47 / 111
朝の出来事
第47話 砂に埋もれた野郎共
しおりを挟む
「西園寺さん!こんな波打ち際、やめてくださいよ!」
「島田じゃないんだから俺死にますって!」
着替えて来た誠がパラソルの下で海を見ているかなめ達のところで目にしたのは、首から下を砂に埋められてわめいている島田と菰田の姿だった。
「西園寺さんあれはちょっと……」
誠は頭を掻きながら首を振って助けを求めている二人を指差す。
「なにか?神前。お前が代わるか?」
そう言うとにやりと笑ってかなめはサングラスを下ろす。誠は照れ笑いを浮かべながら視線を波打ち際に転じる。自分でも地味とわかるトランクスの水着をかなめが一瞥して舌打ちをするのが非常にシュールだった。
「そういえば他の面子は……」
「カウラが先頭になって……ほら、沖のここからも見えるブイがあるだろ?」
かなめが沖合いを指差す。誠は目を凝らした。
「もしかしてあそこまで泳いでるんですか?」
確かに視線の先に赤いブイが浮いている。三百メートルは離れていることだろう。
「でもよくアメリアさんが付き合いましたね。あのズルしかしない人が」
そんな誠の言葉にかなへは静かに首を横に振る。
「ああ、アメリアなら女将と一緒に昼飯の準備してるよ」
「なるほど」
いかにも要領のいいアメリアらしいと相打ちを打つ誠はぼんやり波打ち際で助けを求める島田達を見ていた。
「神前!マジで頼むわ!便所掃除代わってやるから!」
「じゃあこっちは料理当番で!」
寮長と副寮長の特権事項をフルに発揮して二人が助けを求める。
「西園寺さん、いくらなんでも……」
確かにかなめを怒らせるとどうなるかと言う見本には違いなかったが、菰田の変わっていく顔を見ていると誠も二人を解放するようにと頼みたい気持ちになってきた。
「そうだな。ここでいつまでも見られてちゃたまらねえや。誠、そこにスコップあるから掘り出してやれ」
そこにはどう考えてもこのことをする予定で持ってきたとしか思えない大きなスコップが立てかけてある。誠はとりあえず具合の悪そうな菰田から掘り出しにかかる。
「ああ……助かった」
波打ち際で時にしぶきを浴びながら菰田がつぶやいた。
「苦しくないですか?」
かなり徹底して踏み固められている砂の様子を見て誠が話しかけた。
「西園寺さん手加減しないからねえ……」
砂で押しつぶされていた血管が生気を取り戻していく。そして膝まで掘り進んだところで菰田はふらふらと砂の中から立ち上がった。
「菰田。強がっても何にもならねえぞ」
サングラスをかけて日向で横になっているかなめがつぶやく。
「早くこっちも頼む!水が!水が!」
波の飛沫を浴びながら島田が叫んでいる。仕方なく誠は小夏が寄りかかっていたスコップを手に取る。
「じゃあ行きますよ」
誠はそう言うと島田を掘り出し始めた。明らかに菰田よりは元気だが圧迫されて血流が悪いようで顔色が悪い。それでも頬を膨らませて島田はかなめをにらみつけている。
「どうだ?気分は」
にやけた笑いを浮かべてかなめはその様子を眺める。
「苦しい……死ぬ……」
「不死身が売りの整備班長殿が死ぬって?殺しても死にそうにねえのになあ……おかしいなあ……」
明らかに顔色が変わりかけてまた砂の上に座り込んでしまった菰田に比べれば島田はかなり元気に見えた。
「神前!早く掘れ!本当に死ぬぞ、そいつ」
そう言いながら菰田は座ったまま応援するだけだった。ぎらぎらと夏の日差しが日差しが照りつけている。海に来て最初にしたことが穴掘りとは……そう思いながらも誠は掘り続ける。
「大丈夫!あとは……」
膝の辺りまで掘り進んだところで島田が砂から飛び出す。そして手にした砂の玉をかなめに投げつけた。
「何しやがる!」
そう言ってかなめが飛び起きる。それを見ると島田は浮き輪をつかんで海のほうに駆け出した。
「あの馬鹿、いつかシメる」
そう吐き捨てるように言うと、かなめは再び砂浜に横になった。
「島田じゃないんだから俺死にますって!」
着替えて来た誠がパラソルの下で海を見ているかなめ達のところで目にしたのは、首から下を砂に埋められてわめいている島田と菰田の姿だった。
「西園寺さんあれはちょっと……」
誠は頭を掻きながら首を振って助けを求めている二人を指差す。
「なにか?神前。お前が代わるか?」
そう言うとにやりと笑ってかなめはサングラスを下ろす。誠は照れ笑いを浮かべながら視線を波打ち際に転じる。自分でも地味とわかるトランクスの水着をかなめが一瞥して舌打ちをするのが非常にシュールだった。
