特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』② 海と革命家、時々娘

橋本 直

文字の大きさ
46 / 111
朝の出来事

第46話 犬も食わない喧嘩

しおりを挟む
「しかし暑いですよねえ……」 

「他に言うことねえのかよ?それより気をつけろよ」 

 少しうつむき加減にかなめがサングラスをはずす。真剣なときの彼女らしい鉛のような瞳がそこにあった。

「今日のアンとか言う少年兵だ。ベルルカンの少年兵上りとなると結構扱いが微妙だぞ」 

 誠は残ったビールを一気に流し込むようにして飲むと、缶をゴミ箱に捨てた。

「でも……おとなしそうないい子じゃないですか」 

「見た目はそうだな。でも民兵に軍の規律は通用しねえ……自分が生き残るためには何をするかわからねえ連中だ……『仲間』だと思ってると痛い目見るぞ」 

 それだけ言うと、かなめは再びサングラスをかけた。

「まあそれぐらいにして……今日は仕事の話は止めようや。とっとと付いて来いよ!」 

 そう言うと軽々と二箱のビールを抱えて、早足でかなめは歩き始めた。

「んだ。暑いなあ。やっぱ島田辺りに押しつけりゃ良かったかな」 

 焼けたアスファルトを歩きながらかなめは独り言を繰り返す。海からの風もさすがに慣れてしまえばコンビニの空調の効いた世界とは別のものだった。代謝機能が人間のそれとあまり差の無い型の義体を使用しているかなめも暑さに参っているように見えた。

「やっぱり僕が持ちましょうか?」 

 気を利かせた誠だがかなめは首を横に振る。

「言い出したのはアタシだ、もうすぐだから持ってくよ」 

 重さよりも汗を拭えないことが誠にとっては苦痛だった。容赦なく額を流れる汗は目に入り込み、視界をぼやけさせる。

「ちょっと休憩」 

 かなめがそう言って抱えていたビールの箱を置いた。付き従うようにその横に箱を置いた誠はズボンからハンカチを取り出して汗を拭うが、あっという間にハンカチは絞れるほどに汗を吸い取った。

「遅いよ!二人とも!」

 休んでいたところに現れたのはピンク色のワンピースの水着姿のサラと意外に際どい紫色のビキニを着たパーラだった。

「迎えに来たんだ……ちょうどいいや。おいサラとパーラ。それ持っていけ。アタシも着替えるわ」 

 そう言うとかなめはそのまま三人を置いて歩き出す。ビールの缶が入ったダンボールが三箱。それを見つめた後去っていくかなめにサラは目を向ける。

「そんなの聞いてないわよ!」 

 パーラは絶望したように叫ぶが、かなめは軽く手を振って振り向くことも無く歩いていく。

「僕が二つ持ちますから、あと一箱は……」 

「いいのよ神前君。あなたも着替えてらっしゃいよ」 

 パーラのその言葉に誠は荷物のある先ほどの恥ずかしい横断幕のあるところに向かって歩き出した。

 誠が堤防の階段を登るとそこでは、島田と菰田が怒鳴りあっている光景が目に飛び込んできた。

「うるせえ!魔法使い!そんなだから彼女も出来ねえんだよ!」 

 島田が菰田にタンカを吐き捨てた。

「馬鹿野郎!俺はまだ30超えてねえんだ!」 

「あと4年だろ?」 

 島田が優勢に口げんかを続ける。二人が犬猿の仲だと分かっている部隊員達は静かに動静を見守っている。

「誠君。はい、このバッグでしょ?」 

 笑いながら小夏の母、家村春子が誠にバッグを手渡した。

「大丈夫ですか?あの二人」 

 誠はやんやと煽り立てる隊員達を見守っているただ一人冷静そうな春子に尋ねた。

「大丈夫よ。二人とも手を出したらカウラさんにしめられるの分かってるから。どうせ口だけよ」 

 春子は落ち着いていた。その落ち着きぶりに感心しながら誠はバッグを抱えて近くにあった海の家へと歩き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

暗算参謀は王国を追放される――戦わずして勝ち続けた男の失脚譚――

まさき
ファンタジー
現代日本から異世界へ転生した主人公。 彼に与えられた唯一の能力は、瞬時にあらゆる数値を弾き出す「暗算」だった。 剣も魔法も使えない。 だが確率と戦略を読み解くことで、王国の戦を幾度も勝利へ導いていく。 やがて王国の戦略顧問として絶大な信頼を得るが、 完璧すぎる功績は貴族の嫉妬を招き、巧妙な罠により不正の罪を着せられてしまう。 証明できぬ潔白。 国の安定を優先した王の裁定。 そして彼は、王国を追放される。 それでも彼は怒らない。 数字は嘘をつかないと知っているからだ。 戦わずして勝ち続けた参謀が、国を去るその日までを描く、 知略と静かな誇りの異世界戦略譚。

無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜

黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。 ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。 彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。 賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。 地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す! 森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。 美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。 さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる! 剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。 窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!

追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される

希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。 ​すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。 ​その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

腹黒薬師は復讐するために生きている

怜來
ファンタジー
シャルバリー王国に一人の少女がいた。 カナリヤ・ハルデリス カナリヤは小さい頃から頭が冴えていた。好奇心旺盛でよく森に行き変な植物などを混ぜたりするのが好きだった。 そんなある日シャルバリー王国に謎の病が発生した。誰一人その病を治すことができなかった中カナリヤがなんと病を治した。 国王に気に入れられたカナリヤであったが異世界からやってきた女の子マリヤは魔法が使えどんな病気でも一瞬で治してしまった。 それからカナリヤはある事により国外追放されることに… しかしカナリヤは計算済み。カナリヤがしようとしていることは何なのか… 壮絶な過去から始まったカナリヤの復讐劇 平和な国にも裏があることを皆知らない ☆誤字脱字多いです ☆内容はガバガバです ☆日本語がおかしくなっているところがあるかもしれません

【完結】孤独を抱いた英雄と、孤独に生まれた魔法使い〜元Sランクと訳あり美少年の共同生活〜

藤原遊
ファンタジー
かつて“英雄”と呼ばれた女冒険者と、魔族の血を引く訳あり美少年の共同生活。 静かな町外れで暮らす元Sランク剣士シズナ。 魔力が使えず、かつては戦場を駆け抜けた彼女は、今は人目を避けて暮らしている。 ある日、彼女は“人間ではない少年”を拾う。 魔王軍の血を引き、人間にも魔族にも馴染めなかった少年・リュカ。 異質な力に怯えながら、それでも彼は人の中で生きたかった。 「あなたの隣にいたい。守れるくらい、強くなって」 少年は英雄に恋をした。 孤独を知る二人が、“居場所”と“誰かの隣”を探す、あたたかくて少し切ない成長譚。

処理中です...