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第三章 『特殊な部隊』の新たなる任務
第9話 タバコと策士の哲学
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誠は司法局実働部隊のライトブルーの制服からTシャツとジーンズに着替えると、終業後に遊びに出かける男子隊員達でごった返す実働部隊男子更衣室を後にした。
そのまま司法局実働部隊本部の二階の廊下を歩いていると、喫煙所の前を通りかかった。
「帰りかい?お疲れさん。この頃はランもお前さんの指導の仕方が分かって来たみたいだからね。最近はあんまり以前みたいにきつく当たることも無いだろ?俺も言ったんだよ。お前さんは別に陸上選手になるためにうちに入ったわけじゃ無いんだって。まあ、アイツはパイロットはまず体力って主義だから。多少は付き合ってくれると俺としてはありがたいな」
誠に声をかけてきたのは、司法局実働部隊の隊長である嵯峨惟基特務大佐だった。その姿は相変わらず隊長らしくは無かった。
まず、見た目が若すぎた。
誠は大卒二年目の24歳だが、どう見ても嵯峨は誠と同い年くらいに見える。嵯峨は自称47歳、バツイチ、子持ちだが、そんな風にはとても見えない。しかし、それには理由があった。
誠や嵯峨、機動部隊長であるちっちゃな『英雄』クバルカ・ラン中佐は、地球外知的生命体として地球人が遭遇した宇宙人の1つである『遼州人』と呼ばれる種族だった。見た目はどう見ても地球人の東アジア系にしか見えない『遼州人』にはある秘密が隠されていた。
それは『法術』と呼ばれる力を持つ者もおり、その『法術師』には地球人の科学では理解不能な『力』を持っていることだった。
司法局実働部隊では誠の知っている限り、誠、嵯峨、そしてランがその『法術師』と呼ばれる存在だった。そして、誠達『法術師』には超能力のようなものが備わっていた。
様々な能力があるとされている『法術師』だが、嵯峨とランのそれはある意味、科学の存在を疑わしめるとてつもない能力を秘めていた。
それは『不老不死』だった。
嵯峨は誠が生まれる二十数年前から誠の実家である『神前一刀流道場』に出入りしていたが、その姿が全く変わらなかった。昔から同じような年に見え、同じようにタバコを吸い、同じような調子で誠の母が営む剣道場にあいさつして帰る謎の男。それが嵯峨惟基と言う男について誠が知っているすべてだった。
こちらも書類上は34歳と言うことになっているランに至ってはどう見ても8歳女児にしか見えない。しかし、彼女もまた十年前に終結した『遼南内戦』において敗戦側の『遼南共和国』の『汗血馬の騎手』の2つ名で呼ばれたトップエースパイロットとして知られた存在だった。ランに当時の写真を見せてもらったが、そこに写っているのは目に光のない操り人形のような印象を感じた他は今のランと寸分たがわぬ姿をしていた。
そんな訳でどう見ても誠とさほど年齢の変わらない見た目を持つ『中年男』、嵯峨惟基が出来上がった。
嵯峨惟基はいつも通り自分を不思議そうに見つめてくる誠を見ながらゆったりと構えてタバコをくゆらせていた。
これがいつもの誠の見かける嵯峨の終業後の姿だった。
「いつも暇そうですね。お金が無いんですか?貸しましょうか?でも特務大佐ってそんなに給料が安いんですか?誰かに貢いでるんですか?そんな女が居るような話が有るならなんで風俗情報誌なんて読んでるんですか?そっちの方で満足できるでしょ?」
誠はきついタバコの匂いに閉口しながら、隊長である嵯峨に嫌味を言ってみた。
「言うねえ……まあ、いつもトレーニングのランニングで毎日20キロ走らされているおまえさんにはそう言う権利があるか。それと金が無いのは事実だもんね。給料は……まあその話は別の機会にしようや。実はお前さんも驚くような給料を俺は貰ってるんだけどね。でも自由に使えないんじゃ何の意味もないもんね。これも仕方がない。これはいわゆる息抜き。部下の顔色を見るのも隊長のお仕事だから。部下を完全に掌握しておくこと。これが俺の戦争における負けない秘密だ。勝ち方は……俺は戦争で勝ったことが無いんでね。まあ、この前の戦いは勝ったか。それもお前さんのおかげで。ありがとうな、負けっぱなしの俺に勝ちを付けてくれて」
嵯峨はそう言って誠の嫌味を受け流した。
「そう言えば、うち以外に法術関係の捜査の専任機関として『法術特捜』とか言う組織ができるんですよね、隊長の娘さんが仕切って……確か、娘さんも隊長みたいな『駄目女』って事じゃあ困りますよ。そしたら司法局は終わります」
誠は典型的な『駄目人間』とランから酷評されている嵯峨に対してそう言って冷たい視線を向けた。嵯峨はそう言われても特に気にする様子もなくタバコをくゆらせていた。
「らしいね。まあ俺もそうなるんじゃないかなあとは思ってたんだ。他に上の連中に思いつくような手は無いだろうし。あと、アイツを俺と同じような無責任人間だと思ってたら痛い目見るのはお前さんだよ。アイツももう26歳。お前さんより2つ上の警部様だ。今のうちに警告しておく。俺を酷い目に遭わせてるのはアイツだもの。俺に対するようにアイツと接したら大きな間違いだと次の瞬間にはお前さんも気づくことになる」
誠のとりあえず言ってみた話題に嵯峨は素っ気なくそう答えた。
「らしいって……うちの部隊と対をなす組織の上に、隊長の娘さんがそのトップになるかもしれないんですよ!もっと何か……その組織がどう言う組織なのか説明するとか、隊長らしいところを見せてくださいよ。その口調だと娘さんは隊長とは大違いの人なんでしょ?だったらなおの事ちゃんと指導してあげるのが『駄目人間』扱いされてる隊長に出来る唯一の事なんじゃないですか?」
明らかにやる気のない嵯峨の言葉に呆れながら誠はそう口走っていた。
「そんなカリカリしなさんなって。お前さんがいくら叫んでも状況は変わらないよ。俺は前からそんな組織が必要になるってさんざん上申してたんだから。今回はようやく遼州同盟のお偉いさんが重い腰を上げただけ。とりあえず形だけの『法術対策』とやらをやろうって話だ。連中の考えそうなことはすべてお見通しだよ。それにお前さんは知らないだろうが茜の件ならアイツはおまえさんより2つ上、26だ。大人だよ。アイツは俺ともアイツのお袋とも違って社会常識も貞操観念もしっかりしている出来た娘なんだ。なんと言ったってどうしようもない俺に小遣いをやって更生させようとしているくらいだもの。俺なんかがどうこう言う話じゃないんじゃないかな。生活者としては俺よりよっぽどしっかりしてる。俺は生活者としては完全に人間失格のレベルらしいから」
相変わらず嵯峨はのらりくらりと誠の詰問を受け流す。
「でも一応、隊長の上申が通ってできた組織のトップになるんでしょ?お父さんとして部隊長の心得とか助言くらいしてあげればいいのに。社会人……軍人としての経験は長いんでしょ?隊長は。だったらその心構えとかを教えてあげるのが人生の先輩としての責務なんじゃないですか?」
誠はまるで娘のやることに関心がないような調子の嵯峨にそう言った。
「大人が大人に意見するのは本当に相手が間違っている時だけで良いと俺は思うよ。親心なんて言う言葉があるが、子供からしたらそれはただ迷惑なだけだよ。そこら辺のけじめはしっかりつけろって俺の義父が言ってたの、思い出すなあ。義父は俺に若いころから好き勝手やらしてくれた。だから今の俺がある」
嵯峨の懐かしむような口調に誠は違和感を感じた。
「その顔。俺が『駄目人間』になったのはそのせいだって言いたい顔だね。半分は正解だけど、もし義父が厳しい社会常識の塊みたいな奴だったら俺みたいな型外れの策士は産まれなかった。俺は自分が策士だと思っている。そしてそのことに関する自負もある。そう育ててくれた義父には感謝してるよ。だから茜には余計なことは言わないんだ。アイツはアイツの道を進めばいい。俺はそれを見守るだけ。これが俺の教育方針。分かったかな?」
昔話をするように嵯峨はタバコをくわえながら遠くを眺めるような目つきをした。
「でも『法術特捜』の設立を上申したのは隊長でしょ?その責任ぐらい取ってあげても良いんじゃないですか?しっかり者の出来た娘さんならそれを理解して次に進むくらいの判断力ぐらいは有ると思いますよ……少なくとも再起不能なくらい『駄目』な隊長を見捨てていないんですから」
誠はなんとか彼を煙に巻こうとする嵯峨に食い下がった。
「そうだよ。うちはシュツルム・パンツァーの運用が主任務だ。警察で言うところの『機動隊』みたいなもんだな。ところが法術の問題は根深い。じっくり時間をかけて問題がまだ表面化していない段階から調査して違法行為が行われていないか検証する必要がある。そのための組織が『法術特捜』。足を使って社会の隅々でひずみを起こすであろう『法術』の存在を適法に使用されるように導く重要なお仕事。アイツもやりがいがあるって言ってたよ」
嵯峨はそう言いながら相変わらずタバコをくわえてニヤニヤ笑っている。
「じゃあ、『刑事』みたいなことするんですね。隊長は以前憲兵をやっていたって噂で聞きました。その時の経験とかを教えてあげても良いんじゃないですか?憲兵隊も社会の隅々を見るのがお仕事らしいんで……まあ、甲武の憲兵隊はあまり評判自体はこの東和でも芳しくないですけど」
期待するだけ無駄だが、誠はまだ嵯峨に親らしい感情を期待していた。
「憲兵と警察は違うよ。それに現実的な話をすると、たとえば尾行ってのは人によってコツがあってね。それぞれそう言う必要なスキルは実地で自分の力で身に着けていくもんだ。そんな俺と娘じゃそもそも役割が違いすぎて助言のしようがない。それに憲兵隊なんて真似たって警察官は立派にはなれないよ。憲兵隊なんて言うのは自分で言うのも何だが人間のクズのやる仕事だ。卑怯卑劣。人間のやるようなことじゃないことまでやらされる。そんな思いを茜にはさせたくない」
身も蓋も無いことをあっさりと嵯峨は言って見せた。
「立場が違いすぎて助言できないといわれると……」
話題に詰まった誠を嵯峨は嫌らしい笑みを浮かべつつ見上げた。
「だから言ってるじゃない。茜は大人なんだって。お前さんもそうだ。自分の事は自分でできるようになって、初めて社会人だ。せいぜい精進しな」
嵯峨は誠を笑い飛ばすような笑みを浮かべながら吸いかけのタバコを灰皿に押し付けた。
そのまま司法局実働部隊本部の二階の廊下を歩いていると、喫煙所の前を通りかかった。
「帰りかい?お疲れさん。この頃はランもお前さんの指導の仕方が分かって来たみたいだからね。最近はあんまり以前みたいにきつく当たることも無いだろ?俺も言ったんだよ。お前さんは別に陸上選手になるためにうちに入ったわけじゃ無いんだって。まあ、アイツはパイロットはまず体力って主義だから。多少は付き合ってくれると俺としてはありがたいな」
誠に声をかけてきたのは、司法局実働部隊の隊長である嵯峨惟基特務大佐だった。その姿は相変わらず隊長らしくは無かった。
まず、見た目が若すぎた。
誠は大卒二年目の24歳だが、どう見ても嵯峨は誠と同い年くらいに見える。嵯峨は自称47歳、バツイチ、子持ちだが、そんな風にはとても見えない。しかし、それには理由があった。
誠や嵯峨、機動部隊長であるちっちゃな『英雄』クバルカ・ラン中佐は、地球外知的生命体として地球人が遭遇した宇宙人の1つである『遼州人』と呼ばれる種族だった。見た目はどう見ても地球人の東アジア系にしか見えない『遼州人』にはある秘密が隠されていた。
それは『法術』と呼ばれる力を持つ者もおり、その『法術師』には地球人の科学では理解不能な『力』を持っていることだった。
司法局実働部隊では誠の知っている限り、誠、嵯峨、そしてランがその『法術師』と呼ばれる存在だった。そして、誠達『法術師』には超能力のようなものが備わっていた。
様々な能力があるとされている『法術師』だが、嵯峨とランのそれはある意味、科学の存在を疑わしめるとてつもない能力を秘めていた。
それは『不老不死』だった。
