Black Daiamond

Ray

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7, 空飛ぶ汽車

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    扉を開けると私よりやや背が高い人がいた。
    腰まで届くぐらいの長さで海のような水色で、毛先に向かうにつれて青が濃くなっているグラデーションになっている澄んだ髪色をゆらりとゆらし、それを金色の青い宝石が埋め込まれたマジェステで高い位置にポニーテールのように留めている。瞳も髪と同じ青い澄んだ海のような色だが、その瞳は揺れている。着ている服は、髪と瞳の色に合わせたのか海のような青一色で銀色の糸で細かい刺繍をしてあるガラビア。エメラルドグリーンに近い色のロングマントを着ている人が立っていた。立っていた…は、いいんだがこの人って──
野郎が、乙女の個室に遠慮もなく入ってくるなんて無粋ではなくテ?」
──男だ。
    一見女に見えるけど男だ。
「ご、ごめんなさい。…でも他の個室は一杯一杯で……」
    今にも泣きそうにして話す声は、男にしてはやや高い声。…これは、声変わりしているのか?
「だからなn「ルナ。まだ、2人しか居なかったんだ。一杯一杯ではない。それに男とかはあまり関係ないと思うな。…別にいいだろう?」
    ルナの声を遮るようにそう言う。
「……………、…………分かりましタ。ブラック姉様がそう言うならば…」
    嫌々と本当に渋々と言う感じで了解した。











「ぼ、僕の名前はティア・アクアマリン…です」
「私は、ブラックダイヤモンドだ。気軽にブラックとでも呼んでくれ。…よろしくな」
「……わたくしは、ルナ・モルガナイトですワ」
    取り敢えず自己紹介をしたが、ルナよ。君は警戒した猫か。そしてあまり私を抱き締めるな。力が地味に強い。

    さて、これからどうするか…。どうしよもない、微妙な空気。(原因は主にルナだが)
    指を軽く顎にあてながら考える。………何もいい案が出ない。



コンコンッ



    また、扉の叩く音が聞こえた。
    扉を開いてみれば、立っていたのは同じ入学生──ではなく、食べ物やら飲み物やら色んな物が積んでいるカートだった。もう一度言おうカート・・・だった。

「…?」
    カート?

「こっちよ!こっち!」
    カートに埋めれるような形で辛うじて女の人が見えた。ふっくらとした体型で、真っ赤なふわふわのワンピースに炎のような燃えるような赤毛。人懐っこい笑みを浮かべているおばさんがいた。
「…?」
    首を傾げる。服を買ったときにいた店の店主と全く同じじゃないか? 
    もう1度顔をよく見る。にこにこと笑う表情、薄い緑色のワンピースを着ているふっくらとしたおばさん…色が違うだけで全く同じだ。…いや、目の下に泣き黒子がある。こんなのなかったはずだが。
    私の視線に気がついたのかおばさんは、私の方を見て、
「あらあら。もしかして私の妹と会ったのかしら?私達、双子なのよ。私が姉の」
    嬉しそうに笑った。
    ……マジか。双子ってはじめて見たが、本当にそっくりなんだな。
「汽車販売の方ですワ。ブラック姉様は、何か買いますカ?」
    説明をされても尚、少し驚いている私を見て、ルナが説明してくれる。
    汽車販売か…。
    折角だし何か買ってみるか。ルーとエドに紙幣を何枚か貰っている。何か買えるはずだ。
「……」
     …そう言えばこれって、日本円でいくらなのだろうか?
    財布から取り出した紙幣を見つめ、そう考えた。











「これとこれとこれ、あと…これとこれも。…足りるか?」
    全くと言っていいほど紙幣の使い方が分からないため、汽車販売のおばさんに持っている紙幣を全部渡す。要は丸投げだ。
「足りるわ。……はい。これがお釣りね。しっかりと持っておくのよ」
    …何か母親の方のばあちゃんを思い出した。
「わたくしは、これを3つとこれとこれを2つにしますワ」
「…ぼ、僕は、これと…これを…ください」
    それぞれ、食べたいものを購入していく。

「あと、1分くらいで発車するわよ。着くまでに3時間ぐらいかかるから、寝るなり買ったものを食べるなりゆっくりした方がいいわ。あっちに着いたら少しバタバタすると思うしね」
    にこにこと人好きのする笑みを浮かべながら、ティアの購入した物を包んで渡しながらそう教えてくれた。











「…き、君達大分買ったね」
    購入した物が置いてある机を羨ましそうに見ながらティアがそう言った。
「そうか?」
    首を傾げる。
    珍しい食べ物や飲み物が多かったため、興味を持った物を少しずつ買った。だが…そんなに量はないはずだ。
「………机の様子をよく見てみなよ」
    机を挟んで2つ置かれているソファーに座りながら、もう一度机の様子を見る(ティアが来たことでルナが私が座っているソファーに何故か移動した)。

ブラックの購入した物…机の二分の一
ルナの購入した物…机の三分の一
ティアの購入した物…机の端

「……確かに少し…買いすぎた、か…?」
    机の状況をもう一度よく見て、理解する。
「そうだ。ティア…でいいんだよな?一緒に食べるか?」
「…えっ?……いいの?」
    私が買った一つのお菓子の包装紙を剥がしながらそう聞いた。聞いた──聞いてはないな。言葉と行動が矛盾しているぞ。
    目は口ほどに物を言う。ならぬ、手は口より物を言う。だな。
「……ブラック姉様…」
    不満気に私の服を軽く引っ張る。
「ルナも私のを食べるか?…いや、シェアでもするk「しますワ!」
    即答だな。まだ、話している途中だぞ?
「じゃあ、そうするか」
    買った物の中からカラフルな飴玉が20個ほど入っている瓶を取り、蓋を開けながらそう決めた時──



