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第一章 ユースとエリー
第十八話 決着、そして惜別
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「ったく、あいつらしつこすぎるだろ!」
ユースはいまだに追手の自然戦士と追いかけっこをしていた。
三人の自然戦士の銃弾をギリギリで避けようとしながら、実際には大げさに動いてしまい、自分の能力の低さに歯がゆさを感じならがも、ユースはどうやって追手を無力化するか考えていた。
殺すわけにはいかないし、空中で麻痺させても落下したらまず助かるわけがない。
ユースがそんなことを考えていると、ユースの腕の中にいるエリーが言った。
「ちょっとユース!! なんであいつら殺さないのよ!!」
「殺せるわけないでしょ! 相手は人間だぞ!」
「お父様だって殺してたでしょ!?」
「それは関係ないでしょ!!」
「やらなきゃあなたが死ぬわよ!!」
「そう言われたって……」
追手の自然戦士はユースに弾が当たらなくてじれったくなったのか、武器を剣に持ち替えて急接近してきた。
「ユース来るわよ! 避けるか反撃するかしてよ!!」
ユースは何を思ったか、突然エリーを上空に投げ上げた。
「きゃああああああ!」エリーの生身の体が宙を舞った。
追手どもはエリーを標的にしているため、急に方向転換せざるを得なかった。
が、ユースの繰り出した火柱によって行く手を阻まれ、日が消えたときにそこにはエリーはいなかった。
そしてユースに目を向けると、ユースは抜剣した状態でエリーを抱えていた。
「やれやれ……エリーを抱えたままじゃ抜剣出来ないからな。」
エリーは青ざめた表情でガクガク震えていた。
三人の追手は剣をユースに振りかざした。
だが、ユースには剣を振り上げた隙こそがチャンスだった。
・持久力10
・攻撃力30
・防御力10
・想像力10
・抵抗力10
・機動力30
ユースは強化された攻撃力で正面の自然戦士の胸を貫いた。
貫いた先から炎のように赤い血が噴き出した。
その返り血を浴びながら、後方から接近してきた敵を、振り向きざまに上下に真っ二つにした。
この部分、メディア化する際に年齢制限がかからないよう、配慮してほしいものである。
三人目の追手はユースの急変に恐れをなしたのか、悲鳴を上げながら一目散に逃げて行ってしまった。
「やったじゃないユース! これで心置きなく本国に帰れ……ユース?どうしたの?」
ユースは顔が真っ青になっていた。
エリーを抱える手がとてつもなく震えていた。
「……ユース!? まさか動揺してるの!? いいでしょあなた軍人なんでしょ!!? これから先いくらでも人殺すんだから、ユース!!」
「ハァ、ハァ、墜落するかと思った……」「それはこっちのセリフよ!!!」
何とか落ち着いたユースがエリーを連れてブリデラント王国の首都ルンドンの国際空港に降り立った時、そこには数多くの野次馬、マスコミ、そして暴走しそうな彼らを抑えようとする、空港職員、警備員、警察官がいた。
エリーを一目見ようと滑走路に立ち入りしようとする野次馬たちを、スタッフたちが押し返そうとしているのを横目に見ながら、ユースは滑走路に着陸した。
「なんであんなに人がいるんだ?」
「王族のプライベートジェットがハイジャック、さらに犯人が私たちと同じ自然戦士だったら、そりゃあ話題にもなるでしょ。」エリーが冷静に答えた。
ユースとエリーが空港に入ろうとすると、いきなりやってきたマスコミの群れにもみくちゃにされた。
「エリー殿下!今のお気持ちをお聞かせください!!」
「国王陛下は無事なのですか!?」
「隣にいる太陽戦士は誰ですか!?」
ユースははジェットパックで空中浮遊して野次馬を避けた。
「エリー殿下! ユース殿!」空港の出口に手を振る人影が。
ブリデラント王室の近衛兵だった。
「助かった!」「ふぅ……これでひとまず安心ね。」ユースとエリーは近衛兵が運転してきたリムジンに乗り込んだ。
「国王陛下は大丈夫かな……」ユースは不安そうだった。
「何言ってんのよ、現氷結王が負けるわけがないでしょ!」なぜかエリーは自慢げだった。
「君の目は節穴か? あのハイジャック犯の主格、かなり強いエネルギーを放っていた……」「え、ユースそんなこともわかるの?」「え、自然戦士の基本装備とかじゃないの?」
エリーは驚愕した。自然戦士の肉体からは微弱なエネルギーが放たれている。それを感知することで敵の戦闘力や位置を把握できるが、これにはかなり長期の訓練が必要である。
(自然戦士になって二週間たってないのに、そんな高騰テクニックが使えるなんて……一体ユースは何者なの?)