嵯峨は誠が生まれる二十数年前から誠の実家である『神前一刀流道場』に出入りしていたが、その姿が全く変わらなかった。昔から同じような年に見え、同じようにタバコを吸い、同じような調子で誠の母が営む剣道場にあいさつして帰る謎の男。それが嵯峨惟基と言う男について誠が知っているすべてだった。
こちらも書類上は34歳と言うことになっているランに至ってはどう見ても8歳女児にしか見えない。しかし、彼女もまた十年前に終結した『遼南内戦』において敗戦側の『遼南共和国』の『汗血馬の騎手』の2つ名で呼ばれたトップエースパイロットとして知られた存在だった。ランに当時の写真を見せてもらったが、そこに写っているのは目に光のない操り人形のような印象を感じた他は今のランと寸分たがわぬ姿をしていた。
そんな訳でどう見ても誠とさほど年齢の変わらない見た目を持つ『中年男』、嵯峨惟基が出来上がった。
嵯峨惟基はいつも通り自分を不思議そうに見つめてくる誠を見ながらゆったりと構えてタバコをくゆらせていた。
これがいつもの誠の見かける嵯峨の終業後の姿だった。
「いつも暇そうですね。お金が無いんですか?貸しましょうか?でも特務大佐ってそんなに給料が安いんですか?誰かに貢いでるんですか?そんな女が居るような話が有るならなんで風俗情報誌なんて読んでるんですか?そっちの方で満足できるでしょ?」
誠はきついタバコの匂いに閉口しながら、隊長である嵯峨に嫌味を言ってみた。
「言うねえ……まあ、いつもトレーニングのランニングで毎日20キロ走らされているおまえさんにはそう言う権利があるか。それと金が無いのは事実だもんね。給料は……まあその話は別の機会にしようや。実はお前さんも驚くような給料を俺は貰ってるんだけどね。でも自由に使えないんじゃ何の意味もないもんね。これも仕方がない。これはいわゆる息抜き。部下の顔色を見るのも隊長のお仕事だから。部下を完全に掌握しておくこと。これが俺の戦争における負けない秘密だ。勝ち方は……俺は戦争で勝ったことが無いんでね。まあ、この前の戦いは勝ったか。それもお前さんのおかげで。ありがとうな、負けっぱなしの俺に勝ちを付けてくれて」
嵯峨はそう言って誠の嫌味を受け流した。
「そう言えば、うち以外に法術関係の捜査の専任機関として『法術特捜』とか言う組織ができるんですよね、隊長の娘さんが仕切って……確か、娘さんも隊長みたいな『駄目女』って事じゃあ困りますよ。そしたら司法局は終わります」
誠は典型的な『駄目人間』とランから酷評されている嵯峨に対してそう言って冷たい視線を向けた。嵯峨はそう言われても特に気にする様子もなくタバコをくゆらせていた。
「らしいね。まあ俺もそうなるんじゃないかなあとは思ってたんだ。他に上の連中に思いつくような手は無いだろうし。あと、アイツを俺と同じような無責任人間だと思ってたら痛い目見るのはお前さんだよ。アイツももう26歳。お前さんより2つ上の警部様だ。今のうちに警告しておく。俺を酷い目に遭わせてるのはアイツだもの。俺に対するようにアイツと接したら大きな間違いだと次の瞬間にはお前さんも気づくことになる」
誠のとりあえず言ってみた話題に嵯峨は素っ気なくそう答えた。
「らしいって……うちの部隊と対をなす組織の上に、隊長の娘さんがそのトップになるかもしれないんですよ!もっと何か……その組織がどう言う組織なのか説明するとか、隊長らしいところを見せてくださいよ。その口調だと娘さんは隊長とは大違いの人なんでしょ?だったらなおの事ちゃんと指導してあげるのが『駄目人間』扱いされてる隊長に出来る唯一の事なんじゃないですか?」
明らかにやる気のない嵯峨の言葉に呆れながら誠はそう口走っていた。
「そんなカリカリしなさんなって。お前さんがいくら叫んでも状況は変わらないよ。俺は前からそんな組織が必要になるってさんざん上申してたんだから。今回はようやく遼州同盟のお偉いさんが重い腰を上げただけ。とりあえず形だけの『法術対策』とやらをやろうって話だ。連中の考えそうなことはすべてお見通しだよ。それにお前さんは知らないだろうが茜の件ならアイツはおまえさんより2つ上、26だ。大人だよ。アイツは俺ともアイツのお袋とも違って社会常識も貞操観念もしっかりしている出来た娘なんだ。なんと言ったってどうしようもない俺に小遣いをやって更生させようとしているくらいだもの。俺なんかがどうこう言う話じゃないんじゃないかな。生活者としては俺よりよっぽどしっかりしてる。俺は生活者としては完全に人間失格のレベルらしいから」
