Black Daiamond

Ray

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3, 杖

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「どこからまわる?」
    ルーの声でハッと我に返った。
    どれだけ見ても飽きないだろうと思えるほど幻想的で興味深い場所だったからだ。
    白いレンガが太陽に反射してキラキラと輝き、何百店とある店に興味を奮い立たせる看板の数々、ショーケースから覗く普通の店には売っていないであろう品々。
    そして、色々な種族が行き交う街──

    夢なのかと思うぐらいの普通とは、少し…いやかなり離れている。しかし、これが此方側の普通。
(面白い…)
    思わずそう思ってしまう。
    そんな場所に居るのはなんだか不思議な感じ…夢心地を持ってしまう。そんな場所だ。




「…そもそも、何を買わなきゃいけないんだ?」
    顎に軽く手を当て、思案をする。
    学校では小学校と同じように必ず買わないといけないものがある。それにそれを買うにしてもそれなりにシンプルな物や動きやすい物など決まりと、言うか規則があるからだ。そう考えながら、小学校に入る前に両親と入学準備をしたのを思い出す。
    …そういえば、これって授業中に勝手に抜け出したってことになるよな。
    ヤバい。
    居ないことに気づかれて、家に電話されたら厄介なことになる。なんだか、血の気が引けたように思える。
    そんな、私の思っていることが分かったのかルーが、
「学校のことは気にしないで。
    授業はそのまま続いているけれど、怜ちゃんが居なくなっていることには誰も気がつかないと思うわ。
    怜ちゃんそっくりの幻覚を見せているから。下校時刻までに家に帰れば、怪しまれないはずよ。
    …急に来たのは、本当に御免なさい。この日にしか予定が合わなくて…。それと、拉致するような形で連れてきちゃったことも…。
    でもね、そもそもの話ああやって窓に飛び込んだのは、あの馬鹿のせいよ。私は止めたのに。…大体、下界には階段と言うものがあるのに、ね」
    途中から愚痴になってきているけれども、良かった。安心した。
「馬鹿は余計だ…。お前、絶対わざとだろ…!」
    …どちらかといえば安心できない。











「エド、何を買わなきゃ行けないんだ?教えてくれ」
    ルーとエドの間にスルリと入り、どうどうと落ち着かせながら、そう問う。
「…教科書、筆記用具一式、大鍋、陶磁製の乳鉢と乳棒、炎蜥蜴の皮の手袋、後は…杖、制服……欲しければ魔女帽子って、ところだな」
    服から取り出した小さな紙切れに書かれているであろう文字を目で追いながら言った。
「何から、買いにいく?」
    その紙を横から見ながら、ルーが聞いてくる。
「杖から買った方がいい」
    エドがぼそりと言った。
「…確かにそうね。その方がこの後、まわりやすいし。それに、杖がないと色々困ることもあるだろうし…。
    あんたにしては、いいこと言うじゃない」
    ルーが最後にエドが怒りそうなことをさらりと言う。何かのキレる音がした。
    あっ、喧嘩が始まる。







    店の扉を開けると

カランコロン

    古い鈴の音が聞こえる。
    店の中に入ると、やっぱり外見と同じで全体的に真っ白だ。他の店もきっとそうなんだろう。  
    店の中をぐるりと見渡す。店主は…居ないな。そもそも、人の気配がない。
    店は、壁1面が棚で埋まっている。その棚という棚に杖が入っていると思われる箱がびっしりと詰め込まれている。
(これ、集合体恐怖症の人には地獄だな)
     そんな、どうでもいいことが頭をよぎった。



ポンッ



    どうでもいいことも考えながら、杖の箱が入っていると思われしき箱を見ていると、軽い音と白い煙と共に白い長い髪の青年が現れた。
    白い靄がかかったような、霧のような瞳をしている。じっと見ていると吸い込まれるような、そんな瞳だ。
「これは、これは…珍しい客だね。

    ようこそ、我が杖の店へ」
    霧の彼方から聞こえてくるような声だ。そのせいなのか、はじめの言葉が聞き取れなかった。一体何て言ったんだ?
「久しぶりだな。何年ぶりだ?」
「本当に久しぶりね。フォッグ」
    親しげにエドとルーが声を掛ける。
「ルビーさんとエメラルドさん、お久しぶりです。100何年ぶりですね。
    それで、今日はこの子の杖を買いに?」
    どうやら、知り合いのようだ。意外と知り合いと会うんだな。いや、知り合いの店の方が信頼できるからなのか。
「あぁ」
    エドが短く返事をする。
    青年が、私の方を向いて、
「じゃあ、幾つか質問するけどいいかな?」
    そう聞いた。首を縦にふる。
「利き手は?」
    右手をつき出す。「ちょっと、触るね」と、言われ、何やら手を調べているようだ。調べながら、
「誕生日は?」
「4月25日」
「血液型は?」
「たしか…B型」
「特技は?」
「足蹴り」
「趣味は?」
「読書、お菓子作り…あと、言っても話を聞かない男の調教」
「「………」」
    質問はそれで終わりのようだ。
    …と、言うか最後の間なんだ?何故、ルーもエドも黙っているんだ?…3人とも揃いも揃ってその目やめてくれ。そんな、なんか可哀想な人を見るような目でみるのやめてくれ。

    最後に私の目をじっと見た。
    見つめ返す。

    ……。

「よし…大体分かったよ」


パチンッ


    指をならした。
    店中にあった棚に詰め込まれていた恐らく杖が入っていると思われる箱が意思を持ったかのように私の前にまで飛んできて止まった。
    3つの箱だ。
「えーと、これがオニキスだね」
    箱をパカッと開けながら、フォッグ(?)さんがそう言う。
「…?」
    箱の中に入っていたのは…杖じゃなかった。

    そこには杖とは似ても似つかないアクセサリーがあった。
    ふかふかのクッション(?)の上に黒いオニキスのブレスレット。そのブレスレットについているオニキスは大、小、大…と、交互に綺麗に並んでいる。

    暫く観察をしていたが、フォッグさんに促され、手に取ろうとオニキスのブレスレットに触れた途端…


バチンッ


    オニキスのブレスレットに触れた手を軽くふるう。地味に痛い。まるで静電気にあたったようにビリッときた。
「…合わなかった。これじゃなかったのかな?」
    フォッグさんが呟くように言う。
「これは、何なんだ?」
    思わず聞く。
「拒絶反応。ここの店の杖は全て宝石から成り立っている。たとえ、物といえども意志はある。…個性様々な杖が集う場所、それが此所」
    …つまり、この杖は私と相性が良くなかった。と、言う感じなのか?
「はい、じゃあ次」
     フォッグさんが次の箱をパカッと開けながら言った。その目は爛々と輝いている。まるでおもちゃを前にした子供のように。
    またやるのか、地味に痛いから何かヤなんだが…。

    次は、イヤリングだ。
    嵌め込まれているのは、透明感のある黒いスピネル。

    イヤリングか…。一応母に「たまには女の子らしく着飾りなさい」と、言われ買って貰っているから持っているが、あれって長い間つけてると耳が痛くなるんだよな。あまり好んでつけようと思えない代物である。…そういえばその買って貰ったイヤリング何処置いたっけ?…………、……忘れた。まぁ、…いいか。

     なんて杖とは関係のないことを思いつつ、そっと触る。


バチンッ



    うん。分かってた…が、やっぱり地味に痛い。


    と、すると次がアタリか?



    次は、ネックレス。金のチェーンが付いている。宝石はブラックダイヤモンドだ。

(綺麗…)

    思わずそう思ってしまうほど綺麗だ。

    そっと触る。

    …次はビリッとこなかった。代わりに触れたところから温かい感じがする。

    …そして、黒いキラキラと輝く杖になった。
    んっ?
    何で杖になった?

    あ!そうだ。杖を買いに来ていたんだ。
    なんか、宝石のアクセサリーを見ていたから、杖のことが頭から抜けていた。…いや、一応、覚えてはいたんだけどな…いたんだけどな。なんと言うか…うまく言えないけどこの絵本とか小説でよく見るイメージの違いとの差がちょっとな…。





「やはり、ダイヤモンド家か…」





    そう言ったフォッグの声は空気と共に消えた。






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