「そういえば他の面子は……」
「カウラが先頭になって……ほら、沖のここからも見えるブイがあるだろ?」
かなめが沖合いを指差す。誠は目を凝らした。
「もしかしてあそこまで泳いでるんですか?」
確かに視線の先に赤いブイが浮いている。三百メートルは離れていることだろう。
「でもよくアメリアさんが付き合いましたね。あのズルしかしない人が」
そんな誠の言葉にかなへは静かに首を横に振る。
「ああ、アメリアなら女将と一緒に昼飯の準備してるよ」
「なるほど」
いかにも要領のいいアメリアらしいと相打ちを打つ誠はぼんやり波打ち際で助けを求める島田達を見ていた。
「神前!マジで頼むわ!便所掃除代わってやるから!」
「じゃあこっちは料理当番で!」
寮長と副寮長の特権事項をフルに発揮して二人が助けを求める。
「西園寺さん、いくらなんでも……」
確かにかなめを怒らせるとどうなるかと言う見本には違いなかったが、菰田の変わっていく顔を見ていると誠も二人を解放するようにと頼みたい気持ちになってきた。
「そうだな。ここでいつまでも見られてちゃたまらねえや。誠、そこにスコップあるから掘り出してやれ」
そこにはどう考えてもこのことをする予定で持ってきたとしか思えない大きなスコップが立てかけてある。誠はとりあえず具合の悪そうな菰田から掘り出しにかかる。
「ああ……助かった」
波打ち際で時にしぶきを浴びながら菰田がつぶやいた。
「苦しくないですか?」
かなり徹底して踏み固められている砂の様子を見て誠が話しかけた。
「西園寺さん手加減しないからねえ……」
砂で押しつぶされていた血管が生気を取り戻していく。そして膝まで掘り進んだところで菰田はふらふらと砂の中から立ち上がった。
「菰田。強がっても何にもならねえぞ」
サングラスをかけて日向で横になっているかなめがつぶやく。
「早くこっちも頼む!水が!水が!」
波の飛沫を浴びながら島田が叫んでいる。仕方なく誠は小夏が寄りかかっていたスコップを手に取る。
「じゃあ行きますよ」
誠はそう言うと島田を掘り出し始めた。明らかに菰田よりは元気だが圧迫されて血流が悪いようで顔色が悪い。それでも頬を膨らませて島田はかなめをにらみつけている。
「どうだ?気分は」
にやけた笑いを浮かべてかなめはその様子を眺める。
「苦しい……死ぬ……」
「不死身が売りの整備班長殿が死ぬって?殺しても死にそうにねえのになあ……おかしいなあ……」
明らかに顔色が変わりかけてまた砂の上に座り込んでしまった菰田に比べれば島田はかなり元気に見えた。
「神前!早く掘れ!本当に死ぬぞ、そいつ」
そう言いながら菰田は座ったまま応援するだけだった。ぎらぎらと夏の日差しが日差しが照りつけている。海に来て最初にしたことが穴掘りとは……そう思いながらも誠は掘り続ける。
「大丈夫!あとは……」
膝の辺りまで掘り進んだところで島田が砂から飛び出す。そして手にした砂の玉をかなめに投げつけた。
「何しやがる!」
そう言ってかなめが飛び起きる。それを見ると島田は浮き輪をつかんで海のほうに駆け出した。
「あの馬鹿、いつかシメる」
そう吐き捨てるように言うと、かなめは再び砂浜に横になった。
0
あなたにおすすめの小説
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
男装の薬師は枯れぬ花のつぼみを宿す
天岸 あおい
ファンタジー
久遠の花と呼ばれる優秀な薬師の一族。
そんな彼らを守り続けていた、守り葉と呼ばれし者たち。
守り葉として育てられた子供・みなもだったが、ある日隠れ里を襲われ、生き別れた姉・いずみや仲間たちとの再会を夢見て薬師として生きながら、行方を捜していた。
そんなみなもの元へ現れた、瀕死の重傷を負った青年レオニード。
彼との出会いがみなもの運命の歯車を動かしていく―――。
男装の麗人で、芯が強くて自分の手を汚すことを厭わない主人公と、そんな一筋縄ではいかない主人公を一途に想う、寡黙で真面目な青年の物語。
R18ではありませんが、後半は大人向けの展開になっています。
※他サイトで公開していたものを改題・改稿しております。
※今作は非BLです。期間限定で掲載致します。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる