特殊装甲隊 ダグフェロン『廃帝と永遠の世紀末』② 海と革命家、時々娘

橋本 直

文字の大きさ
111 / 111
新しい日常

第111話 歓迎の儀式

しおりを挟む
「それじゃあ……」 

 とんざしそうになる会議の雰囲気を変えようと茜が口を開いた時、不意に会議室の扉が開いた。

「まだ終わんないの?」 

 扉が開き顔を出したのは嵯峨だった。

「お父様、今は会議中ですよ!」 

「そうカリカリしなさんな。それにこいつ等だって馬鹿じゃないんだ。俺達が『廃帝』についてはつかんでいる情報がほとんど無いことぐらい察しはついてるよ。そんなのに会議したって時間の無駄じゃん」

 実も蓋も無いことを言われて娘の茜は口ごもるしかなかった。

「まあ、会議なんて言うものは寝るものだからな。情報がわかり次第、それぞれに交換すれば事が足りるだろ?」 

「まあ、お父様の場合はその通りなんですけど……」 

 それだけ言って茜は黙り込んだ。

「じゃあ解散か?」 

「そうは言っていません!」

 席を立とうとするかなめを茜がぴしゃりと制する。 

「でも、もう島田達はコンロがいい具合になってきたって言ってるぜ。まあ、堅苦しいことは後にしようや」 

「そう言う風に問題を先延ばしにするのはお父様の悪い癖ですよ!だから『駄目人間』と言われるんです!」 

 刺すような視線を嵯峨に送った後、あきらめたように茜は端末を閉じた。解放されたというようにかなめは伸びをして、退屈な時間が終わったことを告げる。

「バーベキューっすか。いいっすよね」 

 ラーナはそう言うとそのまま会議室から出て行く。かなめ、アメリア、カウラもまたその後に続く。

「神前!早く来いよ!」 

 かなめが廊下で叫ぶ。誠は座ったまま片付けをしている茜を見ていた。

「よろしくてよ、別に私を待たなくても」 

 不承不承言葉をひねり出した茜のやるせない表情を見ながら、誠はかなめ達を追った。

「良いんですか?こんなので」 

 誠はかなめに駆け寄ってみたものの、どうにも我慢しきれずにそう尋ねた。

「良いの良いの!叔父貴が責任取るって言うんだから」 

「俺のせいかよ」 

 そう言うと情けない顔をして嵯峨はタバコを口にくわえる。

「まあこれが我々の流儀だ。そのくらい慣れてもらわなくては困る」 

 いつものように表情も変えずにカウラはハンガーへ続く階段を降り始めた。ハンガーでは整備班員がバーベキューの下ごしらえに余念が無い。

「ちょっと!ちゃんと肉は平等に分けろよ!そこ、もたもたしてないで野菜を運べ!」 

 島田は自分の兵隊達を大声で叱り飛ばす。

「よう、歓迎される気分はどうだい」 

 嵯峨が走り回るブリッジクルーや整備員、そして警備部隊の面々をぼんやりと眺めている茜に声をかける。

「まあ……悪い気分はしないですけど」 

 口元は笑っているが目が呆れていた。隣に立つラーナもただ何も出来ずに立ち尽くしている。

「それじゃあわたくしも手伝いますわね」 

 そう言いながら茜は野菜を切り分けている管理部の面々に合流する。

「私、何か出来ませんか?」 

 ついさっきまで会議を遂行するように叫びかねない茜だったが手のひらを返したように歓迎会の準備に入ろうとしている。

「良いんだよ。茜。お前も歓迎される側なんだから黙って見てれば。さてと」 

 嵯峨はタバコに火をつけて座り込んだ。

「神前!手を貸せ」 

 いつの間にか復活していた島田が、クーラーボックスに入れる氷を砕いている。

「わかりました!」 

「アタシも行くぞ」 

「私も!」 

 かなめとアメリアが誠と一緒に駆け出す。遅れてカウラも後に続いた。

「いいねえ、若いってのは」 

 そう言いながら嵯峨はタバコの煙を吐いた。秋の風も吹き始めた八月の終わりの風は彼等をやさしく包んでいた。誠は空を見上げながらこれから始まる乱痴気騒ぎを想像して背筋に寒いものが走った。

 
                                           了
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

​弱小スキル【翻訳】が実は神スキルでした。追放されたが最強王国作ります

綾取
ファンタジー
万物の声を聴くスキル【翻訳】が実は【世界干渉】の神スキルでした~追放された俺が辺境を浄化して聖域を作ったら、加護を失った帝国が滅びかけてますがもう遅い。喋る野菜や聖獣たちと最強の王国を築きます

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

男装の薬師は枯れぬ花のつぼみを宿す

天岸 あおい
ファンタジー
久遠の花と呼ばれる優秀な薬師の一族。 そんな彼らを守り続けていた、守り葉と呼ばれし者たち。 守り葉として育てられた子供・みなもだったが、ある日隠れ里を襲われ、生き別れた姉・いずみや仲間たちとの再会を夢見て薬師として生きながら、行方を捜していた。 そんなみなもの元へ現れた、瀕死の重傷を負った青年レオニード。 彼との出会いがみなもの運命の歯車を動かしていく―――。 男装の麗人で、芯が強くて自分の手を汚すことを厭わない主人公と、そんな一筋縄ではいかない主人公を一途に想う、寡黙で真面目な青年の物語。 R18ではありませんが、後半は大人向けの展開になっています。 ※他サイトで公開していたものを改題・改稿しております。 ※今作は非BLです。期間限定で掲載致します。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

処理中です...