53 / 69
不幸な『出会い』
第53話 すべてを失った遼州人
しおりを挟む
「肩が痛い……。誠ちゃん今度の訓練の時はストック伸ばした方がいいわよ。肩がいたくなるけど腕への負担はかなーり違うから」
本部の『運航部』の部長席に『特殊な部隊』の運行艦『ふさ』艦長が座っていた。
アメリア・クラウゼ少佐は肩をさすりながら腕の筋肉痛で頬を引きつらせているまことを糸目で眺めた。
誠から見ても結構、美女である。身長は180㎝を超えるほどデカイ。そして、異様に目が細かった。
「アメリアさん。それ最初に行ってください」
誠は本心からそう思った。本部の『運航部』の大きな部屋は、彼女に言わせれば自分の『城』らしい。部屋の女子部員は隣の運航部のシミュレーションルームで訓練でもしているのか、誰一人いなかった。
「まあ、誠ちゃんはうちの草野球のエースとして秋から頑張ってもらわなきゃならないんだから……そこだけは期待しているわよ」
「そこだけってなんですか……もうちょっと期待してくれてもいいじゃないですか」
誠の反論にアメリアはあざ笑うような微笑みを浮かべる。
「期待ねえ……この東都共和国の世界を見てごらんなさいよ。世界が望んだように進むなんて幻想なんじゃない?」
アメリアの言葉で誠は我に返った。
「確かに……2600年代にガソリンエンジン車が走ってるなんて……地球の人達が知ったら卒倒するでしょうけど……そんなの石油が沢山とれるし、人口も地球よりはるかに少ないんだから当然じゃないですか?」
誠は理系脳だった。
彼の常識からしてみればSFの空を飛ぶ自動車など完全に架空のものに見えた。
第一、彼自身が普通に四輪自動車の運転すらまともにできないのである。空を飛ぶ飛行自動車の制御など選ばれたエリートしかできないのは全く持って当たり前の話なのである。
免許が出なければ、いくら重力制御装置で空を飛べる飛行自動車が実現しようが普及するはずもない。当然東和共和国には飛行自動車など販売の予定も無かった。
アメリアは完全に笑顔で細い目をさらに補足しながら突然咳払いをした。
誠の現実逃避へのぎりぎりの状態で奇妙な変化が起きた。
誠の視界の中でアメリアの表情が急にまともな人間に見えた。そして、彼女の糸目が少し開かれ、紺色の瞳が見えた。
『目の錯覚かな……』
誠がそう思った次の瞬間、アメリアは語り始めた。
「まあ、ふざけるのはこれくらいにして……誠ちゃんもうちの隊員なんだから」
急にアメリアの纏っていた雰囲気が変わっていた。そこには少し悲しげにほほ笑む美女の姿があった。
「私が知っていることを話すわね。一応、『部長』だから、知ってるわけなの。内容が誠ちゃんには、理解できるかどうか分からないけど」
そう言うアメリアは先程までの『芸人』とは別の顔で話し始めた。
「すべては『悲しい出会い』から始まったの。地球人の調査隊の持っていた『銃』と、『リャオ』を自称していたここ植民第24番星系、第三惑星『遼州』の『遼州人』が出会ったこと。その大地の下に『金鉱脈』が埋まっていたことがすべての始まり」
誠はそこで地球人による『リャオ』への一方的『人間狩り』が行われたことを思い出した。
「遼州人はすべてを地球の文明人達の『欲望』によって奪われた。言語は失われ、文字を持たない遼州人は『未開人教化』と言う名のもとに地球圏に『管理』された。地球圏の人は……おそらくそんな私達から見た『真実』なんて知らないわよ。自分達は遼州人に良いことばかりしたと思ってる。『未開人』に『文明』を教えたと威張ってるんじゃない?」
アメリアの言葉に誠は違和感を感じた。遼州に地球人が到達してから『遼帝国』独立までの20年の歴史は誠の知識の中では、完全に『空白』になっていた。
本部の『運航部』の部長席に『特殊な部隊』の運行艦『ふさ』艦長が座っていた。
アメリア・クラウゼ少佐は肩をさすりながら腕の筋肉痛で頬を引きつらせているまことを糸目で眺めた。
誠から見ても結構、美女である。身長は180㎝を超えるほどデカイ。そして、異様に目が細かった。
「アメリアさん。それ最初に行ってください」
誠は本心からそう思った。本部の『運航部』の大きな部屋は、彼女に言わせれば自分の『城』らしい。部屋の女子部員は隣の運航部のシミュレーションルームで訓練でもしているのか、誰一人いなかった。
