法局実働部隊に大規模戦闘時に何かできるわけ無いでしょ?それにうちは軍隊じゃなくあくまで司法機関の機動部隊という名目なんだから、そんなことまで考える必要なんてないわね。着いたわよ」
アメリアは開いた扉からパイロット用の個室のある区画に向かって歩き出した。誠は居住区の一番奥の室に通された。個室である、そして広い。正直、彼の下士官用寮の部屋より明らかに広い。そこには誠の着替えなどの荷物を入れたバッグがベッドの上に乗せられていた。
「ずいぶん少ないわね。せっかくいろいろとグッズ見せてもらおうと思ったのに……。これは……ふーん。画材なんだ」
アメリアはそう言うと警備隊員が運んでおいてくれたダンボールを一つを覗き込んだ。誠はベッドの上の着替えなどをバッグから取り出しロッカーに詰め込んだ。それほど物はない。手間がかかるわけでもない。
「ええ、帰りに宇宙でも描こうと思って……」
「宇宙?何にもないだろ?」
カウラのつぶやきに手にスケッチブックを持ってめくっていたアイシャが噴き出す。
「あのねえ、カウラちゃん。宇宙はロマンなのよ。絵師なら描きたくもなるわよねえ」
アイシャの言葉に誠は頭を掻きながらうなづいた。
「そんなもんなのか……」
カウラがどうも納得しきれていない表情を浮かべるのを見ながら誠は着替えなどを片付けることにした。
これまで乗ったどの艦よりもその通路は広く、若干閉所恐怖症気味の誠には少しばかり安心できた。
エレベータを降りた、男子居住スペースの入り口のところで誠はカウラとアメリアに遭遇した。
「カウラさん……とアメリアさん」
「なんでアタシが後なの?アタシはこの艦の艦長!一番偉いの!」
抗議するアメリアを無視してカウラは静かにほほ笑んだ。
「貴様はブリッジでお笑い小唄の練習でもしていろ。私は神前の案内をする」
カウラはそう言いながら通路をまっすぐ歩き続ける。
「カウラちゃんはずいぶんと淡白なのね……誠ちゃんはこれからどうする気?」
アメリアはカウラの言葉にわざとらしく驚いた風を装いながら誠に目を移した。
「自分はとりあえず荷物の整理をします」
「私も手伝うわよ、誠ちゃんの部屋については私も興味あるし」
アメリアの顔にいたずらっ子のような笑みが浮かんだ。誠は断っても無駄だろうことを悟って歩き始めた。汎用戦闘艦は幹部候補研修で何度か乗ったことがあるが、『ふさ』の艦内は明らかにそれまで乗った船とは違っていた。
ランがあれほど得意げだったのもこの艦の居住区画を50メートル歩けば理解できることだった。
第一、通路が非常に広く明るい。対消滅式エンジンの膨大な出力があるからといって、明らかにそれは実用以上の明るさに感じた。
それに食堂の隣が道場、そしてその隣にフリースペースとも言える卓球台と自動麻雀卓を置いた娯楽室のようなものまである。
「やっぱり変でしょ?この船の内装。全部隊長が自腹で改修資金出した施設だから。おかげで定員が1200名から360名に減っちゃったけど」
「それってまずいんじゃないですか?」
技術下士官達が出航までの待ち時間を潰しているのか、ドアを開けたままの部屋が多い下士官用と思われる区画を進む。さすがにここまでくるとどの部屋も狭苦しく感じる。ちらちら覗き込んでいる誠に配慮したように歩みを緩めたアメリアは言葉を続けた。
「うちの持ち味は少数精鋭なのよ。実際、艦内のシステム管理要員は技術部の数名だけで十分だし、こう見えて『特殊部隊』なんで、白兵戦闘時にはそれなりの個人の技量を発揮するから、別にそんなにたくさんの人間は要らないの」
アイシャに続いて誠はエレベーターに乗り込む。
「しかし長期待機任務の時はどうするんですか?」
「部隊編成自体、長期間の戦闘を予測してないのよ。第一、今のところアサルト・モジュール一個小隊しか抱えていない司法局実働部隊に大規模戦闘時に何かできるわけ無いでしょ?それにうちは軍隊じゃなくあくまで司法機関の機動部隊という名目なんだから、そんなことまで考える必要なんてないわね。着いたわよ」
アメリアは開いた扉からパイロット用の個室のある区画に向かって歩き出した。誠は居住区の一番奥の室に通された。個室である、そして広い。正直、彼の下士官用寮の部屋より明らかに広い。そこには誠の着替えなどの荷物を入れたバッグがベッドの上に乗せられていた。
「ずいぶん少ないわね。せっかくいろいろとグッズ見せてもらおうと思ったのに……。これは……ふーん。画材なんだ」
アメリアはそう言うと警備隊員が運んでおいてくれたダンボールを一つを覗き込んだ。誠はベッドの上の着替えなどをバッグから取り出しロッカーに詰め込んだ。それほど物はない。手間がかかるわけでもない。
「ええ、帰りに宇宙でも描こうと思って……」
「宇宙?何にもないだろ?」
カウラのつぶやきに手にスケッチブックを持ってめくっていたアイシャが噴き出す。
「あのねえ、カウラちゃん。宇宙はロマンなのよ。絵師なら描きたくもなるわよねえ」
アイシャの言葉に誠は頭を掻きながらうなづいた。
「そんなもんなのか……」
カウラがどうも納得しきれていない表情を浮かべるのを見ながら誠は着替えなどを片付けることにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる