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第18話 忍者、演習に挑む
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着替えが終り、斬九郎が再び演習場へ戻ってくると、
「聞いたぜ。おまえあのルシル・カートランドとやり合うんだってな!」
目の下にくまを作ったネイジェフが真っ先に話しかけてきた。
「あくまでも稽古の一環でござるが。……寝不足でござるか?」
「まあな。課題が山積みで――て、俺のことはどうでもいいんだ! 油断するなよ。あいつは、ルシル・カートランドは……強ぇぞ。学生警邏団の学年団長に任命されているってことは、副団長のリーナより総合的な能力は上だと学園の教師陣が評価しているってわけだからな。女っぽい顔しているからって油断すんなよ」
ネイジェフが斬九郎へアドバイスを送っていると、
「ネイジェフ・ローレンツ。僕は紛れもない、れっきとした男だ。疑うなら、彼と戦う前に君と一戦交えようか? 僕が男だということをその身に教えてあげるよ?」
「勘弁してくれ。こちとら徹夜明けなんだ。悪かったよ。あんたは立派な男だ」
「ふん」
不機嫌になり、腕を組むルシル。
どうやら、女っぽいという表現が気に障ったようだ。
「見たろ? あいつは女っぽい容姿にちょいと劣等感があるみたいなんだ。くれぐれもそれをネタに挑発するなよ」
「助言感謝致す」
「今回ばかりはあんたを応援してあげるわ。あいつの顔面に強烈な一撃をぶち込んでやりなさい」
「……もう少し、穏便に勝負するでござるよ」
いつの間にかそばにいたリーナからも物騒な激励を受け、斬九郎は歩みを進める。
不敵な笑みを浮かべるルシルは癖なのか、前髪をササッとかき上げて、
「準備は整ったようだね。じゃあ、はじめようか」
「ああ」
特にこれといった合図もなく、ふたりは同時に構えた。
それからしばらく重い沈黙が流れる。
「さて、学年代表と異世界人……勝つのはどっちだろうね?」
ネイジェフがニヤニヤしながらリーナにたずねる。
他の男子生徒も、斬九郎と共闘の経験があるリーナの意見に興味津々だ。
「ルシル・カートランドはおまえとの仲が最悪にギクシャクしてなかったらいいパートナーになり得る資質を持った本物の天才だ。さすがのザンクローも苦戦は必至かね」
「苦戦? 冗談でしょ?」
リーナはネイジェフの分析を鼻で笑った。
「もし、ルシル・カートランドが魔法を使っていたら、ザンクローに勝ち目はなかったでしょうけど、体術限定勝負を挑んだ時点であいつの負けは確定よ。体術でザンクローが負けるどころか、苦戦する姿なんて微塵も想像できないわ」
「…………」
ネイジェフを含む男子生徒はポカンと口を開けて言葉を失った。
「? 何よ?」
「い、いや……まさかおまえがザンクローをそこまで評価しているとは思わなくってよ。てっきり、『どっちも再起不能になればいいのに』くらいは言うものだと」
「!?」
リーナ、本日何度目かの赤面。
「はっはっはっ! おまえも変わったな、リーナ。ほれ、愛しの彼氏が負けないようにしっかりと愛情こもった声援を送ってやれ」
「違いますから!」
外野が大騒ぎをしている中、対決する両者の間に流れる緊張は頂点に達していた。
「いくぞ!」
先に仕掛けたのはルシルの方だった。
強烈な蹴りの嵐が斬九郎を襲う。
(速い!?)
