特殊装甲隊 ダグフェロン 第一部 蘇る火付盗賊改方 (ひつけとうぞくあらためかた) とは……殺人許可書を持つ「特殊な部隊」

橋本 直

文字の大きさ
28 / 60
天使との楽しいひと時

天使の住まう部屋への誘い

しおりを挟む
 誠はタバコを吸う島田の背中を眺めていた。そしてこの危険人物からどうやって逃げ出すか、そればかり考えていた。

「おい、アパ」

 振り返った島田。缶チューハイを飲み終えた彼はまたクーラーボックスから当然のように缶ビールを取り出しながら誠に声を掛けた。

「アパってなんです?」

 明らかに自分を指していると誠は確信したが、あまりに失礼なのでとりあえず島田に聞いてみた。

「お前はアパ。そう俺が決めた。通じるだろ?アパで。わかるんだったらそれでいいじゃん。ただ、俺に変な綽名を付けたら殺すからな。島田先輩と呼べ」

 そう言うと島田はうまそうにビールを飲んだ。

「お前、ちっちゃい姐御のところは当然行ったな」

 呼吸をするためにビールを飲むのをやめるところから見て、どうやらこの危険生物は呼吸を止めると死ぬらしい。そんなことを考えながら誠は口を開いた。

「一応、僕はパイロット候補として配属されました。そうなれば当然、あそこに顔ぐらい出します」

 そんな少し怒った口調の誠の言葉を間抜けな顔の島田が聞いている。

「当然、隊長室……当然だな。女芸人の詰所は……行ったからここに来ている……そうなると……アパ。天使の部屋には行ったか?」

 この脳みそバイク部品の危険人物である自称『島田先輩』は奇妙な言葉を口にした。

「天使?あのいつ発砲するか分からない自称パイロットの危ない女サイボーグの前に座ってる人ですか?緑の髪の」

 誠にはそれ以外天使っぽい人にはこの本部に来てから会っていなかった。

「あれは天使じゃねえよ。あるもの、そう依存症だ。あるもの無しには生活を営むことはできないかわいそうなお人だ」

 島田はそう言いながら空を見上げた。誠も一緒に空を見上げる。そこには雲が浮いていた。

「性的な意味でですか?」

 明らかに振りとしてそう言ってみた。

「んな訳ねーだろ!女をそういう目で見てるようなら、アパ……死ぬぜ。なぜなら俺が殴り殺すから。そう言うナンパな奴は許せねえんだ。俺は『硬派』だからな」

 時々こういう危ないことを言う。そんなかわいそうな生き物が発した『天使』と言う事が気になって誠は次の島田の言葉を待った。

 島田は缶ビールを飲み干すとニヤリと笑い、誠を見つめた。

「うちには天使がいる。アイドルなんかじゃねえし、俺はまともにあの娘を見たとき『こいつは天使だ』と思ったね。もし、サラに出会う前だった、おそらく彼女のナイトになっていたな……俺は」

 この危険な生き物は女性に関して高く希望を持ちすぎている。同じ童貞として、このかわいそうな生き物に誠は同情のまなざしを送っていた。

「アパ。あのいつ女芸人限定の若手お笑いライブを開いてもおかしくない連中の隣の部屋。天使の部屋の入口はそんなところに隠されていく。お前の進むべき進路は彼女が知っている。行け、アパ。そして、自分の行く末をそこで天使から聞け」

 そう言うと立ち上がった預言者気取りの割り算もできない馬鹿が、再びバイクの前輪の前に置いてあるタバコの缶に向かって歩き出した。

「アメリアさんのいる部屋の隣ですね。行ってきます」

 そう言って誠は危ない馬鹿を置き去りにして本部の入っている建物に向かった。

「そうだ!アパ!お前の冒険はそこから始まるのじゃ!」

 これ以上馬鹿にかかわると頭がおかしくなるので、とりあえずまともな人間である可能性に賭けてコンクリートの本部棟へと歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

処理中です...