出会い系アプリでネコ拾いました。

建月 創士

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1匹目 猫好きの男

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 僕は猫が好きだ。
 僕、真壁礼司は小学生六年生の頃、親に猫を飼ってくれないと死ぬと言って包丁を胸に突き立てたことがある程のレベルで猫が好きだ。
 あの甘えてくる姿が好きだ、あの癒やしてくれる仕草が好きだ、あの育て方によって大きく変わる胴体が好きだ、あのピョコピョコっと生えている耳が好きだ、足の裏にあるピンクの肉球が好きだ、あの可愛い姿からは想像し得ない牙や爪が好きだ、まとめると、とにかく猫という存在が好きなのだ。
 そんな猫好きの僕が猫と恋に落ちる、などと言ったら君たちはどう思うだろうか。

 これはそんな僕と一匹……いや“一人”の猫のお話。
____________________________________

「疲れたよ……ただいま、ペルー」

 そう僕は猫のぬいぐるみのペルーに話しかける。
 
 え?猫が好きなのに猫を飼っていないのかって?
 しょうがないじゃないか、このアパート、ペット禁止なんだから。

 飼えるのならば、初任給全てを叩いてでも飼っているし、こんな寂しい真似もしていない。

 ぬいぐるみのペルーを抱きながらそんなことを考える。
 我ながら女々しいと思うが、もう気にしなくなってしまった。
 そんな自分に飽き飽きし、溜め息が口から溢れる。
 
 しかしながら、どんなに猫が好きで満たされていようとも、やはり人肌というものは恋しいもので。
 まず持って、これまで幼馴染の女の子やクラスの可愛い子に片想いをしてみたことはあったが、どれも告白、とまでは行かず、全て片想いで終わり、結局恋人など出来ずにそのまま社会人になってしまった僕には今更、出会いなんてある筈のない話なのに人の本能は恋をしたがってしまうのだ。

「ん~まだ19で若いしな~間に合うよな……」

 などと独り言をつぶやきながら、晩飯の用意をする。
 正直間に合わないと思っているのが自分の心のうちだ。
 そして、それから一人で晩飯を食べ、一人でテレビを見て、一人で寝る、といういつも通りのサイクルを順繰りにし、僕の一日は終了する。
 味気ない、という一言で済まされてしまう、形容詞などつける価値もない生活にまた溜め息をつく。
 何か出会いなどがないものか……、そう思いながら僕は布団に包まり眠りについた。


 翌日、仕事の書類が一通り終わったところで勇気を出して同僚の横田廉太郎に聞いてみた。
 
「なぁ、横田……出会いって何処にあると思う?」
「おぉ……急にどうした」
「いや、なんか人肌恋しいなって思ってね」
「お、おう」
「そんで同僚一の色男ならなんか知ってるんじゃないかと思ったんだ」

 すると横田はムッとして僕に反論する。

「色男はやめてくれ、煽られているようにしか感じない」
「ごめんごめん、それで?なにかある?」
「そうだなぁ……友達が開いた合コンとか」
「僕にそんなイケイケな友達が居るとでも……?」
「いや、面倒くさいな、おい」

 彼はそう言うと考え込むような仕草をする。
 実にその構図は絵になる。
 横田廉太郎、彼は実際イケている、本人はああは言うが実際かなりのイケメンだ、しかも、素がいいのにそれに知的そうな銀色縁のメガネを掛けているため、更に彼の面構えは引き締められている。
 
 すると彼はハッとし、俺にこう告げた。

「出会い系アプリなんてどうだろうか」

 と。
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