「ああ~~~~~~~~~~!!!」突然、ユースが声を上げた。
「ど、どうしたのユース!?」
「僕、パスポート持ってない!!」「自然戦士はいらないのよ!!」
一方、現「氷結王」ヘンリー対元「氷結王」ショーン+二人の部下。
三人の自然戦士の剣技を、ヘンリーは剣も使わずに氷を生成して防いだり、刃をギリギリでかわしていたりした。
「ショーンよ、お前はあれから十年間、何度も私に闘いを挑んで負けたよな?」
「そうだ!! 今日こそ決着をつけてやる!」
「一対一の闘いでは負けるからこの様な卑怯な手を使うと言うのか!?」
「知ったことか!! もはやお前を殺せればそれでいい!!」
そんなやり取りをしながらショーン側は三人分の刃を目にもとまらぬスピードで振るい、ヘンリーは刃を防いでいた。
しかし、しだいにショーン側に変化が見られ始めた。
「ハァ……ハァ……!」「どうした? 息が上がっているぞ?」
「何の……これしき!」ショーンが顔を上げると、取り巻きの二人はすでに凍らされていた。
「な、何~~~~~!!!?」「悪いな。隙ができていたからつい。」
実はこれ、双方のパラメーターの振り分け方が関係していた。
ショーン達はパラメーターを
・持久力10
・攻撃力30
・防御力10
・想像力10
・抵抗力10
・機動力30
にしていたが、ヘンリーは
・持久力30
・攻撃力10
・防御力30
・想像力10
・抵抗力10
・機動力10
にしていた。
互いに正反対の能力にパラメーターを振っているので、うまくかみ合っているようにも見えるが、自然戦士にも「個人差」が存在する。
ヘンリーの得意な戦法は、このように相手を息切れさせるまで追い込んで、隙ができたところを自慢の早撃ちで仕留めるというものだった。
氷結戦士はこのような準長期戦を好む戦士が多い。ショーンもそのうちの一人だった。
しかし、何年もヘンリーに負け続けたことによって、ショーンの心には焦りが生まれ始めた。
そのために判断が鈍り、慣れない短期決戦を挑んでしまった。
ヘンリーは勝ち誇った顔で、空中でぐったりしているショーンの頭に銃突きつけた。
「ヘンリーよ。お前は私を恨んでいるかもしれんが、私はお前を高く評価している。おとなしく罪を償って、ブリデラントのために力を尽くさないか?」
「……なんだと?」ショーンの目が変わった。
「この俺に、お前のもとにつけと言うのか!? 俺をそんな屈辱的な目に、二度も会わせるというのか!!?」
ショーンの剣の柄に埋め込まれているダイヤモンドが光りだした。
「なっ……ショーン! やめろ! 今のお前にはそれは無理だ!!体がもたない!!!」
「知ったことか………お前を道連れにできるのなら、それでいい!!!」
ショーンは剣を大きく振りかざした。
「氷結剣……”奥義”! 氷河裁断《フローズンインパクト》!!!」
氷結剣から紐状の氷が飛び出し、ヘンリーの体に巻き付いた。
氷の紐はゴムひものように縮んでいき、それに合わせてヘンリーも引っ張られた。
「死ねえええええええええええええええ!!!!!」氷で覆われた剣がヘンリーの首にたたきつけられた。
そのまま刃は平行な軌道を描いて、首の反対側まで達した。
「はは……フハハハハハハハハハハハハハーーーー!!! ついにヘンリーを打ち取ったぞ――――!!!!」ショーンの高らかな笑い声が響きわたる。
ああ、世界最強の氷結戦士と呼ばれたヘンリーは、こんなにもあっけなく倒されてしまった。
……いや、そんな残酷なエンディングはこの物語には似合わない。
「何のことだ?」
突然ヘンリーの声が聞こえた。
ショーンはびっくりして我に返った。
すると、そこにあったはずのヘンリーの死体が無いことに気づいた。
