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『タフネス』と『銃』

第102話 オチとしての『馬賊の銃』

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「それでは私の銃を……」

 カウラの言葉が聞こえて誠が振り返ると、カウラの左脇腹に大きな木製の物体がぶら下がっているのが見えた。

「あのー……カウラさん。それ……なんですか?」

 誠は少し呆れながらそうつぶやいた。明らかにそれは拳銃と呼ぶには大きすぎる代物だった。

「これはショルダーストックだ」

 カウラはそう言って木製のホルスターらしいものから銃を引き抜いた。

 その独特の長いバレルとバレルの下に伸びたマガジンは誠にも見たことのある銃の姿をしていた。

「それ『モーゼル』ですね!僕も知ってます!」

 初めて見たことがある拳銃を見て誠はそれなりに興奮した。

「いや、違うな……これはあの『モーゼルC96』では無い」

 カウラは得意げにそう言うとその大型拳銃を誠にかざして見せる。

「じゃあなんなんですか?」

 少し嫌な予感がして誠はしぶしぶそう尋ねた。

「これは『アストラM903』!あの『どんな拳銃でもフルオートにしてしまう国』スペインの生んだマシンピストルだ!」

 誇らしげにカウラはそう言うと銃をわざと横向きに構えて射場に立った。

 すさまじい連射速度でカウラは射撃を行った。圧倒的な弾幕に誠は驚かされつつかなめの方に目をやった。

 明らかにかなめは死んだ目をしてその様子を眺めていた。

「『馬賊撃ち』ねえ……こんなもん役に立つかよ」

 再びかなめは辛口な批評をかました。

「西園寺は馬鹿だからな。これで時間を稼いだ後……」

 カウラはショルダーストックを肩から外してそのままM903のグリップに固定する。そしてマガジンを入れ替えて再び銃を構えた。

 一発一発狙いすましたようにはるか遠くの的に、的確に当てていくカウラを見て誠は手を叩いて称賛した。

「圧倒的な近接戦闘能力。そしてこのストックを利用しての精密射撃……まさに『馬賊』の銃!」

「アタシ等はいつ『馬賊』に転職したんだ?ここはいつ満州になったんだ?」

 乗りに乗るカウラにかなめは淡々とそう言って立ち尽くした。

「誠ちゃん……」

 二人のやり取りに呆れていた誠の肩をアメリアがそっと叩いた。

「カウラちゃんは私達『ラスト・バタリオン』の中でも後期生産型だから……銃を持つとテンションが変わるのよ」

 アメリアのフォローに誠は静かにうなづきながら、むしろランのところでランニングを続けていた方がよかったんじゃないかと後悔を始めていた。
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