【小説版】勇者にはほしい才能がある

東龍ベコス

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【はみだし番外編】※展開バレ有

お題【育てる】……のおまけ(オムライスになりたい)

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 無粋ながら、ふと気付いてしまった。

「ギン君。オムライスになりたいのなら、ケチャップかけるのを忘れてるよ」

 黄色の毛布にくるまって寝転んでいるギンが、驚愕の顔をする。確かに、今のギンは真っ黄色なだけ……言うならば『オムレツの状態』でしかなかった。

「……オージュせんせぇ、すみません。ケチャップ、かけて」

 ギンが足をばたつかせて懇願する。足元で毛布にくるまれて身動きが取れない子供に懇願されるのは、さすがのオージュもだいぶ罪悪感を覚えた。

「ケチャップねぇ……」

 もちろん、本物のケチャップをかけるわけはない。それをやったら、想像力皆無の阿呆である。オージュは部屋の中を一瞥した後、ギンの衣服類が入っているタンスを開けた。

「たしか、ここら辺に……お。あったあった」

 何故、他人の家のタンスの中を覚えているのか知っているのか。ツッコむ者は誰もいなかった。

 オージュの名誉の為に注釈を入れておくと「何か、緊急時に役に立つかも」と知っているのはギンのもの関連の場所だけであって、その母親の私物などの事は全く知らないし、どうでもいいし興味はない。頼まれても、いらない。

「ほぉら、ギン君。ケチャップだよ」

 オージュは、ギンの赤いマフラーをまるで本当にケチャップをかけているかのように”くるくるへにょり”と、オムレツなギンに高所から垂らし置いた。

 黄色に赤を置くと、なるほど。単純にオムライスに見えた。

「オムライスに、なりました」
 自分からはその様子は見えないが、ギンはそれでご満悦だった。

「……ハムも置いたら、美味しそうになるよぉ」

 オージュは、持参してきたピンク色のブランケットをギンの目の前に出した。座布団くらいの大きさの四角に畳まれたブランケットを、オムライスギンの上に置く。

「あっ。じゃあ、パセリ、パセリもっ」

 身動き取れないギンがあごで指し示すその方向には、緑色のハンカチが落ちていた。オージュはそれを拾い、オムライスに添える。

「やったじゃん、ギン君! オムライスになれちゃったじゃん!」
「ゆめ、たっせいしたぁ」

 オージュが年甲斐もなくはしゃいでいると、後方から「何しとんだ貴様」と冷たい声が飛んできた。

 今、洗濯を干し終わり、ベランダから帰ってきた母親からしてみたら、黒づくめの怖い顔の男が我が子をぐるぐる巻きにして辺りに何やらまぶして、謎の儀式をしているようにしか見えなかった。

「…………オムライスごっこ……」

 バツの悪くなったオージュは、黒いフードを深くかぶった。





▼関係ないけど、オムライスオージュ先生
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