ホラー・不気味系の短編

東龍ベコス

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▼とてもへいわであんしんなおはなし

最近、ウチの全身鏡が仕事をしない。

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タイトルの通りだ。最近、ウチの全身鏡が仕事をしない。

「おい! てめぇ、いいかげんにしろよ!? 俺を映せよ、誰だよ、今カガミに映っている奴!」
今、鏡が映し出しているのは、小太りでバーコードハゲで油ぎってて、少し黄ばんだタンクトップとふんどし一丁の、汚いオヤジである。
俺とは全く、似ても似つかない、というか別人だ。

「うっせーな。知るかボケ。文句あるなら、後ろのちっちぇえ手鏡でも使ってろ」
鏡の中の謎のおっさんが、指で耳をほじりながらしゃべる。
テーブルの上の手鏡を覗きこむ。
中の上くらいの、そこそこ見られる容姿の俺がちゃんと映される。

「……俺は! 全身を映したいの! コーディネートチェックしたいの! 仕事しろや!」
俺はそう叫びながら頭をかきむしった。
しかし、鏡の中のおっさんは無反応で、シカトぶっこいてやがる。

「……仕事しないんなら、捨てるわ」
「……え”」
おっさんが、やっとこっちを向いた。
「割るわ」
俺は、近くにあった木刀(中学の修学旅行の時に土産として買った)を手に取った。
そのまま、鏡に向かって振り上げる。

「うおおおおおお! 待って! 待て! おい!」
おっさんが手の平をこっちに向けてばたつかせる。きめぇ。

「……何故、俺を映さない。あぁ?」
おっさんが、モジモジしながらブルドックみたいな顔を赤らめた。

「……………あ、あんたのイケメンすぎる姿をこの体に映したくねぇんだよ、バカ……! ……じ、自分の体にこんなイケメンが、映し出されるなんて、クソ、なんか、感じちまっ……!」
それを聞いて、南海キャンディー●の山ちゃんが“映写機で、アイドルの姿を全裸になった自分の体に映させて悶えてる”という話をテレビでしていた事を思い出した。
醜い自分の体の上で踊る、ピチピチプリプリのアイドル逹。ウフフフ、ってか。おい。

……うわぁ、同じくらいの変態がすぐ間近に、いた。

「わ、割らないで。ちゃんと、仕事するから。ね? ね?」
鏡のなかのおっさんが、いつの間にか俺の姿に変化していた。
鏡の中の俺が、手を合わせて涙目で懇願している。




……ところで俺は、俺の容姿が好きだ。
なんだろう。鏡の中の泣いている俺を見て俺は……。

「……ん? あんた、どうした。なんで前かがみに?」
鏡の中の俺が、俺の顔を覗きこむ。

「……おい。やめろ、その上目づかい……」
俺……何、俺の泣き顔を見て勃起しているんだ。
えっ、ウソ、マジでか。マジか。

……認めたくないが、自分で勃起してしまう程、俺が可愛いのだから仕方ない。

俺、かわいいよ。俺。

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