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カウドゥール
鳥の盗み聞きする人vs鳥から庇われる人
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「あぁ、雨が降るってよ」
窓際の壁にもたれかかりながら小休憩をとっていた5世の呟きを、ゼアは訝しんだ。
空には多少の雲があったが、それでもさほど「雨が降るぞ」という気配はなかった。晴天である。
が、空気が若干の湿り気を帯びているから、もしかしたらその可能性はあるかもしれないが「雨が降る」と断定するのは、いささか微妙なところだ。
「……とても、いい日和ですが」
護衛という従者の身で主に口答えするのはいかがなものかとも思ったが、主である5世がボケだしたのなら早期発見が望ましいと考えて提言する。
「僕もそう思うんだけどね、外の鳥がそう騒いでるんだよ」
いよいよもって5世がどうかしてしまったのかと、ゼアは息を飲んだ。窓の外を見やる5世の端正な顔つき……その視線に狂気性は感じられないが、それが尚更恐ろしいと思った。
無表情なゼアの熱視線と目の奥のその真意に気付き、5世が慌てる。
「ちょ……何、その目。いやいや、僕は人間以外の思考も聞こえる事あるんだよぉ」
「え」ゼアが小さく反応する。
人の思考と過去の行動を何らかの力で見聞している事実は知っていたが、それが人間外にも適用されるとは露知らずだった。
「……鳥がどのように『雨』だと仰っているのです?」
単純に疑問に思ったので、ゼアは素直に訊いてみた。
「えっ……えーと……『アメー』『アメフルゥ~』って」
5世が鳥の真似をして甲高く、カタコトに“鳥の思考(?)”を再現した。ゼアは無表情でそれを見つめた。
「なんだよ、その目! 鳥が人間みたいに流暢に喋るわけないでしょっ?! とにかくっ! なんとなく、そんな感じに聞こえてるのっ!」
5世がズレたメガネを直しながら憤慨する。ゼアは「はぁ、そうですか」と淡々と返した。
「鳥たちがそんなん言い合って向こうに飛んでいくのが、たまたま聞こえたのっ!」
ゼアが窓の外を見ると確かに、遠くの方でかすかに薄灰色の雲がこちらに迫って来ているのが見えてきていた。
鳥の話を聞いて、ゼアは“本当の主”の事をふっと思い出した。
幼少期に“本当の主”と開放的な中庭で『主からの鞠を一方的に受ける蹴鞠』を楽しんでいた時、突如空から無数の小鳥が降りてきた。
小鳥らは主に懐いてるかのように辺りを飛び回ってピィピィ鳴いた。と、鳥の数羽が主の袖をついばんで引っ張りだしたので、ゼアは「わぁ、なんて無礼を」と怯えた。
何かを察した主が小鳥に引っ張られるがまま歩き、ゼアもそれについていった。屋敷の屋根がある箇所にまで行くと、途端に激しい夕立が降りしきった。二人が今まで遊んでいた中庭はあっという間に雨飛沫にまみれた。
ゼアが呆気にとられていると、主が「ほぉ。夕立が降るから、我を屋敷に戻したのか」と笑った。小鳥らは、主の足元でじっと空を見上げていた。
鳥が「この方を濡らすのははばかれる」と、わざわざ降りてきて辺りを舞ったのか、とゼアは酷く感動した。
詳しくは知らないが、ゼアの主は動物に好かれやすかった。凶暴なはずの獅子も、主には腹を見せて寝転んだ。
動物・虫……もしかしたら、その力は人にも作用していて、だから自分はこの方を慕っているのかと考えたこともあった。が、自分はこの方に恩義があるから慕っているのであって、そんな【能力】で強制的に慕わされているわけではない。はずだ。
【能力】とつい言ってしまったが、ゼア自身はこれは【主の人徳が成せる技】と思っていた。
一方、こちらの国の5世様とやらが今披露した芸は『鳥らの雑談をたまたま耳に入れた』という芸であった。
私の主は人徳で『鳥らから身を庇われた』が、こちらの5世は鳥の盗み聞き……と、悶々と思考すらのをやめた。あまりにも強い思念をいだき続けると、その5世に心を読まれる可能性があった。
ゼアはすん、と心を落ち着かせて「鳥めらの話の盗み聞きするなんて……いやらしい」と普段通りの無表情で手厳しい言葉を5世に投げて5世をからかった。
