可愛げのないチート巫女とその下僕たち

鵺紅深

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序章 日常編

黒と巫女様

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side黒

 天月様と初めてお会いしたのは十二の夏。天月様はよわい六歳の時、術師八家の一つである九童くどうの当主、おきなが引き合わせてくれた。彼に感謝はないけれど、それだけは感謝してもいい。
 翁は私と天月様の、出会うべき形を整えてくれた。その時はまだ、早乙女巫女院さおとめみこいんの天月でなく、ただの無力――というには力を持った少女との出会い。
もちろん、まだ巫女を守る存在、巫女守みこもりすらいない天月様への依頼ですらなかった。それでも私は気高い天月様に惹かれ、気付いた時には忠誠を誓っていたのだった。
 真っすぐに私を見つめる、印象的な瞳――私はそれに、人として、生き物として。惚れてしまったのである。

 私の名前は黒猫くろねこ。もちろん本名ではない。
術師八家の末席に存在する東若ひがしわこうの生まれであり、天月様の巫女守になる時に本名は預けている。その時に頂いたのが黒猫という名前だった。その日から私は、天月様の黒猫として存在している。
 勘違いしないで貰いたいが、私が天月様に感じているのは恋なんて甘いものでも曖昧なものではない。私は例え天月様に裏切られたとしても天月様を恨むことはないだろうし、勿論後悔することもない。
私にとっては天月様が全てでそこに関与する事実さえ意味がないものなのである。それは異常とも盲目的だとも言われるが、私にとっては純粋な忠誠心。私が天月様に惚れ込んでいるというだけなのだ。
 天月様が所属される早乙女巫女院さおとめみこいん。それは日本において最高権力者という言葉と同等の意味を持つ。

 平安の世で“鬼”や“魍魎もうりょう”と呼ばれたもの。それは確かに、現代日本においても存在している。その発生の機序は分かっていないが、人の感情に大きく左右されていることだけは間違いがない。
見た目は言い伝えの通り、犬畜生の姿であったり人型に牛のような角が生えていたりと様々であるが、総じて人間を襲うように仕組まれており、数多もの人間を喰らい、取り込む性質を持っている。
その存在――私たちが禍物まがものと呼ぶそれらを倒すために存在している術師八家。昔でいう陰陽師のような存在を束ねる組織。それが早乙女巫女院であり、対をなす存在早乙女覡院さおとめかんなぎいんの仕事である。
 そして天月様は巫女院の実質ナンバーワンの実力の持ち主で、肩書的にはナンバーツーである。天月様が正規のお生まれであれば、今頃早乙女巫女院のトップである月読つくよみを名乗っているのは天月様であったと確信している。


 初めてであった時から、約八年。天月様は十四歳になられた。
昔のあどけない姿も愛らしかったが、今は一人の女性として立派な姿をされている。巫女守でしか知らない笑顔は勿論、その高貴な雰囲気はクールビューティーと呼ぶに相応しい。
常に学生服であるセーラー服を着ているが、それは天月様にとって巫女服の代わりなのであろう。黒の制服は、確かに天月様によく似合ってらっしゃる。
何故セーラー服を好むのかと尋ねたことがあったが、天月様は「だってその方が都合がいいでしょ」と仰った。誰かに何かを聞かれたときに、言い訳の材料になると考えておられるのだろう。天月様は実に聡明でいらっしゃる。
 私は天月様に一生お仕えするのが今の夢だった。



 
 初めまして。この度は拙い作品に触れてくださりありがとうございます。
 天月たちのお話は、数年前から温めていたお話です。まだ私の能力では十二分に発揮できないとは思いますが、彼ら、彼女らに負けないよう定期的に更新したいと思っています。

 ほんの一瞬でも、皆さまの楽しみになれるよう日々邁進させて頂きます。
 今後ともよろしくお願いします。
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