ワガママお嬢様と土中にいた美丈夫

東龍ベコス

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【僕とお嬢さん】

3「お嬢様と家出してあげる」

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 時が経ち、お嬢様は隣町の貴族の元に嫁ぐ事になった。
 噂によると、どうやら政略結婚らしい。
 あのおてんば娘が人様の女になるのか、と時の流れの早さにしみじみした。
 
 
 すると、ある夜。
「連れて逃げて」とお嬢様にせがまれた。

 ……何ソレ、超めんどくせぇ。

 そんな事をしたら、お嬢様の父親にどう激怒されるモンだか。
 表情だけで必死に“拒否の意”を示したが「私の言うことが聞けないの!?」と、ぐしょぐしょ泣きながら叫ばれたので観念して荷造りをする事にした。
 
 何のあてもなく、街や村を転々とした。
 旅の間、何もできないお嬢様の世話は面倒だった。
 足場の悪い所を歩く時は手を取ってやり、ぬかるんだ道を歩く時は、服が汚れないようにおんぶしてやった。
 野宿の時は野草やウサギで料理を作ってやった。
 ……ちなみに野草の知識は、昔の知り合いの毒使いから教わったものだ。
 名前は……なんだったか。ゲリピーとかなんとかいう変な名前だったような気がする。
 
 身の周りの世話をさせるために俺を連れ回すなや、この野郎、と内心毒づきつつお嬢様に毛布をかけてやり、笑顔で「おやすみ」と言う。
 
 目撃されないようにと、お嬢様はフードを深くかぶって行動しようとするので、こっそりとフードを処分しておいた。
 人に目撃されて、その情報が父親の使いにでも洩れればいい。
 そして、早くこんな不毛な散歩を終わらせて屋敷に帰って金持ちといい暮らししろよ。
 
******
 
「……あんた、なんでしゃべれないの?」

 昔、そう訊かれた事がある。
 特に理由など決めていなかったので思わず表情を曇らせる。
「なんか、事故のせい? それとも何かトラウマ?」
 お嬢様からいい助け舟が出たので、親指を立てて「そう、ソレ!」な感じで笑っておいた。
 
 紙とペンを渡され「何か書きなさいよ」と、せがまれた事もあった。
 文字を書ける事がバレたら、筆談でアレコレ訊かれてしまう。それは面倒だ。
 仕方ないので絵……、自画像を描いたら「ひっ」と小さく悲鳴をあげられた。何故だ。
 ネコを描いたら「『タワシの妖怪を描け』とは言ってない!」と失礼な言葉を投げつけられた。
 
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