Black Daiamond

Ray

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1, 突然の訪問者 全ての始まり

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    つまらない生活、つまらない学校、つまらない授業。何もかも同じ事の繰り返し───





(来る…)

    私は直感的にそう思った。
    外は真っ黒な厚い雲に覆われ、雨がザーザーと降っている。あと少しで雷が鳴りそうだ。
    私の名は、四ツ葉   怜。
    今、「来る」と思ったのは、この見る人を不安にさせるこの天気と(だからクラスの皆はそわそわしている)さっき、私がノートいっぱいにかいた魔方陣のこと。なんか、パッと思い浮かんでかいてみた。


ゴロゴロゴロ


    ついに雷が鳴った。


バーン


    鼓膜が破れそうなくらいの大きな音を出して雷が落ちた。
    クラスの皆は、一瞬だけ静かになり、また騒ぎだした。教室、廊下含め、学校全体の電気が消えたのだから仕方ない。
    あ、まだ話途中だった。この学校は、K小学校。全校生徒は300~400人くらいの小さな小学校だ。私のいるこのクラスは6ー2。2クラスしかないのに1クラスで20人ぐらいという少なすぎるクラスだ。 
    今の時期は冬。でも、もうそろそろ春になる、3月18日。卒業式まで約1週間。
    後は…と、私の特徴は腰くらいまである黒くて長い髪に黒いきり目。特技は足蹴だ。

(…五月蝿い)

    この教室どんだけ五月蝿いんだ。少し黙っててくれないか…。思わずまだ騒いでいる教室に顔をしかめる。
    そう言えば学校中の全部の電気が消えたんだっけ?まだ、復帰しないのか。仕事しろ。セン公。
    外は始めに言ったように真っ黒な厚い雲に覆われている上に電気が消えたから真っ暗だ。
     片手を頬に当てながら暫く教室の皆を見ていたが、つまらなくなり何の気なしに窓に視線を移した。

「………」

     周りの家とかの電気が全部消えている。それにより、町がまるで闇のカーテンで隠した夜のような静けさに陥っている。この町全ての電気が落ちているらしい。…どうやら、セン公が仕事をしていないわけではなかったみたいだ。
    だが、そんな暗闇だからこそ誰も何も見ることが出来ない。時々、「イテッ」や「誰だよ、俺の足踏んだやつ」と、聞こえる。動かなくじっとしていれば良いものを…。
    私?私はあんな無闇に動かない。そんなことしなくても見えるからな。私、何故か昔から夜目が効くんだ。視力はさして良くもないのに、な。だから教室の様子は昼間のようにくっきりと見える。
     先生が、「静かに!」と、叫んでいるが誰も聞く耳を持たずに騒いでいる。皆パニクっているからだ。

その時───ピカッ、と雷が落ちた。大きな音とともに周りが昼間のように明るくなる。
    その時だ。ものすごく大きな鳥が女と男を乗せて、教室に飛び込んできたのは。





 


    大きな鳥が女と男を乗せて飛び込んできた瞬間、教室は静かになった。

(やっと静かになった)

    視線を横にずらすと、皆が皆、(先生も含め)口をだらりと開け、立ったまま魂が抜けたようにつっ立っている。私も吃驚はしたが、流石にあんな風にはならない。
    そして次は瞳をゆっくりと動かし、こんな日に急にきた訪問者──大きな鳥と女と男を見た。
     大きな鳥は大型犬みたくブルブルと体を振るってガラスを落としているし、男と女もガラスを払って落としている。
    そりゃそうだ。ガラスを割って教室に飛び込んで来たんだから。…誰が、ガラス代払うんだ?私も1度学校の窓ガラスを割った事あるけど弁償させられたな。まぁ、はじめからヒビが入ってたんだけど。
    さて、そんな訪問者達は窓を突き破ってきたのに関わらず、傷1つない。不思議だ。いや、その理由は自分が1番分かっているのだろうか?
    色々な事を考えている私に男が、前置き無しに、

「おい、お前魔女だろう?」

   そう言ってきた。中々に不躾な男だ。

「……」

    私は不思議と首を縦に振っていた。
    何故だか『魔女』という言葉が懐かしく感じる。そして、初対面の筈なのに私は不思議とこの招かれざる訪問者達に親近感を持っていた。いや、親近感と言えば建前はいいようだが、それは好奇心に限り無く近い。

「ちょっと、そんなに急に話しかけてどうするの!怜ちゃんがびっくりするじゃない。これだから、脳細胞が足りない男は…」

    叫んでいる訳ではないのにリンとよく通る声。
    別に驚いてはいない。ただ、少し頭の整理がつかないだけだ。それより、何故私の名を知っているんだ?そっちの方が大問題だ。おい、政府仕事しろ。個人情報駄々漏れだぞ。どうなっているんだ。
    その声の主は男と一緒に来ていた女だ。今も尚男を怒鳴り付けている。
    男が、「お前には関係ないだろう。ブスが」と、小さな声で言ったが、女にははっきりと聞こえたようだ。その証拠に軽く舌打ちをした。…痴話ゲンカか?仲良いな。だが、余所でやってくれると嬉しい。
    再度、視線を動かし、観察を続けることにした。
     男は腰に届くほどの長さのまるで本物のエメラルドのようなエメラルド色の髪。ただ、瞳は血のように真っ赤な赤色。マント…いやローブと言うのだろうか。それを着ていて、留め金も親指の爪ほどの傷ひとつない見事なエメラルド。…本物なのだろうか?
     髪はくせっ毛1つもない見事なストレートの髪。見た目を気にする人なのだろうか。艶があって見える。
     髪色、瞳の色、その他諸々日本では滅多にお見かけしないような風貌。髪色は染めた訳ではない自然な色。瞳も同じく。…ますます意味が分からない。
     ただその中でも一等気になるのは口からのぞくまるで獣を思い出させるような長い犬歯…。
    女は夜空をそのまま移したような綺麗な色。男と同じく腰に届くほどの長い、恐らく天然の少しカールがかかった髪。ルビー色…そんな色が存在するのか分からないが、そう例えれるほどの光によっては薄く桃色かかって見える見事な深紅のローブ。留め金は、男同様に高価そうでそれでいて清楚感のある大きさのルビー。
    ただ、瞳の色だけがルビー色でなく赤、白、緑、黄…と、絶えず色が変わっている。
    2人とも顔立ちは整っており、所謂美形という顔だった。人外離れしているような程の美形。…いや、
(そもそも人間ではなさそうだな)
    2人から僅かに視線をずらせば、大きな鳥が毛繕いをしているのが見えた。
    黒い羽に包まれており、その中で異常に目をひく、金色に近い黄色の瞳が輝いている。思い起こされるのは烏。…触るとふわふわしていそうだ。

    何分経っただろうか。やっと2人がケンカをやめた。女が、コホンと軽く咳払いをしたため、観察はやめにした。

「御免なさいね。急に押し掛けてケンカしちゃって。この長髪の大馬鹿野郎長髪のオカマみたいな大馬鹿野郎・・・・・・・・・・・・・・・は、ほっとけばいいから。
    えっ…と、まずは遅れたけれど自己紹介からね。私の名前はルビー。この子はカゼー。たよりになる相棒よ。よろしくね。………あっ、忘れてたわ。この長髪の大馬鹿野郎はエメラルド。大馬鹿か男女都でも好きなように呼んでおけばいいわ。「…おい」ところで怜ちゃん、魔法に興味ない?1人前の魔女になるための学校へ通わない?」

    女…いやルビーサンとやらも大馬鹿…もといエメラルドサンよりは話すのは急じゃないが、一気に話しすぎ。状況を飲むのに時間がかかるし何よりニッコリと笑っているが、凄い毒舌だ。…いっそ清々しい。
    エメラルドサンはルビーサンが私に話しかけた時に自分のことを笑顔で貶していたからだろうか、眉間には皺がよっており、酷く機嫌が悪くなっている。

「…っざけんじゃねぇよ、好きに言わせてやれば…このクソアマ

    低く唸るようにそう言葉を漏らす彼は明らかに不機嫌。あんなに見事なストレートの髪が蛇の形になってルビーを襲っている。それまた驚いたことにその蛇の形の髪は、机や椅子、色々な物を砕いている。…が。

「あら?それだけ言われる貴方に問題あるからじゃないかしら?…もしかして自覚がなかっりするの?だったら、ごめんなさい。悪いことしちゃったわね」

    煽る、煽る。しかも見事な笑顔で。
    ビキッと血管が切れるような音が聞こえたような気がする。
    そして、先程とは比にならないほどの破壊音。ドガッ、グシャ、メキョ、明らかに立ててはいけない音を出しながら崩壊していく教室。

「………」

    お綺麗な顔を見事に歪め、次々に崩壊させていくエメラルドサン。そして、それらを軽やかにかわすルビーサン。尚も笑顔で煽りながら。…あ、扉吹き飛んだ。
    それをカゼーが仲裁に入るように止めようとしている。見る限り、さっきから分かってたけが、この2人は物凄く仲が悪いようだ。

「……」

    さて、そろそろ観客にまわるのを止めようか。そう、結論を出す。既に原型が取り止められていないような教室だった物の場で変わらず喧嘩をしている2人。不思議と此方に被害はない。教室の皆にも、だ。そこだけが幸いと言うべきか。
    いい加減2人を止めようとする。が、どうしたものか…。取り敢えず、案はあるにはある。別にいいかなとも思っている。しかし、これ聞こえるのか?もう音は工事中かと思うほどに響いているし、聞こえるか定かじゃない。

(まぁ…確めてみるか)

    軽く息を吸い、案を口に出す。もしくは本当にそう思ったのか後から考えても自分でも分からない。
    だけど、確かに分かったことはこの扉を開けばきっとこのつまらない生活から抜け出せると思ったのもまた事実。
    だから…
「───1人前の魔女になりたい」
    ポツリ、と出来るだけ大きな声でそう口に出す。自分でも言ったことには内心吃驚している。それよりも清々しい気持ちになっていた。
    そして、笑みを浮かべた。笑ったことがあまりないため、顔の筋肉がつった。しかし、きっとこの先もっと笑うことが増えるだろう。そうしたら、もっと自然に笑えるはずだ。確信などはないがふと、そう思った。
    こんな、つまらない学校よりずっと楽しいことが起こりそうな予感がする。目の前にそのチャンスがあるんだ。逃してたまるものか。人生、楽しんだもの勝ちだ。






    しかし、彼女は気がつかなかった。いや、きっと誰も気がつかなかっただろう。この決断が運命の歯車を大きく動かしたことに。


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