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カウドゥール
③大食い大会に参加するKさん
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「───Bさん。たいへん申し訳ないのですが、優勝は諦めて下さい」
今の今まで、さんざ「僕に任せて下さい」だの「優勝確実」だの自信満々に言っていたKが、会場で決勝戦の食べ物を一目見た瞬間、手の平返しで諦めの言葉を言い放った。
──というか、会場に着く前。
控え室を出てから、すでにKの様子はおかしかった。Kは鼻をくんくんさせながら、無駄に端正な顔を不快そうにしかめていた。
どうやら、その時点ですでに“その食べ物の匂い”を嗅ぎとっていたらしい。
「……おいコラ待て。人にさんざ『優勝してみせます、任せろ』とか言っておいて、なんだその諦めの早さ」
Bは呆れたが、別に怒ってなどはいなかった。ダメならダメで別に構わなかった。
が、Kは「いえ……や、やはり頑張ります……」と、Bの言葉を真に受けて、ぎこちなく、いつもの作り笑顔を浮かべながら会場に向かった。
決勝戦の食べ物は、“イチゴをたっぷり乗せたケーキ”であった。
毒でも腐ったものでも馬糞でも食べ物でなくとも、なんでもかんでも口に入れて飲み込んでみせる事のできるKであったが、そんな化け物が唯一食べる事に難色を示すのが、イチゴと酒であった。
Bは本人からユルく理由を聞けた事があるが「酒は昔からどうもダメ」で、イチゴは「G(という、Kがこの世で1番死んでほしい人)にやたら勧められて苦手になった」らしい。
他の参加者が美味しそうなケーキに喜んでいる中、Kだけが眉をひそめて目の前のケーキ……の上にちょこんと乗るイチゴをじっ……と見つめていた。
「……おい。マジで無理しなくていいぞー」と、Bが舞台下の観覧席から声をかけたがKは体も顔も微動だにせず、ただ右手だけを上げて反応した。
試合開始と共に、Kは能面のような表情のまま他の参加者達と同様に勢いよくケーキを1つ丸々口にほおばった……が、そのまま動きを止める。
能面表情のまま口をもごつかせ、クリームまみれの口から無傷のイチゴだけをヌルリと取り出し、皿のはしに置いた。
スポンジとスポンジの間に入っていた細かいイチゴも同様に吐き出した。
司会者が《おんやぁ? K選手はイチゴちゃんが苦手なのかなぁ?》と、おちょくったように解説するもKはケーキの咀嚼だけをし、あとの体の部位は微動だにしなかった。
《イチゴもちゃんと食べないと、食べた数にカウントされませんよぉ~???》
司会者がそう笑うが、Kは顔をしかめたまま、ただ咀嚼し続ける。皿のはしにイチゴを残したまま、Kは次のケーキに手を伸ばした……が、司会者にその腕を掴まれる。
《完食してから、次のケーキにお手を伸ばし下さいぃい》
司会者は、そうニヤリと笑った。Kは泣きそうな顔で、そんな司会者を見る。
※ここまで『2015年辺りに打って放置したもの』なので、以降の新規文章と多分……文章力違うやもしれません
チャラチャラと陽気な格好をしているが、よくよく見ると悪くない精悍な顔つきをしている司会者と、切れ長の赤い瞳を潤ませながら、苦悶の表情を浮かべる黒髪の美丈夫の見つめ合い……という図式に、一部の女観客から黄色い悲鳴が上がった。
女らが喜ぶ気持ちが、Bには少しわかる。あのヘラヘラとうるさいKが本心から困り、弱り果ててしょげている様には異様な色気が付きまとっている。そんなKを、ある者は愛おしく抱きしめたいと思うし、またある者は暴力や罵声で更に泣かせてみたくなるものだろう、と。
ちなみに、Bは両方の気持ちをKに抱いたことがある。その時の機嫌の問題で「泣くな泣くな」と頭を撫でた事もあるし、さんざ蹴飛ばしてしまった事もある。
男の俺でもこうなのだから、そこらの女は……と周囲に耳を澄ませると、案の定「あの黒髪の人、何か可愛い……」「これまでさんざ爆食してきたのに、あのしおれっぷりは何よ……ギャップ萌え?」「やばい、司会者×黒髪お兄さん……」等の声が聞こえた。