その蹴りのスピードは、斬九郎の想定を大きく上回っていた。それでも、冷静に一発一発を捌きつつ、反撃のチャンスを静かに窺う。
「おお……」
「すげぇ……」
戦況を見守る男子生徒たちの口は自然と開いていた。それほど、自分たちが普段している演習とは質の違う戦いが繰り広げられているということだ。
だが、斬九郎はたしかに感じ取っていた。
ルシル・カートランドは――まだ本気を出していない。
こちらの力量を試している。
激しい連撃が一旦止まり、二人は距離を取って呼吸を整える。
「さすがだね。この程度は余裕についてこられるか」
「小手調べというわけか……」
「そういうことさ――だが、次は止められるかな?」
再び、ルシルが突っ込んでくる。
小手調べだったというだけあって、今度の攻撃は速度も強さも段違いだった。
(やるな。挑発的な態度を取るだけはある)
激しい蹴りや拳打の応酬を受けながらも、斬九郎は冷静に相手の力量を見極めていた。
ひとつひとつの動作に無駄がない。最低限の動きで最良の結果を得るための行動がしっかりできている。基本に忠実。しかし、それだけにとどまらない。高い潜在能力を秘めた戦い方と評価できる。
しかし――所詮は鍛錬のみで構築された技の数々とも言えた。
この世界に来る直前まで戦っていた織田の忍たちとも遜色ないと言って過言ではないのだが、決定的に欠けているものがある。
それは《殺意》だ。
相手を絶対に殺すというドス黒い感情のない攻撃では、多少威力が上がって程度で斬九郎を動揺させることはできない。何せ、斬九郎は体術において自分よりもずっと強くて速い師匠の倉賀滝丸とずっと修行を積んでいたのだ。少なくとも、その滝丸を越える力と速さがなければ、斬九郎に打撃技は通じないだろう。
「くっ!」
仕掛けている数はルシルの方が多いので、はたから見ていればルシルが優勢に映る。だが、実際のルシルの心境としては焦りの色が濃かった。
いくら必死に攻撃を浴びせても、斬九郎はそれらを難なくいなしてしまう。すでにルシルの速さに慣れてしまったので、ここから一発を入れるのは困難だろう。
一方、ルシルの動きを見切った斬九郎は攻勢に移る。
(少し変化をつけてみるか)
踏ん張ってもう一発、今度は中段に蹴りを入れようとした、その時だった。
「うっ!」
足元がぬかるんでおり、斬九郎は体勢を崩してしまう。そのせいで、ほんの一瞬だけ攻撃が緩んだ。その隙をついてルシルが一気に前へ出る。
「はっ!」
鳩尾を狙った正拳突き。
(もらった!)
寸分の狂いなく、完璧に捉えたと確信したルシルであったが、その拳は虚しく空を貫いた。
その隙は撒き餌。
体勢を崩したように見せかけて、ルシルに反撃させようとする斬九郎の策だった。狙い通り、隙ができたと思ったルシルは決着をつけようと大振りな攻撃を仕掛けた。
その結果、逆に斬九郎に対して大きな隙を作ってしまったのである。
(し、しまった!)
油断をしていたわけじゃない。
目の前に転がってきた勝利に目を奪われ、安易に攻撃を仕掛けてしまった。これもまた実戦経験の差によるものだ。
(これで終わりだ!)
