特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』② 海と革命家、時々娘

橋本 直

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午後の奇襲

第59話 遼州解放の果て

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「逃げましょう!西園寺さん」 

 銃を手にかなめは周りを警戒する。戦場と似た緊張した空気がそうさせるのか、かなめの顔には引きつったような笑顔があった。

「馬鹿言うな!逃げられる相手なら最初から逃げてる!」

「騒動にならぬように人気のないところで仕掛けたのが運の尽きですね」

 男の声がまるでテレパシーのように二人の頭の中で響く。

「銃声で誰かが来れば……」 

 かなめは自分の後ろに銀色の空間が生成されようとしたことに気づいて発砲する、スライドがロックされ弾切れを示す。

「弾が無いのですか」 

 また再び地上に銀色の空間が現れ、その中から赤いアロハシャツの男が現れる。

「これでわかったでしょう」 

 男の顔に勝利を確信した笑みが浮かんだ。

「この糞野郎!きっちり勝負しろ!」 

「甲武四大公爵家筆頭の殿下がそんな口をきいてはいけませんねえ」 

 男は今度は確実に一歩一歩、二人に近づいてきた。

「あなたは何者ですか」 

 ようやく誠が搾り出せた言葉は、自分でも遅きに失している言葉だった。

「なるほど、こういう時はこちらから名乗るのが筋ですね。もっとも私個人の名前などあなた達の関心ではないでしょうが。私は遼州人の権利と自由を守るために活動している団体の構成員の一人です。屈辱の四百年の歴史にピリオドを打つべく立ち上がりました」 

「アタシ等も遼州人なんだけどねえ」 

 もはや言葉で時間を稼ぐしかない、そう判断したかなめが皮肉めいた笑みを浮かべながらアロハシャツの男に声をかけた。

「確かにあなたの母上、西園寺康子様は本来、遼朝王弟家の出。かなめ様、あなたにも我々と志を同じくする資格があると言うことですが……いかがいたしましょうか?」 

 男はまた一歩踏み込んできた。

「くだらねえなあ!アタシは貴族とかつまんねえ肩書きが嫌で陸軍に入ったんだ」 

「ほう、それもまたよし。私達は王党派とも組しません。ただ遼州人全体の幸福を……」 

「それで何が起きるんですか?」 

 誠は男の言葉をさえぎった。ゆっくりとうろたえることも無く、誠は男に近づいていった。

「今の遼州には多くの人が生きています。地球人、遼州人、そして先の大戦で作られた人工人間。でもあなたは遼州人のための世界を作ると言いましたね」 

 思いもかけずに誠が自分に近づいてくる。驚いたような表情を浮かべていた男もそれが誠の本心だとわかってゆっくりとわかりやすいようにと心がけるように話を続けた。

「仕方ないでしょう。我々は力を持っている。そして他の人々は持っていない。力のあるものが生き延びるのは宇宙の摂理で……」 

 再び遼州人の力を誇示するような言葉を口にした男に顔を上げて強くにらみつけた。男は誠の表情の変化に少しばかり動揺したように見えたがすぐさまポーカーフェイスに戻った。
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