司会者に注意されたKはおずおずと、先程吐いたイチゴをつまんだ。つまんで、じっと泣きそうな顔で見つめるだけ。
───K、もうやめておけ。もういい。
BがKを見つめながら、小首を左右に振る。
『味による好き嫌い』ならまだしも『トラウマから来る好き嫌い』は、どうしようもないと思った。
やはり、自暴自棄ヤケクソな生き方をする大人を見ているのは気分のいいものではない。というか、Kは大人といえど18歳の自分よか、(まともな)人生経験が少ないしモノを知らないので、実は無意識にBはKを年下に見ている事がある。イコール、小さい子が無理をしている感がして、見ているのが時折ツラくなってくるのだ。
「──へぇ。食べ物を粗末に扱う、ろくでもねぇ祭をやってるもんだな」
盛り上がる広場の歓声の中、後方からスッと女の凛とした声がBの耳に入ってきた。凛と涼やかに、且つ、怒気を内包している聞き馴染みのある声。
あ、やば……と、Bが思う頃には、既にその声の主は自身の右隣に立っていた。
「この、くだらない大食い大会にKを出させたのは……お前か?」
Kの保護者──Rが、Bを一瞥もせずに冷たい声で問う。
「……違います」
BもRに視線を向けず、前を向いたまま答える。
「断じて、オレが出したわけではありません。アイツが『勝ってくるぜ!』って勝手に出場しました」
紛うこと無き事実を言っているはずなのだが、Kの保護者さんはだいぶK擁護思想の御方なのでBは冷や汗が止まらない。いつ、殴られてもおかしくない。
「こんな、食べ物を粗末に扱うイベント……オレが好きなわけないでしょう? もう、ずっと不愉快でしたよ? だって、試合後にあいつゲロゲロ吐くんだもん。最悪だよ」
ほぉ、とRは呟く。
「で、見てよコレ。決勝戦でイチゴ出ちゃって、あのザマよ」
Bは舞台上の哀れな『お残し男』を軽く指差す。Rが少し沈黙してから、ため息をつく。
「…………あぁ、バカだなぁ。あいつは本当にバカだ」
どうやら、信じてくれたらしい。Bは安堵した。
「全部食べなきゃ次行っちゃダメなもんで、だからあのままストップよ」
舞台上のKは、相変わらずイチゴを手にして硬直している。
「……K、もうやめよぉ~? 帰ろぉ~?」
そんなKに、Rが声を飛ばす。その声は先程までBにぶつけていたものと打って変わって、お優しい。イチゴ如きに困らされていた男は顔を上げ、その声の主を見た。
あ、と声を上げたのだろう。そんなような口の形をした。そうしてから、憎々しげだったり泣きそうだったりな表情をしたり、顔を背けたりうつむいたり辺りを見回してそわそわ落ち着かない行動を繰り返していた……と思っていたら、突如、Kが『残していたイチゴ』を無造作に掴んで全て口に入れた。
「何で?!」「どうした?!」
Rや観客が、どよめく。Bは「あーぁ」と理解が早かった。
Kは、Rに『イチゴ如きでモダモダしている様』を見られたくなかったし、心配もされたくなかったのだろう。Kは他人には弱音や泣き言やら惨め情けない姿を平気で見せることが出来るプライド無し男だったが、Rの前でだけはそうしない。……まぁ、隠し事ができない性分だから、結局たまに見せているが。
Rの前で弱音を吐くと、Rはすぐ「ごめんね、私のせいで」と言う。Kに何か『マイナスな事・不幸』があると、Rは秒で「私のせいでごめんね」という。実際には『Rの親父のせいでKが心身不安定(なせいからくる不幸・不調)』なのだが、Rは『私のせいでごめんね』と、ひっくるめて考える。
だから、この『Kがイチゴを食べられなくて困っている状況』。後で、Rはこう称する。
「私がKとBを買い物に行かせたせいで、こんな目に遭ってごめんね。イチゴが食べられないのは私の父親のせいだ、ごめんね。つまり、私のせいだ」と。
Kは、Rがもう脳死で癖として言っている「ごめんね、私のせいで」を酷く嫌う。Kの心身不安定も不幸も、Rには何も関係ないのだ。が、お優しいが意地張りのKは「そんな事はねぇ」と面と向かって、Rにそうフォロー出来ない。