盗み聞きなんて人聞きが悪い……!と、5世がぷりぷりと憤慨する後ろの窓の外は、もうだいぶ空の曇天化が進んでいた。
窓際の壁にもたれかかりながら小休憩をとっていた5世の呟きを、ゼアは訝しんだ。
空には多少の雲があったが、それでもさほど「雨が降るぞ」という気配はなかった。晴天である。
が、空気が若干の湿り気を帯びているから、もしかしたらその可能性はあるかもしれないが「雨が降る」と断定するのは、いささか微妙なところだ。
「……とても、いい日和ですが」
護衛という従者の身で主に口答えするのはいかがなものかとも思ったが、主である5世がボケだしたのなら早期発見が望ましいと考えて提言する。
「僕もそう思うんだけどね、外の鳥がそう騒いでるんだよ」
いよいよもって5世がどうかしてしまったのかと、ゼアは息を飲んだ。窓の外を見やる5世の端正な顔つき……その視線に狂気性は感じられないが、それが尚更恐ろしいと思った。
無表情なゼアの熱視線と目の奥のその真意に気付き、5世が慌てる。
「ちょ……何、その目。いやいや、僕は人間以外の思考も聞こえる事あるんだよぉ」
「え」ゼアが小さく反応する。
人の思考と過去の行動を何らかの力で見聞している事実は知っていたが、それが人間外にも適用されるとは露知らずだった。
「……鳥がどのように『雨』だと仰っているのです?」
単純に疑問に思ったので、ゼアは素直に訊いてみた。
「えっ……えーと……『アメー』『アメフルゥ~』って」
5世が鳥の真似をして甲高く、カタコトに“鳥の思考(?)”を再現した。ゼアは無表情でそれを見つめた。
「なんだよ、その目! 鳥が人間みたいに流暢に喋るわけないでしょっ?! とにかくっ! なんとなく、そんな感じに聞こえてるのっ!」
5世がズレたメガネを直しながら憤慨する。ゼアは「はぁ、そうですか」と淡々と返した。
「鳥たちがそんなん言い合って向こうに飛んでいくのが、たまたま聞こえたのっ!」
ゼアが窓の外を見ると確かに、遠くの方でかすかに薄灰色の雲がこちらに迫って来ているのが見えてきていた。
鳥の話を聞いて、ゼアは“本当の主”の事をふっと思い出した。
幼少期に“本当の主”と開放的な中庭で『主からの鞠を一方的に受ける蹴鞠』を楽しんでいた時、突如空から無数の小鳥が降りてきた。
小鳥らは主に懐いてるかのように辺りを飛び回ってピィピィ鳴いた。と、鳥の数羽が主の袖をついばんで引っ張りだしたので、ゼアは「わぁ、なんて無礼を」と怯えた。
何かを察した主が小鳥に引っ張られるがまま歩き、ゼアもそれについていった。屋敷の屋根がある箇所にまで行くと、途端に激しい夕立が降りしきった。二人が今まで遊んでいた中庭はあっという間に雨飛沫にまみれた。
ゼアが呆気にとられていると、主が「ほぉ。夕立が降るから、我を屋敷に戻したのか」と笑った。小鳥らは、主の足元でじっと空を見上げていた。
鳥が「この方を濡らすのははばかれる」と、わざわざ降りてきて辺りを舞ったのか、とゼアは酷く感動した。
詳しくは知らないが、ゼアの主は動物に好かれやすかった。凶暴なはずの獅子も、主には腹を見せて寝転んだ。
動物・虫……もしかしたら、その力は人にも作用していて、だから自分はこの方を慕っているのかと考えたこともあった。が、自分はこの方に恩義があるから慕っているのであって、そんな【能力】で強制的に慕わされているわけではない。はずだ。
【能力】とつい言ってしまったが、ゼア自身はこれは【主の人徳が成せる技】と思っていた。
一方、こちらの国の5世様とやらが今披露した芸は『鳥らの雑談をたまたま耳に入れた』という芸であった。
私の主は人徳で『鳥らから身を庇われた』が、こちらの5世は鳥の盗み聞き……と、悶々と思考すらのをやめた。あまりにも強い思念をいだき続けると、その5世に心を読まれる可能性があった。
ゼアはすん、と心を落ち着かせて「鳥めらの話の盗み聞きするなんて……いやらしい」と普段通りの無表情で手厳しい言葉を5世に投げて5世をからかった。
盗み聞きなんて人聞きが悪い……!と、5世がぷりぷりと憤慨する後ろの窓の外は、もうだいぶ空の曇天化が進んでいた。
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