特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』 遼州の闇

橋本 直

文字の大きさ
102 / 187
『タフネス』と『銃』

第102話 オチとしての『馬賊の銃』

しおりを挟む
「それでは私の銃を……」

 カウラの言葉が聞こえて誠が振り返ると、カウラの左脇腹に大きな木製の物体がぶら下がっているのが見えた。

「あのー……カウラさん。それ……なんですか?」

 誠は少し呆れながらそうつぶやいた。明らかにそれは拳銃と呼ぶには大きすぎる代物だった。

「これはショルダーストックだ」

 カウラはそう言って木製のホルスターらしいものから銃を引き抜いた。

 その独特の長いバレルとバレルの下に伸びたマガジンは誠にも見たことのある銃の姿をしていた。

「それ『モーゼル』ですね!僕も知ってます!」

 初めて見たことがある拳銃を見て誠はそれなりに興奮した。

「いや、違うな……これはあの『モーゼルC96』では無い」

 カウラは得意げにそう言うとその大型拳銃を誠にかざして見せる。

「じゃあなんなんですか?」

 少し嫌な予感がして誠はしぶしぶそう尋ねた。

「これは『アストラM903』!あの『どんな拳銃でもフルオートにしてしまう国』スペインの生んだマシンピストルだ!」

 誇らしげにカウラはそう言うと銃をわざと横向きに構えて射場に立った。

 すさまじい連射速度でカウラは射撃を行った。圧倒的な弾幕に誠は驚かされつつかなめの方に目をやった。

 明らかにかなめは死んだ目をしてその様子を眺めていた。

「『馬賊撃ち』ねえ……こんなもん役に立つかよ」

 再びかなめは辛口な批評をかました。

「西園寺は馬鹿だからな。これで時間を稼いだ後……」

 カウラはショルダーストックを肩から外してそのままM903のグリップに固定する。そしてマガジンを入れ替えて再び銃を構えた。

 一発一発狙いすましたようにはるか遠くの的に、的確に当てていくカウラを見て誠は手を叩いて称賛した。

「圧倒的な近接戦闘能力。そしてこのストックを利用しての精密射撃……まさに『馬賊』の銃!」

「アタシ等はいつ『馬賊』に転職したんだ?ここはいつ満州になったんだ?」

 乗りに乗るカウラにかなめは淡々とそう言って立ち尽くした。

「誠ちゃん……」

 二人のやり取りに呆れていた誠の肩をアメリアがそっと叩いた。

「カウラちゃんは私達『ラスト・バタリオン』の中でも後期生産型だから……銃を持つとテンションが変わるのよ」

 アメリアのフォローに誠は静かにうなづきながら、むしろランのところでランニングを続けていた方がよかったんじゃないかと後悔を始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

処理中です...