異世界では悔いの残らないよう頑張ります!!

少年期

#36 親友、約束

　俺がこの世界に召喚された意味なんてわからないし、理解したくもない、だから俺は自分で自分の使命を与えることにした、そうすれば、俺のしたいこと＝使命、となるから。
　そう、これは我儘だ、でも我儘は我儘でも他者の為にきっとなる我儘だ、もちろんこれすらも我儘だと言える、結局人間は我儘で動いてしまうものなのだ。

「かつての親友として、俺は、中山祐也は、レイ=グラントは、お前を止めてみせる!!」
「はっ、そんなゴミみたいな剣と剣術で何ができるって言うんですか、そのまま絶望して朽ちて仕舞えば良かったのに……」
「何ができるか、なんてわからない、でも、俺はお前を止めなきゃならない、親友として」
「フッ……フハハッ!!シンユウ!!そう、そのクソどうでも良くて、クズみたいな関係のために自分の命を賭けるバカですね!!知ってますよ!!この身体の主のことだ!!フハハハハハッ!!愉快愉快!!全く愉快だなぁ～……捻り潰したくなるほど愉快で……消してしまいたくなるほど、不愉快です」

　瞬間、背後から無数の触手が俺に襲いかかる、それを俺は、出来損ないの剣でいなし、薙ぎ払う。
　そしてゆっくりとクルシュの方へと歩く。

「俺の身体にある、願望増幅能力の訳がわかったよ、あれは願望により能力を伸ばすだけじゃない」
「何をブツブツと……!!」

　また触手が放たれる、がしかし、俺の無詠唱防御魔法により防がれる。

「なっ……！」
「目の前の強敵を倒す為にあるんだ、相手と攻撃を交わすことによって、相手の力を感じ取り、その力の波動に『勝ちたい』という願望を乗せれば簡単、特攻能力の出来上がり」
「そんな馬鹿げたことがあるか!!そんなの、御伽話の机上の空論に過ぎない!!」
「いや、ある、ほら、今君は触手で俺に一撃も攻撃を与えれてないじゃないか、これが対魔法攻撃耐性」
「ぐっ!!それなら!!」

　クルシュは懐に忍ばせていた短刀で素早く不意打ちを仕掛ける。

「2番」

　しかし、その不意打ちも突如として現れたシールドによって弾かれる。
　そして、息をつく間もなく鳩尾に拳打を叩き込まれる。

「ぅおぇっ……!!」
「これが危機感知能力の上昇と反射神経の感度上昇、あと筋力上昇だ」
「く……そっ!!」
「あ、ビームは効かないぞ、結局はあれは魔術を通した魔法だからな」
「なっ……」

　危機感知能力の上昇による超人的な先読み、未来予知と言っても問題はないだろう。
　それほどまで、今、俺の能力は上昇している。

「とりあえず、今、俺はお前を止めないといけない、そのためだけに俺はいま能力を使っている、だから、お前は俺に勝てない、お前がどんな手を使おうと、俺は常に最適な対処をしよう、お前が諦めて止まるまで」
「クソ!!畜生!!チクショウ!!ちくしょう!!うべらっ!!」
「憎しみに身を任せるのはあまり良くないのはわかってる、でも、今はこうでもしないと落ち着かない」

　俺はクルシュの頭を殴りつけ、蹴り上げ、落ちてきたところにボディブローをお見舞いする。
　
「い、痛いぃ……痛いよぉ……」
「何を泣いてるんだ？お前が殺したここの人達は泣くことすら許されず、お前に殺された、それなのにお前は泣くことが許されるのか、なぜだ」
「うっぐ……えっぐ……」
「答えろ」
「ぞ、ぞんだの!!ぼくがしどゅはずだいだど!!」
「答えとしては赤点だな、そして質問その2だ、幹太君の力を使って何をするつもりだったか教えろ」
「話せばだずげで、くでるのか？」
「あぁ、俺の怒りは覚めるだろう」
「ターシャが秘めている力を魔王に引き渡し、もう一度暗黒の時代を齎そうとした、ぞれだげだ」
「なるほどな、それじゃあ、ここで死んだ人たちの分の怒りを貰ってけ、それがお前の冥土の土産だ」
「ばっで!!なんで!!だずげでくでるって！待て、ごごでぼぐを殺じでも、根本的な解決にはならないぞ!!」
「あぁ……知ってるさ、お前の思考は全部読めてる、だから、お前を殺して俺は遠い過去に飛ぶ、お前みたいな、ある昔の物語に踊らされ、犠牲者を大量に出す人間を出さないために、俺は最弱の女勇者を救い、ターシャを救って、ここで死んだ人達の死をなかったことにする、その前に、お前を殺す、未来では仲良くしたいな、クルシュ、そしてサヨナラだ、シンユウ」
「待って!!イヤだ!!ヤダ!!アっ……」

　俺の振り下ろした拳により、クルシュは絶命する。
　初めて素手で人を殺したにも関わらず何も感じなくなってしまっている俺は壊れてしまったんだろう、だけど、それでいいのだ、俺が壊れてしまっても、他の人々が幸せであれば。

「行ってくる、ターシャ、君を普通の女の子にしてくるよ」
「おい!!レイ!!どうしたンだよ、この状況は……!?」

　様子を見に来たのだろう、クルーゼが俺に声をかける、その顔は青ざめている。

「クルーゼ……レイラは……ごめん……守れなかった、だけど、俺、頑張るから、レイラが死なないような世界にしてくるから……」
「は？何言ってンだよ！訳がわからねぇよ!!どこに行くってンだよ!!」
「昔……かな、それじゃあ」
「待て!!おい！レイ!!」

　俺はクルーゼの静止を聞かず、詠唱を開始する。

「【回れ廻れ　円環の理よ　正せ正せ　過去の過ちを　先へ先へ　自らの赴くままに　軌跡を辿れよ　改変者　進め進め　それがいつかは道となる】」

　瞬間、俺の体は霧に包まれ、霧が竜巻のようになり、強い暴風に体が持ってかれそうになる。
　しかし、しっかりと踏ん張りこう叫ぶ。

「再構成リクリエイト!!」

　瞬間、俺の身体は魔力となり、空気に溶けていく、これからどうなるかはわからない、でも、やるしかないのだ、これが、俺に与えられた、転生者としての、使命なのだから…………………