特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』② 海と革命家、時々娘

橋本 直

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力尽きて

第66話 誠の『弱さ』

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「さあ、神前曹長が大変ですよ!」 

 にこやかにそう言うと肩を貸していた島田は眼力で西を前の座席に移動させて誠を一番後ろの座席に連れて行く。

「大丈夫?誠ちゃん」 

 アメリアはそう言って誠の手を取る。横たわった誠が薄目を開けると夕日の赤に染められて紫色に輝くアメリアの長い髪が見えた。

「平気だろ?前だって力を使ったときそのまま気絶したこともあったじゃねえか。たぶん同じ理屈なんじゃないか?まあ叔父貴に後で報告する必要は有るかも知れねえがな」 

 淡々とそう言うとかなめは菰田達をにらみつける。さすがに命が惜しいので菰田も席を立ち空いている前の席に移る。島田から誠を支えるのを引き継いだかなめがゆっくりと青ざめた表情の誠を寝かせて彼の前の席に陣取った。

「法術発動の効率が悪いかも知れませんわね。わかりました。しばらくは私が訓練の相手をさせていただくわ」 

 いつの間にかかなめの隣にちょこんと座っていた茜にかなめとカウラは驚いた。

「嵯峨茜。貴様が訓練をするというのか?」 

 カウラの言葉に棘がある。誠は倒れたままそんなカウラと茜を見上げていた。

「仕方がないことではありませんの?現在法術特捜の構成員は三人ですわ。とてもこれから多発するであろう事件に対応するには手が足りない状況ですもの。誠さんのお力も借りなければなりませんから。当然お父様もそのおつもりですわよ」

 明らかに誠の占有を宣言した茜の態度に不愉快そうにかなめは再びウォッカをあおる。 

「オメエ、基地に常駐でもするつもりか?」

 あざ笑うつもりで言ったかなめの言葉に無言で茜がうなづく。そして彼女が冗談を言うような人間ではないことを知っているかなめはただ呆れたように口に咥えていた酒瓶を座席横に置いた。 

「仕方ないですわね。上層部は現在法術特捜に必要な人材を集めている最中。しばらくは比較的暇なお父様の部隊の応援で仕事をすることになりそうですわね。それにしても……ガサツな誰かさんと年中顔を合わせることを想像するとうんざりしますわね」 

 再び皮肉を炸裂させて切れ長の目で茜はかなめを見つめる。その余裕のある態度がさらにかなめをヒートアップさせた。

「何だと!コラ!」 

 思わず立ち上がったかなめは隣のカウラと誠に付き添っているアメリアに取り押さえられる。

「静かにしないとだめよ!病人がいるんですから!」 

 再び前の席からアメリアの叫び声が聞こえる。その言葉に間違いが無いので仕方ないと言うようにかなめはうなだれる。一方一人余裕で茜は手にした剣を握りなおしている。

「それにあなた達では神前君の本来の能力を開発することは出来ませんわ。その資格があるのはお父様か私だけ」 

 かなめはその言葉を聞くとうつむいてしまった。誠は二人のやり取りを黙って横になったまま見上げていた。そしてどちらかと言うと冷徹にも見える茜の言葉に一言言いたいと思いながらも自由に任せない自分の体を呪っていた。

「出ますよ!座ってくださいね!」 

 島田の声が響く。バスはゆっくりと動き出した。

「茜さん」 

 誠はようやく言葉を搾り出せる程度に回復していた。

「何かしら?」 

「これからもこんなことが続くんですか?」 

 誠のその言葉に一同は静まり返った。誠の法術の力を狙っての襲撃事件。二月で二回というのは明らかに多い頻度なのは全員が知っている。

「そうなるわね。私がお父様からいただいたシミュレータと実機の起動時に発生させた法力の展開に関するデータを見させていただいた限りでは、誠さんの潜在能力の高さは驚異的と言っても過言ではないレベルですわ。それこそ数千万人に一人いるかどうか」 

「僕が、ですか」 

 誠はその言葉にうなだれた。一月前にはただの射撃が下手な幹部候補生に過ぎなかった自分がそんな重要な存在になっていた事実に打ちのめされた。

「そして、その精神的弱さも矯正する必要がありますわね」 

 大きすぎる自分の力。それに振り回されているようで何も出来ない自分。無力感にさいなまれて目をつぶった。

「とりあえず寝ます。着いたら起こしてください」 

 そう言うと誠は目をつぶった。

 誠は目をつぶる。彼を囲むかなめ、茜、アメリアが小声で話し合っているのが聞こえてくる。かなめが声を荒げようとするたびに、アメリアがそれを制している。振動が適度な子守唄となり、交代でカラオケを歌い続けているサラとパーラの歌声が次第に誠の意識を奪っていった。
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