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『力』を持つ者の定め 『特殊な部隊』の通過儀礼としての『事件』
第71話 切れ者の『得物』
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一方、ランはかわいらしい姿には似合わない冷静沈着な態度でかなめを見上げた。
「あー、隊長ならアイシャと運行部の『女芸人』の連中を連れて、こいつ等のクライアントのところにご挨拶に行ってわ。まあ『正国』抱えて出かけてったからな。もしかしたら今ぐれーの時間には、そいつの首でも挙げてるんじゃねえのか?」
ランは無関心を装うようにかなめにそう言うと階段を昇ってきた東都警察の幹部警察官の挨拶を受けていた。
「『同田貫・正国』か……あんな『美術品』でなにする気だよ……叔父貴。まあ機能としては『人切り包丁』だから、斬るんだろうな、誰かを」
誠はその日本刀『同田貫・正国』の名を知っていた。
誠の実家の道場主である母の前で、嵯峨はその『同田貫・正国』を誠の母、薫に見せていたのを思い出した。
「まあ、『マフィア連中』も多分、馬鹿じゃないだろうな。『正国』を持っている隊長に、『無駄な喧嘩』を売るような酔狂な人間なら組織に抹殺されているはずだ。遼州に来る前にな」
自動小銃のマガジンを抜きながらカウラはそう言った。
『同田貫・正国』の剣先の鋭さを見たとき、誠はまだ小学生にも行っていない子供だった。
社会や歴史に興味はない誠だったが、戦国時代とか言う時代に作られて、加藤清正とか言う武将の愛刀だったと聞くその剣の重たい刀身を見て、それが『人を叩き斬る』ための刀であることはすぐに直感した。
その時の刀を手にした嵯峨の殺気のこもった目を思い出して誠の体が自然とこわばる。
誠はその恐怖から自分の手の中の改造拳銃を見た。そして周りの警察の鑑識職員に囲まれたチンピラの死体を見て思わず意識が薄くなっていく。そして思わず銃を取り落とした。
「神前少尉。そう簡単に銃は落とすな、安物の改造拳銃だからな。暴発の危険がある」
カウラが優しい調子で落ちた拳銃を拾い上げて誠に渡す。
「申し訳ありません」
ようやく体が動くようになった誠は立ち上がった。
「とりあえず下に降りるか」
カウラの言葉にかなめもシャムもランも納得したように狭い雑居ビルの階段を降り始めた。
誠もその後に続いて階段を下りる。
先ほどまで恐怖と混乱で動かなかった体が、思いもかけないほど自由に動くのを感じて誠はほっとした。
「なんだ、泣いたカラスがもう笑ってやがる」
タバコを投げ捨ててもみ消したかなめがそう言って笑った。
「これがはじめての命のやり取りだ。正気でいられるのは私のように『そのために作られた人間』くらいだ」
カウラはそう言うと踊り場に倒れている死体をよけながら一階に向かう階段を降りる。そんなカウラの態度が気に入らないと言うようにかなめは目を反らした。
「お疲れさんだな」
雑居ビルから外の熱気の中に出た五人を巨大なアンチマテリアルライフル、ゲパードM3を背負った吉田が迎えた。誠はようやく自分が生きていることを実感して大きく深呼吸をした。
「助かったんですね……」
誠は大きなため息をつくと自分に言い聞かせるように改めてそう言った。
「そうだな。礼が欲しいな」
かなめは再びタバコを取り出しながらそのタレ目で誠をにらんだ。
「何が……」
「オメエにゃ期待してねえよ。まあ、得意の『ゲロ』を吐かなかったのは褒めてやるがな。さすがアタシの『愛玩動物』」
皮肉を込めたかなめの言葉に誠はただ黙り込むばかりだった。
立ち込める『死』のもたらす臭いに誠は恐怖から『吐く』ことすらできなかった。
「あー、隊長ならアイシャと運行部の『女芸人』の連中を連れて、こいつ等のクライアントのところにご挨拶に行ってわ。まあ『正国』抱えて出かけてったからな。もしかしたら今ぐれーの時間には、そいつの首でも挙げてるんじゃねえのか?」
ランは無関心を装うようにかなめにそう言うと階段を昇ってきた東都警察の幹部警察官の挨拶を受けていた。
「『同田貫・正国』か……あんな『美術品』でなにする気だよ……叔父貴。まあ機能としては『人切り包丁』だから、斬るんだろうな、誰かを」
誠はその日本刀『同田貫・正国』の名を知っていた。
誠の実家の道場主である母の前で、嵯峨はその『同田貫・正国』を誠の母、薫に見せていたのを思い出した。
「まあ、『マフィア連中』も多分、馬鹿じゃないだろうな。『正国』を持っている隊長に、『無駄な喧嘩』を売るような酔狂な人間なら組織に抹殺されているはずだ。遼州に来る前にな」
自動小銃のマガジンを抜きながらカウラはそう言った。
『同田貫・正国』の剣先の鋭さを見たとき、誠はまだ小学生にも行っていない子供だった。
社会や歴史に興味はない誠だったが、戦国時代とか言う時代に作られて、加藤清正とか言う武将の愛刀だったと聞くその剣の重たい刀身を見て、それが『人を叩き斬る』ための刀であることはすぐに直感した。
その時の刀を手にした嵯峨の殺気のこもった目を思い出して誠の体が自然とこわばる。
誠はその恐怖から自分の手の中の改造拳銃を見た。そして周りの警察の鑑識職員に囲まれたチンピラの死体を見て思わず意識が薄くなっていく。そして思わず銃を取り落とした。
「神前少尉。そう簡単に銃は落とすな、安物の改造拳銃だからな。暴発の危険がある」
カウラが優しい調子で落ちた拳銃を拾い上げて誠に渡す。
「申し訳ありません」
ようやく体が動くようになった誠は立ち上がった。
「とりあえず下に降りるか」
カウラの言葉にかなめもシャムもランも納得したように狭い雑居ビルの階段を降り始めた。
誠もその後に続いて階段を下りる。
先ほどまで恐怖と混乱で動かなかった体が、思いもかけないほど自由に動くのを感じて誠はほっとした。
「なんだ、泣いたカラスがもう笑ってやがる」
タバコを投げ捨ててもみ消したかなめがそう言って笑った。
「これがはじめての命のやり取りだ。正気でいられるのは私のように『そのために作られた人間』くらいだ」
カウラはそう言うと踊り場に倒れている死体をよけながら一階に向かう階段を降りる。そんなカウラの態度が気に入らないと言うようにかなめは目を反らした。
「お疲れさんだな」
雑居ビルから外の熱気の中に出た五人を巨大なアンチマテリアルライフル、ゲパードM3を背負った吉田が迎えた。誠はようやく自分が生きていることを実感して大きく深呼吸をした。
「助かったんですね……」
誠は大きなため息をつくと自分に言い聞かせるように改めてそう言った。
「そうだな。礼が欲しいな」
かなめは再びタバコを取り出しながらそのタレ目で誠をにらんだ。
「何が……」
「オメエにゃ期待してねえよ。まあ、得意の『ゲロ』を吐かなかったのは褒めてやるがな。さすがアタシの『愛玩動物』」
皮肉を込めたかなめの言葉に誠はただ黙り込むばかりだった。
立ち込める『死』のもたらす臭いに誠は恐怖から『吐く』ことすらできなかった。
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