相変わらず嵯峨はのらりくらりと誠の詰問を受け流す。
「でも一応、隊長の上申が通ってできた組織のトップになるんでしょ?お父さんとして部隊長の心得とか助言くらいしてあげればいいのに。社会人……軍人としての経験は長いんでしょ?隊長は。だったらその心構えとかを教えてあげるのが人生の先輩としての責務なんじゃないですか?」
誠はまるで娘のやることに関心がないような調子の嵯峨にそう言った。
「大人が大人に意見するのは本当に相手が間違っている時だけで良いと俺は思うよ。親心なんて言う言葉があるが、子供からしたらそれはただ迷惑なだけだよ。そこら辺のけじめはしっかりつけろって俺の義父が言ってたの、思い出すなあ。義父は俺に若いころから好き勝手やらしてくれた。だから今の俺がある」
嵯峨の懐かしむような口調に誠は違和感を感じた。
「その顔。俺が『駄目人間』になったのはそのせいだって言いたい顔だね。半分は正解だけど、もし義父が厳しい社会常識の塊みたいな奴だったら俺みたいな型外れの策士は産まれなかった。俺は自分が策士だと思っている。そしてそのことに関する自負もある。そう育ててくれた義父には感謝してるよ。だから茜には余計なことは言わないんだ。アイツはアイツの道を進めばいい。俺はそれを見守るだけ。これが俺の教育方針。分かったかな?」
昔話をするように嵯峨はタバコをくわえながら遠くを眺めるような目つきをした。
「でも『法術特捜』の設立を上申したのは隊長でしょ?その責任ぐらい取ってあげても良いんじゃないですか?しっかり者の出来た娘さんならそれを理解して次に進むくらいの判断力ぐらいは有ると思いますよ……少なくとも再起不能なくらい『駄目』な隊長を見捨てていないんですから」
誠はなんとか彼を煙に巻こうとする嵯峨に食い下がった。
「そうだよ。うちはシュツルム・パンツァーの運用が主任務だ。警察で言うところの『機動隊』みたいなもんだな。ところが法術の問題は根深い。じっくり時間をかけて問題がまだ表面化していない段階から調査して違法行為が行われていないか検証する必要がある。そのための組織が『法術特捜』。足を使って社会の隅々でひずみを起こすであろう『法術』の存在を適法に使用されるように導く重要なお仕事。アイツもやりがいがあるって言ってたよ」
嵯峨はそう言いながら相変わらずタバコをくわえてニヤニヤ笑っている。
「じゃあ、『刑事』みたいなことするんですね。隊長は以前憲兵をやっていたって噂で聞きました。その時の経験とかを教えてあげても良いんじゃないですか?憲兵隊も社会の隅々を見るのがお仕事らしいんで……まあ、甲武の憲兵隊はあまり評判自体はこの東和でも芳しくないですけど」
期待するだけ無駄だが、誠はまだ嵯峨に親らしい感情を期待していた。
「憲兵と警察は違うよ。それに現実的な話をすると、たとえば尾行ってのは人によってコツがあってね。それぞれそう言う必要なスキルは実地で自分の力で身に着けていくもんだ。そんな俺と娘じゃそもそも役割が違いすぎて助言のしようがない。それに憲兵隊なんて真似たって警察官は立派にはなれないよ。憲兵隊なんて言うのは自分で言うのも何だが人間のクズのやる仕事だ。卑怯卑劣。人間のやるようなことじゃないことまでやらされる。そんな思いを茜にはさせたくない」
身も蓋も無いことをあっさりと嵯峨は言って見せた。
「立場が違いすぎて助言できないといわれると……」
話題に詰まった誠を嵯峨は嫌らしい笑みを浮かべつつ見上げた。
「だから言ってるじゃない。茜は大人なんだって。お前さんもそうだ。自分の事は自分でできるようになって、初めて社会人だ。せいぜい精進しな」
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