4 / 13
序章 日常編
黒と巫女様
しおりを挟む
side黒
天月様と初めてお会いしたのは十二の夏。天月様は齢六歳の時、術師八家の一つである九童の当主、翁が引き合わせてくれた。彼に感謝はないけれど、それだけは感謝してもいい。
翁は私と天月様の、出会うべき形を整えてくれた。その時はまだ、早乙女巫女院の天月でなく、ただの無力――というには力を持った少女との出会い。
もちろん、まだ巫女を守る存在、巫女守すらいない天月様への依頼ですらなかった。それでも私は気高い天月様に惹かれ、気付いた時には忠誠を誓っていたのだった。
真っすぐに私を見つめる、印象的な瞳――私はそれに、人として、生き物として。惚れてしまったのである。
私の名前は黒猫。もちろん本名ではない。
術師八家の末席に存在する東若の生まれであり、天月様の巫女守になる時に本名は預けている。その時に頂いたのが黒猫という名前だった。その日から私は、天月様の黒猫として存在している。
勘違いしないで貰いたいが、私が天月様に感じているのは恋なんて甘いものでも曖昧なものではない。私は例え天月様に裏切られたとしても天月様を恨むことはないだろうし、勿論後悔することもない。
私にとっては天月様が全てでそこに関与する事実さえ意味がないものなのである。それは異常とも盲目的だとも言われるが、私にとっては純粋な忠誠心。私が天月様に惚れ込んでいるというだけなのだ。
天月様が所属される早乙女巫女院。それは日本において最高権力者という言葉と同等の意味を持つ。
平安の世で“鬼”や“魍魎”と呼ばれたもの。それは確かに、現代日本においても存在している。その発生の機序は分かっていないが、人の感情に大きく左右されていることだけは間違いがない。
見た目は言い伝えの通り、犬畜生の姿であったり人型に牛のような角が生えていたりと様々であるが、総じて人間を襲うように仕組まれており、数多もの人間を喰らい、取り込む性質を持っている。
その存在――私たちが禍物と呼ぶそれらを倒すために存在している術師八家。昔でいう陰陽師のような存在を束ねる組織。それが早乙女巫女院であり、対をなす存在早乙女覡院の仕事である。
そして天月様は巫女院の実質ナンバーワンの実力の持ち主で、肩書的にはナンバーツーである。天月様が正規のお生まれであれば、今頃早乙女巫女院のトップである月読を名乗っているのは天月様であったと確信している。
初めてであった時から、約八年。天月様は十四歳になられた。
昔のあどけない姿も愛らしかったが、今は一人の女性として立派な姿をされている。巫女守でしか知らない笑顔は勿論、その高貴な雰囲気はクールビューティーと呼ぶに相応しい。
常に学生服であるセーラー服を着ているが、それは天月様にとって巫女服の代わりなのであろう。黒の制服は、確かに天月様によく似合ってらっしゃる。
何故セーラー服を好むのかと尋ねたことがあったが、天月様は「だってその方が都合がいいでしょ」と仰った。誰かに何かを聞かれたときに、言い訳の材料になると考えておられるのだろう。天月様は実に聡明でいらっしゃる。
私は天月様に一生お仕えするのが今の夢だった。
◇
初めまして。この度は拙い作品に触れてくださりありがとうございます。
天月たちのお話は、数年前から温めていたお話です。まだ私の能力では十二分に発揮できないとは思いますが、彼ら、彼女らに負けないよう定期的に更新したいと思っています。
ほんの一瞬でも、皆さまの楽しみになれるよう日々邁進させて頂きます。
今後ともよろしくお願いします。
天月様と初めてお会いしたのは十二の夏。天月様は齢六歳の時、術師八家の一つである九童の当主、翁が引き合わせてくれた。彼に感謝はないけれど、それだけは感謝してもいい。
翁は私と天月様の、出会うべき形を整えてくれた。その時はまだ、早乙女巫女院の天月でなく、ただの無力――というには力を持った少女との出会い。
もちろん、まだ巫女を守る存在、巫女守すらいない天月様への依頼ですらなかった。それでも私は気高い天月様に惹かれ、気付いた時には忠誠を誓っていたのだった。
真っすぐに私を見つめる、印象的な瞳――私はそれに、人として、生き物として。惚れてしまったのである。
私の名前は黒猫。もちろん本名ではない。