別に俺、全然不調じゃないですよ、平気ですよホォラ……と、黙って痩せ我慢して、苦難をやり過ごそうとする方向へ頑張る。
故に、Kが死に物狂いでイチゴ……ケーキを食べだした。Rに「大丈夫」に見られたいがために。
「K! 何やってんだよ、そんなに優勝したいのかよ!」
Rが悲痛に叫ぶ。いや、Kさん。全然「大丈夫」と思われてないっすよ……Bが遠い目をする。
だいぶ遅れを取ったKが猛烈な勢いでケーキを爆食していくが、数分間ほど食べた後でピタリと動きが止まった。
直後。体をひねって後ろを向き、観客からは見えないようにの配慮はしつつ、席の後ろでイケメンは盛大にケーキを『召喚』した。ただ、ほぼ食べたばかりのものを召喚しているのであまり臭くも、惨劇というほどの惨劇ではなかった。
先程、軽く関わってしまったチャラい司会者もその様子にドン引きと心配をしてくれたが、観客が盛り上がっているので「まぁいいか」と気持ちを切り替えた。
《ああっ! K選手っ、口に詰め込んだケーキをリバースだぁっ!!! やはり、イチゴちゃんは無理だったかぁっ!!》
司会者は自分の仕事をした。とりあえず、大声を出して盛り上げる……という仕事を。
「K……」
心折れたのか、観客に背中を向けたまま微動だにしなくなったKを、Rは心配した。
──結果。優勝は、例の『頑張っていたおっさん』だった。家族と共に手を取り合って、優勝をわぁわぁ喜んだ。
二位三位四位も他者に譲り、Kは五位に収まった。『前半あんなに凄かったし、嫌いな食べ物さえ出なかったら優勝でしたで賞』という特別賞をいただいた。ちょっとした、金一封だった。
表彰の壇上から、しょげながらトボトボヨボヨボと降りてきたKだったが、下で見守ってくれていた遠い目をしているBの姿を見るやいなや、不敵に笑った。
「ふふふ、どうです? 金一封GETですよ?!」
封筒をピラリと見せつけながら偉そうにしてくる、イチゴが食えなくて読み書きも不安定な24歳イケメン無職。
「いや、どうキメようがカッコよくないぞ? Kさん……」
この後、Rも一緒にステーキ屋に行きました(宿屋のLは誘わなかった)。
今の今まで、さんざ「僕に任せて下さい」だの「優勝確実」だの自信満々に言っていたKが、会場で決勝戦の食べ物を一目見た瞬間、手の平返しで諦めの言葉を言い放った。
──というか、会場に着く前。
控え室を出てから、すでにKの様子はおかしかった。Kは鼻をくんくんさせながら、無駄に端正な顔を不快そうにしかめていた。
どうやら、その時点ですでに“その食べ物の匂い”を嗅ぎとっていたらしい。
「……おいコラ待て。人にさんざ『優勝してみせます、任せろ』とか言っておいて、なんだその諦めの早さ」
Bは呆れたが、別に怒ってなどはいなかった。ダメならダメで別に構わなかった。
が、Kは「いえ……や、やはり頑張ります……」と、Bの言葉を真に受けて、ぎこちなく、いつもの作り笑顔を浮かべながら会場に向かった。
決勝戦の食べ物は、“イチゴをたっぷり乗せたケーキ”であった。
毒でも腐ったものでも馬糞でも食べ物でなくとも、なんでもかんでも口に入れて飲み込んでみせる事のできるKであったが、そんな化け物が唯一食べる事に難色を示すのが、イチゴと酒であった。
Bは本人からユルく理由を聞けた事があるが「酒は昔からどうもダメ」で、イチゴは「G(という、Kがこの世で1番死んでほしい人)にやたら勧められて苦手になった」らしい。
他の参加者が美味しそうなケーキに喜んでいる中、Kだけが眉をひそめて目の前のケーキ……の上にちょこんと乗るイチゴをじっ……と見つめていた。
「……おい。マジで無理しなくていいぞー」と、Bが舞台下の観覧席から声をかけたがKは体も顔も微動だにせず、ただ右手だけを上げて反応した。
試合開始と共に、Kは能面のような表情のまま他の参加者達と同様に勢いよくケーキを1つ丸々口にほおばった……が、そのまま動きを止める。
能面表情のまま口をもごつかせ、クリームまみれの口から無傷のイチゴだけをヌルリと取り出し、皿のはしに置いた。
