あれから会う事もなく3年が立ちました

尾道小町

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仮面の再会。

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その日、祖母の屋敷に宰相の使者が訪れた。  

「登城していただきたい」と、言われ胸がざわついた。  

ユージンのことが知られたの、かもしれない。
  
私は断った。だが、翌日、仮面の青年が現れた。

黒い外套、静かな足音。  

あの日と同じ仮面。  

でも、雰囲気が違っていた。  

彼は、まっすぐ私を見て言った。

「貴女はユリアス王太子殿下の子を産んだと噂されています。事実ですか?」

私はユージンを抱き上げ、顔を隠しながら答えた。  

「この子は王太子殿下とは関係ありません。どうかお帰りください」

彼は一歩近づき、低い声で言った。  
「貴女はシルビア・ウッドサイド伯爵令嬢ですね?」

なぜ名前まで知っているのか。  
私は動揺しながらも、声を強めた。  

「私はそのような者ではありません。お引き取りください」

沈黙のあと、彼は仮面を外した。  
金髪、碧眼。  
その顔は、忘れようとしても忘れられなかった人。

「俺が誰か、わかりませんか?」  

ユリアス王太子殿下だった。

私は言葉を失った。  

彼が、ここに?  

結婚したはずでは?  

何のために?

「ユージンは俺の子だろう?」  
「・・・・・・はい。でも、渡すつもりはありません」

彼は目を伏せ、静かに言った。  

「君を迎えに来るのが、三年もかかってしまった。  
 城の婚約者候補たちを帰らせるのに、時間がかかったんだ」

私は信じきれなかった。  

三年も?  

私の居場所など、すぐにわかるはずなのに。

「君はもう俺を愛していないのか?」  

「愛してる。でも、ユージンを失うくらいなら・・・・・・できる」

彼女は深く息を吐いた。  

「結婚のために、ペルホード公爵の養子になった。  
 もう身分の壁はない。君とユージンを迎えに来たんだ」

私は揺れていた。  

信じたい。でも、怖かった。  

この三年の沈黙が、私の心を守っていた。

「暫く城に泊まり、考えてみます」  
それが、私の精一杯の答えだった。

彼は頷いた。  
「それでいい。君の気持ちが戻るまで、待つよ」

仮面の青年は、もう仮面を外していた。  
でも、私の心にはまだ、仮面が残っていた。



仮面の人との出会い

ある日、教会に仮面の青年が現れた。  

ミリアは彼を「ユリさん」と呼び、すぐに打ち解けた。  

彼の声は澄んでいて、どこか懐かしかった。

「ユリさん、今日も来てくれてありがとう。  
あなたの声、なんだか懐かしいの」

ユリは微笑みながらパンを受け取り、  
ミリアの手をそっと包んだ。  

その仕草に、彼女は胸の奥が温かくなるのを感じた。

王国に根づいた顔を隠すという習わしは、祈りと沈黙の哲学に深く結びついています。  

風聞師の語りとして、神話的な余白を含んだ断章に仕立てました。



風聞師は、古い巻物を広げながら語った。
  
その声は、焚き火の揺らぎとともに、夜の空気に溶けていく。

「仮面の文化は、王国がまだ顔を持たぬ時代に生まれた。  
 人々は、顔を見せることで争いが起こると信じていた。  
 だから、祈りも、怒りも、愛もすべて仮面の奥に沈めた」

仮面は、沈黙の象徴だった。  

語らないことで、傷つけない。  

見せないことで、守る。

「けれど、沈黙はやがて孤独になった。  
 祈りは届かず、赦しは生まれなかった。  
 顔を隠すことで、心まで隠れてしまったのだ」

風聞師は、桃霞草の花を手に取った。  

その香りは、語られなかった願いの記憶。

「そして、ある夜。  
一人の少年が仮面を外した。 
彼の顔には、祈りが宿っていた。  
それは、沈黙を赦す灯りだった」

その出来事を境に、仮面の文化は変わり始めた。  

顔を見せることは、祈りを分かち合うことになった。









  
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