斬九郎は羽交い絞めにしてルシルの動きを封じようとする。
ルシルの背後に回り込み、組み伏せた。
「ま、まいったよ、ザンクロー君」
ゆっくりと、ルシルが斬九郎へと向き直る。
「自ら隙を作って僕を誘い出したということは、僕の攻撃をかわせる自信があったということか」
「ああ……だが、お主の動きも見事であった。特に最初の連撃はかわすので精いっぱいでござった。拙者が勝てたのは紙一重でござるよ」
「ふふ、君にそう言ってもらえると光栄だよ。僕もまだまだ鍛錬が足りない――それを分からせてくれた君には感謝しないと」
ルシルはそっと右手を差し出す――握手を求めてきたのだ。
斬九郎は躊躇いを見せず、すぐにその手を握り返し、グータッチも決める。
「この世界の風習もバッチリだね」
「ネイジェフに教えてもらったでござる」
「ははは、彼らしいね。じゃあ、僕はこれで。いつか体術で君に勝てるよう、これからもっと鍛錬を積まないと」
ルシルは張り切って他の生徒と
(あの向上心……次に戦う時は、先ほどよりも危うい状況になるかもしれぬ。拙者もうかうかしれいられぬな)
もし、ルシルが斬九郎の策に乗ってこなかったら勝負はわからなかった。そもそも、向こうには魔法という切り札がある。魔獣と戦った時のように、忍道具を駆使してどこまで対抗できるか――それはそれで気になるところであった。
対魔法への案を脳内で練っていると、
「やったな、ザンクロー!」
「最近調子に乗っていたから、ルシル・カートランドにはいい薬だわ」
ネイジェフとリーナだった。
「随分とルシル・カートランドに突っかかるのだな」
「学年代表でもある学年警邏団長の座を奪われたから拗ねてんだよ」
「違うわよ! ……でも、強さなら私の方が絶対上なのに……なんであいつが学年代表なのよ……」
リーナはルシルが学年代表に選出されたことに納得していないようだ。
「学年代表は総合的な能力で判断するからな。おまえの方が強いっていうのも、おまえの持つ炎の力はカートランドの得意とする魔法と相性が良くないってくらいだろ? それにあいつは自分の魔法をしっかり制御できるし、おまえくらい強力な炎系の魔法を操れないとあいつを倒すのは至難の業だ。それに、あいつは冷静に物事を分析できる。その辺の力がリーナ・セルディオには足りてねぇって判断だったじゃねぇか」
「それはそうだけど……」
でもやっぱり腑に落ちないといった感じにリーナは唇を尖らせるが、ネイジェフの話を聞く限りでは妥当な判断だったと斬九郎は思った。
三人で話していると、そこへ、
「見事な手並みだったぞ」
フィッツが肩を叩く。
「他の連中にもいい見本になったよ。そうだよな、おまえら」
呼びかけに対し、「はい!」と勇ましい返事。
斬九郎が体術であのルシル・カートランドを追い詰め、勝利したという事実が、他の生徒たちの励みになったのは間違いないようだった。
「聞いたぜ。おまえあのルシル・カートランドとやり合うんだってな!」
目の下にくまを作ったネイジェフが真っ先に話しかけてきた。
「あくまでも稽古の一環でござるが。……寝不足でござるか?」
「まあな。課題が山積みで――て、俺のことはどうでもいいんだ! 油断するなよ。あいつは、ルシル・カートランドは……強ぇぞ。学生警邏団の学年団長に任命されているってことは、副団長のリーナより総合的な能力は上だと学園の教師陣が評価しているってわけだからな。女っぽい顔しているからって油断すんなよ」
ネイジェフが斬九郎へアドバイスを送っていると、
「ネイジェフ・ローレンツ。僕は紛れもない、れっきとした男だ。疑うなら、彼と戦う前に君と一戦交えようか? 僕が男だということをその身に教えてあげるよ?」
「勘弁してくれ。こちとら徹夜明けなんだ。悪かったよ。あんたは立派な男だ」
「ふん」
不機嫌になり、腕を組むルシル。
どうやら、女っぽいという表現が気に障ったようだ。
「見たろ? あいつは女っぽい容姿にちょいと劣等感があるみたいなんだ。くれぐれもそれをネタに挑発するなよ」
「助言感謝致す」
「今回ばかりはあんたを応援してあげるわ。あいつの顔面に強烈な一撃をぶち込んでやりなさい」
「……もう少し、穏便に勝負するでござるよ」
いつの間にかそばにいたリーナからも物騒な激励を受け、斬九郎は歩みを進める。