術師八家の末席に存在する東若の生まれであり、天月様の巫女守になる時に本名は預けている。その時に頂いたのが黒猫という名前だった。その日から私は、天月様の黒猫として存在している。
勘違いしないで貰いたいが、私が天月様に感じているのは恋なんて甘いものでも曖昧なものではない。私は例え天月様に裏切られたとしても天月様を恨むことはないだろうし、勿論後悔することもない。
私にとっては天月様が全てでそこに関与する事実さえ意味がないものなのである。それは異常とも盲目的だとも言われるが、私にとっては純粋な忠誠心。私が天月様に惚れ込んでいるというだけなのだ。
天月様が所属される早乙女巫女院。それは日本において最高権力者という言葉と同等の意味を持つ。
平安の世で“鬼”や“魍魎”と呼ばれたもの。それは確かに、現代日本においても存在している。その発生の機序は分かっていないが、人の感情に大きく左右されていることだけは間違いがない。
見た目は言い伝えの通り、犬畜生の姿であったり人型に牛のような角が生えていたりと様々であるが、総じて人間を襲うように仕組まれており、数多もの人間を喰らい、取り込む性質を持っている。
その存在――私たちが禍物と呼ぶそれらを倒すために存在している術師八家。昔でいう陰陽師のような存在を束ねる組織。それが早乙女巫女院であり、対をなす存在早乙女覡院の仕事である。
そして天月様は巫女院の実質ナンバーワンの実力の持ち主で、肩書的にはナンバーツーである。天月様が正規のお生まれであれば、今頃早乙女巫女院のトップである月読を名乗っているのは天月様であったと確信している。
初めてであった時から、約八年。天月様は十四歳になられた。
昔のあどけない姿も愛らしかったが、今は一人の女性として立派な姿をされている。巫女守でしか知らない笑顔は勿論、その高貴な雰囲気はクールビューティーと呼ぶに相応しい。
常に学生服であるセーラー服を着ているが、それは天月様にとって巫女服の代わりなのであろう。黒の制服は、確かに天月様によく似合ってらっしゃる。
何故セーラー服を好むのかと尋ねたことがあったが、天月様は「だってその方が都合がいいでしょ」と仰った。誰かに何かを聞かれたときに、言い訳の材料になると考えておられるのだろう。天月様は実に聡明でいらっしゃる。
私は天月様に一生お仕えするのが今の夢だった。
◇
初めまして。この度は拙い作品に触れてくださりありがとうございます。
天月たちのお話は、数年前から温めていたお話です。まだ私の能力では十二分に発揮できないとは思いますが、彼ら、彼女らに負けないよう定期的に更新したいと思っています。
ほんの一瞬でも、皆さまの楽しみになれるよう日々邁進させて頂きます。
今後ともよろしくお願いします。
0
あなたにおすすめの小説
使い捨て聖女の反乱
あんど もあ
ファンタジー
聖女のアネットは、王子の婚約者となり、瘴気の浄化に忙しい日々だ。 やっと浄化を終えると、案の定アネットは聖女の地位をはく奪されて王都から出ていくよう命じられるが…。 ※タイトルが大げさですがコメディです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
聖女じゃない私の奇跡
あんど もあ
ファンタジー
田舎の農家に生まれた平民のクレアは、少しだけ聖魔法が使える。あくまでもほんの少し。
だが、その魔法で蝗害を防いだ事から「聖女ではないか」と王都から調査が来ることに。
「私は聖女じゃありません!」と言っても聞いてもらえず…。
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。
葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。
だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。
突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。
これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる