完結♡離縁を覚悟したら溺愛されました~傷心の魔法医が旦那様の一途な愛に気づくまで~

二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中

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39.おまけの小話・初夜の二人〈上〉

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 クローディアが待つ寝室に向かいながら、私は内心浮き足立っていた。

 なにせずっと憧れていた女性と初めて迎える夜だ。多少の不安はあれど、待ちきれない気持ちの方がはるかに強い。

 幸い、‘‘鉄仮面’’であるため口元がにやけることはない。この顔に感謝したのは、おそらく人生で初めてのことだった。

 ……とりあえず、舞い上がって挙動不審にならぬようにだけ気をつけないとな。

 自らにそう言い聞かせてから、私は寝室の扉をノックした。すると、クローディアはすぐにドアを開けてくれた。

「入ってよろしいですか?」

「……っどうぞ、お入りください」

 クローディアはオフホワイトの丈の長いナイトドレスを着ており、入浴後のため首元はほんのり赤みを帯びていた。そんな彼女の姿を見て、気持ちは高まる一方だった。

 しかし、そんな私とは対照的にクローディアの表情は浮かないものであった。彼女と並んでベッドに腰掛けてから、私は口を開いた。

「招待客も多くて、疲れたでしょう」

 自分が言えたことではないが、結婚式に招待した軍の上司や同僚は、強面揃いである。そんな人々と歓談するとなると、並の人間なら気疲れして当然だ。

「今日はこのまま、お休みになりますか?」

 この日を楽しみにしていたとはいえ、クローディアに無理をさせる気はなかった。だからあえて、私な何もしないという選択肢を先に提示したのである。

 隣に腰かけているとはいえ、クローディアと拳一つ分離れて座っているので互いの脚が触れ合うことはない。その距離が、自分にはやたら遠くに感じられた。

「いえ……ただ、ラズヴァン様。寝る前にひとつだけ、お話ししてよろしいですか?」

「ええ、もちろん」

「私は、なるべく貴方にご迷惑をかけたくないと考えております」

 クローディアは、ナイトドレスの裾を握りしめながら言った。

「私に不妊の疑いがあることは、すでにご存知かと思います。恥ずかしながら、それは事実です。貴方にお相手いただいたとしても、妊娠できるかは分かりません」

「……」

「ならばいっそ養子を迎えるですとか、確実な方法を取るべきかと思うのですが……いかがでしょうか?」

 それは、遠回しに情事を拒絶する言葉であった。クローディアはそこまで言って、俯いてしまった。

 ……さて、どうしたものか。

 何も言わぬまま、私は思考を巡らした。

 もしクローディアが自分とことに及びたくないならば、彼女の気持ちは一旦受け入れざるを得ない。

 しかし何か別の理由があるならば、まだ望みはあるはずだ。とりあえず、私は会話の中で解決の糸口を探すことにした。

「たしかに、手を尽くしたうえで子ができなかったならば、他の策を講じるべきでしょう。しかし、手を尽くすという前段を飛ばしてまで、急ぐ必要はないことです。違いますか?」

「……っ、私は……貴方に満足いただける様な女ではございませんので……!」

 クローディアの頑なな物言いに、つい目を見開く。しかし私は、何となく彼女が言わんとせんことを理解した。

 おそらくクローディアは、女としての価値に自信が持てないのだろう。

 アルベルトとの婚約解消は、彼がクローディアの面子を潰すという最悪の形で成立したものだ。そんな強引なやり口をしたとなれば、アルベルトが彼女を大切にしていたとは到底思えない。となると、彼女がそんな考えに陥ることも想像に難くなかった。

「わ、私よりも、素敵な女性は世間に数多おられます……っ、もしラズヴァン様がどなたかと恋仲になっても、私は目を瞑るつもりです……っ」

 クローディアの言葉を聞いていると、自然と彼女を放って歓談に興じていたアルベルトの姿が思い浮かぶ。そんなバカ王弟に対して、私は心の中で思いっきり舌打ちをした。

「クローディア様。失礼ですが、私は貴女以外の女性と関係を持つ気はございません。ただ……‘‘最適な方法’’を一度も試さずに諦められるほど、聞き分けが良くはないのです」

 「好きな女とセックスしたくない訳あるか!」という下世話な本音をひた隠しにして、私は言った。

 このひと言は、ある意味賭けであった。もしクローディアが自分のことを嫌がっているならば、彼女は全力で拒否してくるだろう。しかし不思議と、それ以外の反応が得られるような気がしたのだ。

 そして私は、どうやら賭けに勝利したらしい。クローディアの顔はだんだん赤くなっていき、ついに耳まで赤く染まったのだった。

「ラズヴァン様は……嫌ではないのですか?」

 様子を伺うように、クローディアは横目で私を見つめてきた。

「もちろんです。嫌がる理由が、どこにあるのです?」

「……っ、でしたら……是非に」

 クローディアは小さく頷いたのだった。
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