不敵な笑みを浮かべるルシルは癖なのか、前髪をササッとかき上げて、
「準備は整ったようだね。じゃあ、はじめようか」
「ああ」
特にこれといった合図もなく、ふたりは同時に構えた。
それからしばらく重い沈黙が流れる。
「さて、学年代表と異世界人……勝つのはどっちだろうね?」
ネイジェフがニヤニヤしながらリーナにたずねる。
他の男子生徒も、斬九郎と共闘の経験があるリーナの意見に興味津々だ。
「ルシル・カートランドはおまえとの仲が最悪にギクシャクしてなかったらいいパートナーになり得る資質を持った本物の天才だ。さすがのザンクローも苦戦は必至かね」
「苦戦? 冗談でしょ?」
リーナはネイジェフの分析を鼻で笑った。
「もし、ルシル・カートランドが魔法を使っていたら、ザンクローに勝ち目はなかったでしょうけど、体術限定勝負を挑んだ時点であいつの負けは確定よ。体術でザンクローが負けるどころか、苦戦する姿なんて微塵も想像できないわ」
「…………」
ネイジェフを含む男子生徒はポカンと口を開けて言葉を失った。
「? 何よ?」
「い、いや……まさかおまえがザンクローをそこまで評価しているとは思わなくってよ。てっきり、『どっちも再起不能になればいいのに』くらいは言うものだと」
「!?」
リーナ、本日何度目かの赤面。
「はっはっはっ! おまえも変わったな、リーナ。ほれ、愛しの彼氏が負けないようにしっかりと愛情こもった声援を送ってやれ」
「違いますから!」
外野が大騒ぎをしている中、対決する両者の間に流れる緊張は頂点に達していた。
「いくぞ!」
先に仕掛けたのはルシルの方だった。
強烈な蹴りの嵐が斬九郎を襲う。
(速い!?)
その蹴りのスピードは、斬九郎の想定を大きく上回っていた。それでも、冷静に一発一発を捌きつつ、反撃のチャンスを静かに窺う。
「おお……」
「すげぇ……」
戦況を見守る男子生徒たちの口は自然と開いていた。それほど、自分たちが普段している演習とは質の違う戦いが繰り広げられているということだ。
だが、斬九郎はたしかに感じ取っていた。
ルシル・カートランドは――まだ本気を出していない。
こちらの力量を試している。
激しい連撃が一旦止まり、二人は距離を取って呼吸を整える。
「さすがだね。この程度は余裕についてこられるか」
「小手調べというわけか……」
「そういうことさ――だが、次は止められるかな?」
再び、ルシルが突っ込んでくる。
小手調べだったというだけあって、今度の攻撃は速度も強さも段違いだった。
(やるな。挑発的な態度を取るだけはある)
激しい蹴りや拳打の応酬を受けながらも、斬九郎は冷静に相手の力量を見極めていた。
ひとつひとつの動作に無駄がない。最低限の動きで最良の結果を得るための行動がしっかりできている。基本に忠実。しかし、それだけにとどまらない。高い潜在能力を秘めた戦い方と評価できる。
しかし――所詮は鍛錬のみで構築された技の数々とも言えた。
この世界に来る直前まで戦っていた織田の忍たちとも遜色ないと言って過言ではないのだが、決定的に欠けているものがある。
それは《殺意》だ。
相手を絶対に殺すというドス黒い感情のない攻撃では、多少威力が上がって程度で斬九郎を動揺させることはできない。何せ、斬九郎は体術において自分よりもずっと強くて速い師匠の倉賀滝丸とずっと修行を積んでいたのだ。少なくとも、その滝丸を越える力と速さがなければ、斬九郎に打撃技は通じないだろう。
「くっ!」
仕掛けている数はルシルの方が多いので、はたから見ていればルシルが優勢に映る。だが、実際のルシルの心境としては焦りの色が濃かった。
いくら必死に攻撃を浴びせても、斬九郎はそれらを難なくいなしてしまう。すでにルシルの速さに慣れてしまったので、ここから一発を入れるのは困難だろう。
一方、ルシルの動きを見切った斬九郎は攻勢に移る。
(少し変化をつけてみるか)
踏ん張ってもう一発、今度は中段に蹴りを入れようとした、その時だった。
「うっ!」
足元がぬかるんでおり、斬九郎は体勢を崩してしまう。そのせいで、ほんの一瞬だけ攻撃が緩んだ。その隙をついてルシルが一気に前へ出る。
「はっ!」
鳩尾を狙った正拳突き。
(もらった!)
寸分の狂いなく、完璧に捉えたと確信したルシルであったが、その拳は虚しく空を貫いた。
その隙は撒き餌。
体勢を崩したように見せかけて、ルシルに反撃させようとする斬九郎の策だった。狙い通り、隙ができたと思ったルシルは決着をつけようと大振りな攻撃を仕掛けた。
その結果、逆に斬九郎に対して大きな隙を作ってしまったのである。
(し、しまった!)
油断をしていたわけじゃない。
目の前に転がってきた勝利に目を奪われ、安易に攻撃を仕掛けてしまった。これもまた実戦経験の差によるものだ。
(これで終わりだ!)
斬九郎は羽交い絞めにしてルシルの動きを封じようとする。
ルシルの背後に回り込み、組み伏せた。
「ま、まいったよ、ザンクロー君」
ゆっくりと、ルシルが斬九郎へと向き直る。
「自ら隙を作って僕を誘い出したということは、僕の攻撃をかわせる自信があったということか」
「ああ……だが、お主の動きも見事であった。特に最初の連撃はかわすので精いっぱいでござった。拙者が勝てたのは紙一重でござるよ」
「ふふ、君にそう言ってもらえると光栄だよ。僕もまだまだ鍛錬が足りない――それを分からせてくれた君には感謝しないと」
ルシルはそっと右手を差し出す――握手を求めてきたのだ。
斬九郎は躊躇いを見せず、すぐにその手を握り返し、グータッチも決める。
「この世界の風習もバッチリだね」
「ネイジェフに教えてもらったでござる」
「ははは、彼らしいね。じゃあ、僕はこれで。いつか体術で君に勝てるよう、これからもっと鍛錬を積まないと」
ルシルは張り切って他の生徒と
(あの向上心……次に戦う時は、先ほどよりも危うい状況になるかもしれぬ。拙者もうかうかしれいられぬな)
もし、ルシルが斬九郎の策に乗ってこなかったら勝負はわからなかった。そもそも、向こうには魔法という切り札がある。魔獣と戦った時のように、忍道具を駆使してどこまで対抗できるか――それはそれで気になるところであった。
対魔法への案を脳内で練っていると、
「やったな、ザンクロー!」
「最近調子に乗っていたから、ルシル・カートランドにはいい薬だわ」
ネイジェフとリーナだった。
「随分とルシル・カートランドに突っかかるのだな」
「学年代表でもある学年警邏団長の座を奪われたから拗ねてんだよ」
「違うわよ! ……でも、強さなら私の方が絶対上なのに……なんであいつが学年代表なのよ……」
リーナはルシルが学年代表に選出されたことに納得していないようだ。
「学年代表は総合的な能力で判断するからな。おまえの方が強いっていうのも、おまえの持つ炎の力はカートランドの得意とする魔法と相性が良くないってくらいだろ? それにあいつは自分の魔法をしっかり制御できるし、おまえくらい強力な炎系の魔法を操れないとあいつを倒すのは至難の業だ。それに、あいつは冷静に物事を分析できる。その辺の力がリーナ・セルディオには足りてねぇって判断だったじゃねぇか」
「それはそうだけど……」
でもやっぱり腑に落ちないといった感じにリーナは唇を尖らせるが、ネイジェフの話を聞く限りでは妥当な判断だったと斬九郎は思った。
三人で話していると、そこへ、
「見事な手並みだったぞ」
フィッツが肩を叩く。
「他の連中にもいい見本になったよ。そうだよな、おまえら」
呼びかけに対し、「はい!」と勇ましい返事。
斬九郎が体術であのルシル・カートランドを追い詰め、勝利したという事実が、他の生徒たちの励みになったのは間違いないようだった。
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