「まあ、誠ちゃんはうちの草野球のエースとして秋から頑張ってもらわなきゃならないんだから……そこだけは期待しているわよ」
「そこだけってなんですか……もうちょっと期待してくれてもいいじゃないですか」
誠の反論にアメリアはあざ笑うような微笑みを浮かべる。
「期待ねえ……この東都共和国の世界を見てごらんなさいよ。世界が望んだように進むなんて幻想なんじゃない?」
アメリアの言葉で誠は我に返った。
「確かに……2600年代にガソリンエンジン車が走ってるなんて……地球の人達が知ったら卒倒するでしょうけど……そんなの石油が沢山とれるし、人口も地球よりはるかに少ないんだから当然じゃないですか?」
誠は理系脳だった。
彼の常識からしてみればSFの空を飛ぶ自動車など完全に架空のものに見えた。
第一、彼自身が普通に四輪自動車の運転すらまともにできないのである。空を飛ぶ飛行自動車の制御など選ばれたエリートしかできないのは全く持って当たり前の話なのである。
免許が出なければ、いくら重力制御装置で空を飛べる飛行自動車が実現しようが普及するはずもない。当然東和共和国には飛行自動車など販売の予定も無かった。
アメリアは完全に笑顔で細い目をさらに補足しながら突然咳払いをした。
誠の現実逃避へのぎりぎりの状態で奇妙な変化が起きた。
誠の視界の中でアメリアの表情が急にまともな人間に見えた。そして、彼女の糸目が少し開かれ、紺色の瞳が見えた。
『目の錯覚かな……』
誠がそう思った次の瞬間、アメリアは語り始めた。
「まあ、ふざけるのはこれくらいにして……誠ちゃんもうちの隊員なんだから」
急にアメリアの纏っていた雰囲気が変わっていた。そこには少し悲しげにほほ笑む美女の姿があった。
「私が知っていることを話すわね。一応、『部長』だから、知ってるわけなの。内容が誠ちゃんには、理解できるかどうか分からないけど」
そう言うアメリアは先程までの『芸人』とは別の顔で話し始めた。
「すべては『悲しい出会い』から始まったの。地球人の調査隊の持っていた『銃』と、『リャオ』を自称していたここ植民第24番星系、第三惑星『遼州』の『遼州人』が出会ったこと。その大地の下に『金鉱脈』が埋まっていたことがすべての始まり」
誠はそこで地球人による『リャオ』への一方的『人間狩り』が行われたことを思い出した。
「遼州人はすべてを地球の文明人達の『欲望』によって奪われた。言語は失われ、文字を持たない遼州人は『未開人教化』と言う名のもとに地球圏に『管理』された。地球圏の人は……おそらくそんな私達から見た『真実』なんて知らないわよ。自分達は遼州人に良いことばかりしたと思ってる。『未開人』に『文明』を教えたと威張ってるんじゃない?」
アメリアの言葉に誠は違和感を感じた。遼州に地球人が到達してから『遼帝国』独立までの20年の歴史は誠の知識の中では、完全に『空白』になっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!
オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。
ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。
学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。
当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。
同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。
ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。
そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。
まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。
その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。
こうしてジュリーとの同居が決まった。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる