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#0 日常
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逃げる。
ナニカラ?
逃げる。
シラナイ。
逃げる。
イキルタメニ。
逃げる。
ハシル。
とにかく、逃げる。
___________________________________
「うおっ!?」
俺は驚いて目を勢いよく開ける。
そして、汗で濡れた布団など気にすることもなく周りを見渡す。
そこには、赤黒く染まった一本の廊下の景色などなく、小鳥達が朝早くからさえずりを響かせる、そんな平和を体現したような景色が広がっていた。
「なんだよ……夢かぁ……」
そう言いもう一度ベッドに身を任せ、眠りへと意識を落とそうとしたとき、部屋の時計が目に入った。
その時計の小さい針は9時を、長い針は1時を指していて、密かに俺へのタイムリミットを告げていた。
出勤時間のタイムリミットは9時15分、今現在は9時5分……絶望的状況だった。
「え、ちょ、ま」
何か言葉を発する前に体が動き出す、情景反射というものだ。
そそくさと着替え、アパートの階段を駆け下りる。
タイムリミットまであと5分……もう間に合わないことは確定している。
しかし、精一杯走り、誠意を見せることが大事だ、とこの男、渡瀬力動は考える。
そう会社に向かい走っていると一閃、目の前に光が走る。
「え?」
反応が追いつかなかった、いや、追いつけるはずがなかった。
そして、突如として頭部に走った衝撃に渡瀬は意識を手放した。
___________________________________
『____バイタルチェック、オールグリーン、人体の危機の回避__成功、これよりホームとの再結合を開始__成功』
そんな声が響く、うるさい。
頭がガンガンと痛む、そしてその声が反響することによって、更にビリビリとこめかみを刺激され、痛む。
しかし、その痛みは時間とともに緩和されていき、渡瀬は手放した意識をもう一度取り戻し、目を開ける。
「空が……紅い……」
目に写った風景を端的に彼は口に出す。
しかし、すぐに正気に戻り、上体を起こす。
渡瀬の眼前、いや、周囲だろうか、そこには紅く燃え上がる炎、そこら中を支配する煙、そして、多くの死が広がっていた。
『やぁ、おはよう、リキト、気分はどうだい?』
その声と共にキーンという音が頭の中に響き渡る。
「あぁ……最悪だよ[ザラメ]」
その問いに渡瀬はそう答える。
瞬間、頭痛が彼の脳を揺らし、疑問の雫を落とす。。
待て、[ザラメ]って……誰だ?!
そんな名前のやつ知らない、まず何だその残念な感じの名前!?
『おや?おやおやおや?え?まさかかね?忘れたのかい?私のことを?』
「うわ!?なんだこの声!?」
もちろん渡瀬は忘れたどころか、そんなの知った覚えすらないし、この声にもちろん聞き覚えなどない。
『はぁ……本当のようだね……記憶されていない……全くどういうことかな』
「ってか、なにこの状況、俺達の街は?!会社は?!息苦しい!」
『リキト、君の住んでいた街はもう全てこの通り、焼け野原さ、君の行きつけの店も瓦礫に潰されしまったし、もちろん君の勤めていた会社は完全に瓦礫の仲間入りだ、そして』
声はその後、こう続ける。
『今、この街で生きているニンゲンは君だけだ、リキト』
これは、夢ではない、現実だ、肌に感じる炎の熱、煙やガスが大気の殆どを締めたことによる匂いや息苦しさ、これらは全て……現実なのだ。
その現実が突きつけられた瞬間、渡瀬はその場に仰向けで倒れ込み、笑った。
ハハハ、なんてリアルな夢なのだろうか、と。
ナニカラ?
逃げる。
シラナイ。
逃げる。
イキルタメニ。
逃げる。
ハシル。
とにかく、逃げる。
___________________________________
「うおっ!?」
俺は驚いて目を勢いよく開ける。
そして、汗で濡れた布団など気にすることもなく周りを見渡す。
そこには、赤黒く染まった一本の廊下の景色などなく、小鳥達が朝早くからさえずりを響かせる、そんな平和を体現したような景色が広がっていた。
「なんだよ……夢かぁ……」
そう言いもう一度ベッドに身を任せ、眠りへと意識を落とそうとしたとき、部屋の時計が目に入った。
その時計の小さい針は9時を、長い針は1時を指していて、密かに俺へのタイムリミットを告げていた。
出勤時間のタイムリミットは9時15分、今現在は9時5分……絶望的状況だった。
「え、ちょ、ま」
何か言葉を発する前に体が動き出す、情景反射というものだ。
そそくさと着替え、アパートの階段を駆け下りる。
タイムリミットまであと5分……もう間に合わないことは確定している。
しかし、精一杯走り、誠意を見せることが大事だ、とこの男、渡瀬力動は考える。
そう会社に向かい走っていると一閃、目の前に光が走る。
「え?」
反応が追いつかなかった、いや、追いつけるはずがなかった。
そして、突如として頭部に走った衝撃に渡瀬は意識を手放した。
___________________________________
『____バイタルチェック、オールグリーン、人体の危機の回避__成功、これよりホームとの再結合を開始__成功』
そんな声が響く、うるさい。
頭がガンガンと痛む、そしてその声が反響することによって、更にビリビリとこめかみを刺激され、痛む。
しかし、その痛みは時間とともに緩和されていき、渡瀬は手放した意識をもう一度取り戻し、目を開ける。
「空が……紅い……」
目に写った風景を端的に彼は口に出す。
しかし、すぐに正気に戻り、上体を起こす。
渡瀬の眼前、いや、周囲だろうか、そこには紅く燃え上がる炎、そこら中を支配する煙、そして、多くの死が広がっていた。
『やぁ、おはよう、リキト、気分はどうだい?』
その声と共にキーンという音が頭の中に響き渡る。
「あぁ……最悪だよ[ザラメ]」
その問いに渡瀬はそう答える。
瞬間、頭痛が彼の脳を揺らし、疑問の雫を落とす。。
待て、[ザラメ]って……誰だ?!
そんな名前のやつ知らない、まず何だその残念な感じの名前!?
『おや?おやおやおや?え?まさかかね?忘れたのかい?私のことを?』
「うわ!?なんだこの声!?」
もちろん渡瀬は忘れたどころか、そんなの知った覚えすらないし、この声にもちろん聞き覚えなどない。
『はぁ……本当のようだね……記憶されていない……全くどういうことかな』
「ってか、なにこの状況、俺達の街は?!会社は?!息苦しい!」
『リキト、君の住んでいた街はもう全てこの通り、焼け野原さ、君の行きつけの店も瓦礫に潰されしまったし、もちろん君の勤めていた会社は完全に瓦礫の仲間入りだ、そして』
声はその後、こう続ける。
『今、この街で生きているニンゲンは君だけだ、リキト』
これは、夢ではない、現実だ、肌に感じる炎の熱、煙やガスが大気の殆どを締めたことによる匂いや息苦しさ、これらは全て……現実なのだ。
その現実が突きつけられた瞬間、渡瀬はその場に仰向けで倒れ込み、笑った。
ハハハ、なんてリアルな夢なのだろうか、と。
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