「な………! 死体は? 死体はいったいどこに」と言いかけたところでショーンは言葉を発することができなくなった。
首の後ろから突然体内に侵入してきた氷が、ショーンの気管をふさいだからである。
ただ痛いだけではない。傷口が氷でふさがれているので、凍傷にかかったような激痛が走る。
「自然戦士の究極の技は、相手を気付つける技ではない。『自然体』は、全身の力を限りなくゼロにすることで、身体そのものを霊法に変化させ、敵の攻撃を完全に受け流すことができるのだ。」
どこからともなく表れたヘンリーがそう説明するが、もはやショーンに音を聞く能力は残っていなかった。
高度八千メートルから落下していくショーンを見届けながら、ヘンリーは言った。
「ショーンよ、十年前、急激に実力が反転した理由。それは、私が肩の力を抜くことを覚えたからだ。」
本国に戻ったヘンリーは、ちょうど夕食時だったため、ファインガム宮殿でユースを素晴らしいパーティーでもてなした。
「国賓みたいな扱いしなくていいって言ってるじゃないですか……」軍服姿のユースは少しすね気味だった。
「いいじゃない! この私の命を三度も救ったのよ!!」隣の席にいるドレス姿のエリーが答えた。
「今回の件で、お父様はあなたに騎士《ナイト》の称号を与えるそうよ。サー・ユース。」「サーって呼ばないでよ! それってローマンドじゃ貴族じゃないか!」
「まあまあ、せっかくのパーティーなんだから、肩の力を抜いて楽しみましょうよ! ほら、ダンスが始まるわ! 一緒に踊りましょう!!」
「え!? 僕はダンス知らないよ!」「私が教えてあげるから、さあおいで!!」
エリーに手を引かれて、ユースはホールの中央に移動した。
「いい? まずこうやって手を組んで……ほら、もっと腰を近づけて!」音楽が流れだした。
エリーにリードされながら、クローズドスタイルでブルースのステップを踏む。
「なあんだ、意外とできるじゃない。」
「いや他の人真似してるだけだから……」
「……ねえ、ユース。」
「何?」
「このままブリデラントに住んでもいいのよ?」
「いやダメだよ! 僕は皇帝に仕える太陽戦士だ。」
「じゃあ、またブリデラントに来てくれる?」
「それはもちろん。招待状が来ればね。」ユースはあくまでも控え目な姿勢を取った。
「それじゃあ、念のために約束の印をつけてもらうわ。」
「印をつける? 何を言ってるの?」
「ほら! 目を閉じて!」エリーの気迫に押され、ユースは一度立ち止まって目を閉じた。
「もう、ユースったら! いつになったら帰ってくるのよ!」窓ガラスが全部なくなった空港で(第十六話参照)ナーサは律儀にも待っていた。
空の向こうに、自然戦士が飛ぶ影が見えた。
「あ、やっと帰ってきた! ユースー!!」ナーサが手を振った。
ユースは壊れた窓から空港に入ってきた。
「心配したんだからね!いったいどこに行って……え、ユースそれマジ?」
ナーサの目が何か気持ち悪い物を見る目になった。
「頼むからそんな目で見ないでよ……」ユースの頬には紅色の口紅がついていた。
第一章 ユースとエリー 完
次回 第二章 謀略の復活祭 開幕
第十九話 海の向こうからの手紙 に続く
ユースはいまだに追手の自然戦士と追いかけっこをしていた。
三人の自然戦士の銃弾をギリギリで避けようとしながら、実際には大げさに動いてしまい、自分の能力の低さに歯がゆさを感じならがも、ユースはどうやって追手を無力化するか考えていた。
殺すわけにはいかないし、空中で麻痺させても落下したらまず助かるわけがない。
ユースがそんなことを考えていると、ユースの腕の中にいるエリーが言った。
「ちょっとユース!! なんであいつら殺さないのよ!!」
「殺せるわけないでしょ! 相手は人間だぞ!」
「お父様だって殺してたでしょ!?」