スポンジとスポンジの間に入っていた細かいイチゴも同様に吐き出した。
司会者が《おんやぁ? K選手はイチゴちゃんが苦手なのかなぁ?》と、おちょくったように解説するもKはケーキの咀嚼だけをし、あとの体の部位は微動だにしなかった。
《イチゴもちゃんと食べないと、食べた数にカウントされませんよぉ~???》
司会者がそう笑うが、Kは顔をしかめたまま、ただ咀嚼し続ける。皿のはしにイチゴを残したまま、Kは次のケーキに手を伸ばした……が、司会者にその腕を掴まれる。
《完食してから、次のケーキにお手を伸ばし下さいぃい》
司会者は、そうニヤリと笑った。Kは泣きそうな顔で、そんな司会者を見る。
※ここまで『2015年辺りに打って放置したもの』なので、以降の新規文章と多分……文章力違うやもしれません
チャラチャラと陽気な格好をしているが、よくよく見ると悪くない精悍な顔つきをしている司会者と、切れ長の赤い瞳を潤ませながら、苦悶の表情を浮かべる黒髪の美丈夫の見つめ合い……という図式に、一部の女観客から黄色い悲鳴が上がった。
女らが喜ぶ気持ちが、Bには少しわかる。あのヘラヘラとうるさいKが本心から困り、弱り果ててしょげている様には異様な色気が付きまとっている。そんなKを、ある者は愛おしく抱きしめたいと思うし、またある者は暴力や罵声で更に泣かせてみたくなるものだろう、と。
ちなみに、Bは両方の気持ちをKに抱いたことがある。その時の機嫌の問題で「泣くな泣くな」と頭を撫でた事もあるし、さんざ蹴飛ばしてしまった事もある。
男の俺でもこうなのだから、そこらの女は……と周囲に耳を澄ませると、案の定「あの黒髪の人、何か可愛い……」「これまでさんざ爆食してきたのに、あのしおれっぷりは何よ……ギャップ萌え?」「やばい、司会者×黒髪お兄さん……」等の声が聞こえた。
司会者に注意されたKはおずおずと、先程吐いたイチゴをつまんだ。つまんで、じっと泣きそうな顔で見つめるだけ。
───K、もうやめておけ。もういい。
BがKを見つめながら、小首を左右に振る。
『味による好き嫌い』ならまだしも『トラウマから来る好き嫌い』は、どうしようもないと思った。
やはり、自暴自棄ヤケクソな生き方をする大人を見ているのは気分のいいものではない。というか、Kは大人といえど18歳の自分よか、(まともな)人生経験が少ないしモノを知らないので、実は無意識にBはKを年下に見ている事がある。イコール、小さい子が無理をしている感がして、見ているのが時折ツラくなってくるのだ。
「──へぇ。食べ物を粗末に扱う、ろくでもねぇ祭をやってるもんだな」
盛り上がる広場の歓声の中、後方からスッと女の凛とした声がBの耳に入ってきた。凛と涼やかに、且つ、怒気を内包している聞き馴染みのある声。
あ、やば……と、Bが思う頃には、既にその声の主は自身の右隣に立っていた。
「この、くだらない大食い大会にKを出させたのは……お前か?」
Kの保護者──Rが、Bを一瞥もせずに冷たい声で問う。
「……違います」
BもRに視線を向けず、前を向いたまま答える。
「断じて、オレが出したわけではありません。アイツが『勝ってくるぜ!』って勝手に出場しました」
紛うこと無き事実を言っているはずなのだが、Kの保護者さんはだいぶK擁護思想の御方なのでBは冷や汗が止まらない。いつ、殴られてもおかしくない。
「こんな、食べ物を粗末に扱うイベント……オレが好きなわけないでしょう? もう、ずっと不愉快でしたよ? だって、試合後にあいつゲロゲロ吐くんだもん。最悪だよ」
ほぉ、とRは呟く。
「で、見てよコレ。決勝戦でイチゴ出ちゃって、あのザマよ」
Bは舞台上の哀れな『お残し男』を軽く指差す。Rが少し沈黙してから、ため息をつく。
「…………あぁ、バカだなぁ。あいつは本当にバカだ」
どうやら、信じてくれたらしい。Bは安堵した。
「全部食べなきゃ次行っちゃダメなもんで、だからあのままストップよ」
舞台上のKは、相変わらずイチゴを手にして硬直している。
「……K、もうやめよぉ~? 帰ろぉ~?」