「それは関係ないでしょ!!」
「やらなきゃあなたが死ぬわよ!!」
「そう言われたって……」
追手の自然戦士はユースに弾が当たらなくてじれったくなったのか、武器を剣に持ち替えて急接近してきた。
「ユース来るわよ! 避けるか反撃するかしてよ!!」
ユースは何を思ったか、突然エリーを上空に投げ上げた。
「きゃああああああ!」エリーの生身の体が宙を舞った。
追手どもはエリーを標的にしているため、急に方向転換せざるを得なかった。
が、ユースの繰り出した火柱によって行く手を阻まれ、日が消えたときにそこにはエリーはいなかった。
そしてユースに目を向けると、ユースは抜剣した状態でエリーを抱えていた。
「やれやれ……エリーを抱えたままじゃ抜剣出来ないからな。」
エリーは青ざめた表情でガクガク震えていた。
三人の追手は剣をユースに振りかざした。
だが、ユースには剣を振り上げた隙こそがチャンスだった。
・持久力10
・攻撃力30
・防御力10
・想像力10
・抵抗力10
・機動力30
ユースは強化された攻撃力で正面の自然戦士の胸を貫いた。
貫いた先から炎のように赤い血が噴き出した。
その返り血を浴びながら、後方から接近してきた敵を、振り向きざまに上下に真っ二つにした。
この部分、メディア化する際に年齢制限がかからないよう、配慮してほしいものである。
三人目の追手はユースの急変に恐れをなしたのか、悲鳴を上げながら一目散に逃げて行ってしまった。
「やったじゃないユース! これで心置きなく本国に帰れ……ユース?どうしたの?」
ユースは顔が真っ青になっていた。
エリーを抱える手がとてつもなく震えていた。
「……ユース!? まさか動揺してるの!? いいでしょあなた軍人なんでしょ!!? これから先いくらでも人殺すんだから、ユース!!」
「ハァ、ハァ、墜落するかと思った……」「それはこっちのセリフよ!!!」
何とか落ち着いたユースがエリーを連れてブリデラント王国の首都ルンドンの国際空港に降り立った時、そこには数多くの野次馬、マスコミ、そして暴走しそうな彼らを抑えようとする、空港職員、警備員、警察官がいた。
エリーを一目見ようと滑走路に立ち入りしようとする野次馬たちを、スタッフたちが押し返そうとしているのを横目に見ながら、ユースは滑走路に着陸した。
「なんであんなに人がいるんだ?」
「王族のプライベートジェットがハイジャック、さらに犯人が私たちと同じ自然戦士だったら、そりゃあ話題にもなるでしょ。」エリーが冷静に答えた。
ユースとエリーが空港に入ろうとすると、いきなりやってきたマスコミの群れにもみくちゃにされた。
「エリー殿下!今のお気持ちをお聞かせください!!」
「国王陛下は無事なのですか!?」
「隣にいる太陽戦士は誰ですか!?」
ユースははジェットパックで空中浮遊して野次馬を避けた。
「エリー殿下! ユース殿!」空港の出口に手を振る人影が。
ブリデラント王室の近衛兵だった。
「助かった!」「ふぅ……これでひとまず安心ね。」ユースとエリーは近衛兵が運転してきたリムジンに乗り込んだ。
「国王陛下は大丈夫かな……」ユースは不安そうだった。
「何言ってんのよ、現氷結王が負けるわけがないでしょ!」なぜかエリーは自慢げだった。
「君の目は節穴か? あのハイジャック犯の主格、かなり強いエネルギーを放っていた……」「え、ユースそんなこともわかるの?」「え、自然戦士の基本装備とかじゃないの?」
エリーは驚愕した。自然戦士の肉体からは微弱なエネルギーが放たれている。それを感知することで敵の戦闘力や位置を把握できるが、これにはかなり長期の訓練が必要である。
(自然戦士になって二週間たってないのに、そんな高騰テクニックが使えるなんて……一体ユースは何者なの?)