そんなKに、Rが声を飛ばす。その声は先程までBにぶつけていたものと打って変わって、お優しい。イチゴ如きに困らされていた男は顔を上げ、その声の主を見た。
あ、と声を上げたのだろう。そんなような口の形をした。そうしてから、憎々しげだったり泣きそうだったりな表情をしたり、顔を背けたりうつむいたり辺りを見回してそわそわ落ち着かない行動を繰り返していた……と思っていたら、突如、Kが『残していたイチゴ』を無造作に掴んで全て口に入れた。
「何で?!」「どうした?!」
Rや観客が、どよめく。Bは「あーぁ」と理解が早かった。
Kは、Rに『イチゴ如きでモダモダしている様』を見られたくなかったし、心配もされたくなかったのだろう。Kは他人には弱音や泣き言やら惨め情けない姿を平気で見せることが出来るプライド無し男だったが、Rの前でだけはそうしない。……まぁ、隠し事ができない性分だから、結局たまに見せているが。
Rの前で弱音を吐くと、Rはすぐ「ごめんね、私のせいで」と言う。Kに何か『マイナスな事・不幸』があると、Rは秒で「私のせいでごめんね」という。実際には『Rの親父のせいでKが心身不安定(なせいからくる不幸・不調)』なのだが、Rは『私のせいでごめんね』と、ひっくるめて考える。
だから、この『Kがイチゴを食べられなくて困っている状況』。後で、Rはこう称する。
「私がKとBを買い物に行かせたせいで、こんな目に遭ってごめんね。イチゴが食べられないのは私の父親のせいだ、ごめんね。つまり、私のせいだ」と。
Kは、Rがもう脳死で癖として言っている「ごめんね、私のせいで」を酷く嫌う。Kの心身不安定も不幸も、Rには何も関係ないのだ。が、お優しいが意地張りのKは「そんな事はねぇ」と面と向かって、Rにそうフォロー出来ない。
別に俺、全然不調じゃないですよ、平気ですよホォラ……と、黙って痩せ我慢して、苦難をやり過ごそうとする方向へ頑張る。
故に、Kが死に物狂いでイチゴ……ケーキを食べだした。Rに「大丈夫」に見られたいがために。
「K! 何やってんだよ、そんなに優勝したいのかよ!」
Rが悲痛に叫ぶ。いや、Kさん。全然「大丈夫」と思われてないっすよ……Bが遠い目をする。
だいぶ遅れを取ったKが猛烈な勢いでケーキを爆食していくが、数分間ほど食べた後でピタリと動きが止まった。
直後。体をひねって後ろを向き、観客からは見えないようにの配慮はしつつ、席の後ろでイケメンは盛大にケーキを『召喚』した。ただ、ほぼ食べたばかりのものを召喚しているのであまり臭くも、惨劇というほどの惨劇ではなかった。
先程、軽く関わってしまったチャラい司会者もその様子にドン引きと心配をしてくれたが、観客が盛り上がっているので「まぁいいか」と気持ちを切り替えた。
《ああっ! K選手っ、口に詰め込んだケーキをリバースだぁっ!!! やはり、イチゴちゃんは無理だったかぁっ!!》
司会者は自分の仕事をした。とりあえず、大声を出して盛り上げる……という仕事を。
「K……」
心折れたのか、観客に背中を向けたまま微動だにしなくなったKを、Rは心配した。
──結果。優勝は、例の『頑張っていたおっさん』だった。家族と共に手を取り合って、優勝をわぁわぁ喜んだ。
二位三位四位も他者に譲り、Kは五位に収まった。『前半あんなに凄かったし、嫌いな食べ物さえ出なかったら優勝でしたで賞』という特別賞をいただいた。ちょっとした、金一封だった。
表彰の壇上から、しょげながらトボトボヨボヨボと降りてきたKだったが、下で見守ってくれていた遠い目をしているBの姿を見るやいなや、不敵に笑った。
「ふふふ、どうです? 金一封GETですよ?!」
封筒をピラリと見せつけながら偉そうにしてくる、イチゴが食えなくて読み書きも不安定な24歳イケメン無職。
「いや、どうキメようがカッコよくないぞ? Kさん……」
この後、Rも一緒にステーキ屋に行きました(宿屋のLは誘わなかった)。
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