「ああ~~~~~~~~~~!!!」突然、ユースが声を上げた。
「ど、どうしたのユース!?」
「僕、パスポート持ってない!!」「自然戦士はいらないのよ!!」
一方、現「氷結王」ヘンリー対元「氷結王」ショーン+二人の部下。
三人の自然戦士の剣技を、ヘンリーは剣も使わずに氷を生成して防いだり、刃をギリギリでかわしていたりした。
「ショーンよ、お前はあれから十年間、何度も私に闘いを挑んで負けたよな?」
「そうだ!! 今日こそ決着をつけてやる!」
「一対一の闘いでは負けるからこの様な卑怯な手を使うと言うのか!?」
「知ったことか!! もはやお前を殺せればそれでいい!!」
そんなやり取りをしながらショーン側は三人分の刃を目にもとまらぬスピードで振るい、ヘンリーは刃を防いでいた。
しかし、しだいにショーン側に変化が見られ始めた。
「ハァ……ハァ……!」「どうした? 息が上がっているぞ?」
「何の……これしき!」ショーンが顔を上げると、取り巻きの二人はすでに凍らされていた。
「な、何~~~~~!!!?」「悪いな。隙ができていたからつい。」
実はこれ、双方のパラメーターの振り分け方が関係していた。
ショーン達はパラメーターを
・持久力10
・攻撃力30
・防御力10
・想像力10
・抵抗力10
・機動力30
にしていたが、ヘンリーは
・持久力30
・攻撃力10
・防御力30
・想像力10
・抵抗力10
・機動力10
にしていた。
互いに正反対の能力にパラメーターを振っているので、うまくかみ合っているようにも見えるが、自然戦士にも「個人差」が存在する。
ヘンリーの得意な戦法は、このように相手を息切れさせるまで追い込んで、隙ができたところを自慢の早撃ちで仕留めるというものだった。
氷結戦士はこのような準長期戦を好む戦士が多い。ショーンもそのうちの一人だった。
しかし、何年もヘンリーに負け続けたことによって、ショーンの心には焦りが生まれ始めた。
そのために判断が鈍り、慣れない短期決戦を挑んでしまった。
ヘンリーは勝ち誇った顔で、空中でぐったりしているショーンの頭に銃突きつけた。
「ヘンリーよ。お前は私を恨んでいるかもしれんが、私はお前を高く評価している。おとなしく罪を償って、ブリデラントのために力を尽くさないか?」
「……なんだと?」ショーンの目が変わった。
「この俺に、お前のもとにつけと言うのか!? 俺をそんな屈辱的な目に、二度も会わせるというのか!!?」
ショーンの剣の柄に埋め込まれているダイヤモンドが光りだした。
「なっ……ショーン! やめろ! 今のお前にはそれは無理だ!!体がもたない!!!」
「知ったことか………お前を道連れにできるのなら、それでいい!!!」
ショーンは剣を大きく振りかざした。
「氷結剣……”奥義”! 氷河裁断《フローズンインパクト》!!!」
氷結剣から紐状の氷が飛び出し、ヘンリーの体に巻き付いた。
氷の紐はゴムひものように縮んでいき、それに合わせてヘンリーも引っ張られた。
「死ねえええええええええええええええ!!!!!」氷で覆われた剣がヘンリーの首にたたきつけられた。
そのまま刃は平行な軌道を描いて、首の反対側まで達した。
「はは……フハハハハハハハハハハハハハーーーー!!! ついにヘンリーを打ち取ったぞ――――!!!!」ショーンの高らかな笑い声が響きわたる。
ああ、世界最強の氷結戦士と呼ばれたヘンリーは、こんなにもあっけなく倒されてしまった。
……いや、そんな残酷なエンディングはこの物語には似合わない。
「何のことだ?」
突然ヘンリーの声が聞こえた。
ショーンはびっくりして我に返った。
すると、そこにあったはずのヘンリーの死体が無いことに気づいた。
「な………! 死体は? 死体はいったいどこに」と言いかけたところでショーンは言葉を発することができなくなった。
首の後ろから突然体内に侵入してきた氷が、ショーンの気管をふさいだからである。
ただ痛いだけではない。傷口が氷でふさがれているので、凍傷にかかったような激痛が走る。
「自然戦士の究極の技は、相手を気付つける技ではない。『自然体』は、全身の力を限りなくゼロにすることで、身体そのものを霊法に変化させ、敵の攻撃を完全に受け流すことができるのだ。」
どこからともなく表れたヘンリーがそう説明するが、もはやショーンに音を聞く能力は残っていなかった。
高度八千メートルから落下していくショーンを見届けながら、ヘンリーは言った。
「ショーンよ、十年前、急激に実力が反転した理由。それは、私が肩の力を抜くことを覚えたからだ。」
本国に戻ったヘンリーは、ちょうど夕食時だったため、ファインガム宮殿でユースを素晴らしいパーティーでもてなした。
「国賓みたいな扱いしなくていいって言ってるじゃないですか……」軍服姿のユースは少しすね気味だった。
「いいじゃない! この私の命を三度も救ったのよ!!」隣の席にいるドレス姿のエリーが答えた。
「今回の件で、お父様はあなたに騎士《ナイト》の称号を与えるそうよ。サー・ユース。」「サーって呼ばないでよ! それってローマンドじゃ貴族じゃないか!」
「まあまあ、せっかくのパーティーなんだから、肩の力を抜いて楽しみましょうよ! ほら、ダンスが始まるわ! 一緒に踊りましょう!!」
「え!? 僕はダンス知らないよ!」「私が教えてあげるから、さあおいで!!」
エリーに手を引かれて、ユースはホールの中央に移動した。
「いい? まずこうやって手を組んで……ほら、もっと腰を近づけて!」音楽が流れだした。
エリーにリードされながら、クローズドスタイルでブルースのステップを踏む。
「なあんだ、意外とできるじゃない。」
「いや他の人真似してるだけだから……」
「……ねえ、ユース。」
「何?」
「このままブリデラントに住んでもいいのよ?」
「いやダメだよ! 僕は皇帝に仕える太陽戦士だ。」
「じゃあ、またブリデラントに来てくれる?」
「それはもちろん。招待状が来ればね。」ユースはあくまでも控え目な姿勢を取った。
「それじゃあ、念のために約束の印をつけてもらうわ。」
「印をつける? 何を言ってるの?」
「ほら! 目を閉じて!」エリーの気迫に押され、ユースは一度立ち止まって目を閉じた。
「もう、ユースったら! いつになったら帰ってくるのよ!」窓ガラスが全部なくなった空港で(第十六話参照)ナーサは律儀にも待っていた。
空の向こうに、自然戦士が飛ぶ影が見えた。
「あ、やっと帰ってきた! ユースー!!」ナーサが手を振った。
ユースは壊れた窓から空港に入ってきた。
「心配したんだからね!いったいどこに行って……え、ユースそれマジ?」
ナーサの目が何か気持ち悪い物を見る目になった。
「頼むからそんな目で見ないでよ……」ユースの頬には紅色の口紅がついていた。
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