ガタンッ



    軽い衝撃がして、汽車が動き始めた。

    正方形の窓から段々加速してきて、次々に変わる景色を見て、ふと、あることに気がつく。
「──この汽車、飛んでいないか?」
    始めは段々と広がって行く青々とした草原から青い空が見えてきたところでそう2人に聞く。
「飛んでいますワ。だって下界から魔法界に飛ばなきゃいけないですもノ」
    …よく分からないけど、次元?いや、世界を越えると言う感じなのか?
    さっき手に取った瓶の中から薄い桃色の飴を選び、口に放り込む。
    始めは、桃の味だったが途中から林檎、葡萄、苺、たまにチョコレートなど…色々と味が変わっていく。
    味が変わる飴は食べたことはあるが、あれは味は2種類が限界だったし、味の変わり目は2つの味が混ざったような感じであまり美味しくなかった記憶がある。
    それに比べてこれは混ざることなくコロッと味が変わる。…たまに青汁みたいなひどい味もあったが。
    瓶に張ってある商品名を見ると、何か文字が書かれているのだか読めない。英語ではないし、ロシア語でもない。ましてはアラビア語でもない。全く見たことのない文字だ。 
「…ルナ。これは、なんと読むんだ?」
    取り敢えず聞いてみることにした。
「どれですカ?…『多彩飴』ですワ。
    ルーン文字で書かれていますノ。魔法界では基本的に使われている文字はルーン文字ですワ。わたくしの持っている本も殆どがルーン文字で書かれていまス」
    …ルーン文字か。……確か、北ヨーロッパが3世紀~14世紀辺りで使っていた文字だったけ?
「これは、『杖チョコ』。ランダムで様々な種類のチョコの杖が出てきまス。…これは、『梟チョコレート』。美味しいですが、五月蝿いですし、早く食べないと何処かに飛んでいきまス。…これは、『妖精ドロップ』。一時的に背中から羽が生えてきて飛ぶことができまス。色によって出てくる羽の種類が違い、ドロップを舐め続けている限りは自由に飛べまス。…それは───」
    ルナが1つずつ説明をしてくれる。
    それを聞きながら、パクパクと食べていく。ティアが『育ててマンドラゴラ!』という食べ物の育て終わったキャンディーやら、チョコやら、グミのマンドラゴラを片手に「食べるペース早くないか…?」と、呟いていたような気がするがたぶん気のせいだろう。うん、それにしても全部美味しい。











    粗方食べ終わった。
    食べ終わったお菓子の包装紙を一ヶ所に集め、小山を作り、大分スッキリした机で白いシンプルなお皿を見た。ルナもさっき説明しなかったし、なんなんだ?これ。
    見た目は何処にでも売っているようなシンプルな丸い皿。フチのところ金色の…恐らく、ルーン文字で何やら彫ってある。皿の中心には、名刺のような長方形の金色のカードがついている。よくよく見てみると、そこに文字が書かれているがこれもルーン文字なのだろうか。全く読めないため、よく分からない。
「ルナ。これって、何なんだ?」
    これに限っては、頼るしかない。
「それは、『10人の知恵』ですワ。そこに書かれているデザートとか食事の名前を言うか文字を押すかで10回だけ出すことができるんですノ。
上から
アップルパイ
エクレア
エンゼルケーキ
カスタードプディング
ガトーショコラ
クリームホーン
クレープ
コロンビエ
サバラン
サントノーレ
スフレ
パンケーキ
シャーベット
アイスクリーム
ジェラート
シュークリーム
フレンチトースト
ガレット・デ・ロワ
シュトルーゲル
ショートケーキ
ティラミス
チョコレート
ソリッドチョコレート
ゼリー
タルトレット
ダックワーズ
タフィー
デニッシュペーストリー
トルテ
ドーナツ
ヌガー
バームクーヘン
パウンドケーキ
バターケーキ
ババ
パルミエ
ババロア
タルト
フラン
ホットケーキ
マシュマロ
マドレーヌ
マリングラッセ
マカロン
ミルフィーユ
ムース
リーフパイ
チーズケーキ
レアチーズケーキ
ロールケーキ
アメリカンワッフル
ベルギーワッフル
ハンバーガー
ポテト
ピザ
フルーツピザ──…」
「ルナ、ストップ!」
    金色の紙を持って読んでいるルナを思わず止める。
「どうしたんですノ?」
「いや、長い。一体何種類あるんだ?」
    コテリと首を傾げるルナを見て、聞いてみる。いや、長すぎて聞いていたティアが船をこぎ始めてたよ。
「100種類ですワ。『10人の知恵』と言う名前の通り10人の魔女・魔法使いが1人10つずつ知恵を絞って作ったものですワ」
「……」
    気にしたら負けだ。種類が多いことはいいことだ。うん、いいことだ。沢山種類あるから選び放題だしね。うん。きっとそうだ。
「…その種類だけあるんだったらその紙に入りきらないはずだが、どうやって読んだんだ?」
    『パチパチジュース』と言う炭酸よりパチパチ感が強いジュースを飲みながら聞いてみる。
「取ってみたら分かりますワ」
   紙を取ってみた。
    案外簡単に取れたな。と、紙をとった瞬間目の前にゲームのステータスみたいなのが現れた。
「っわ…!」
    思わず声をあげる。
「ブラック姉様は、何が食べたいですカ?」
「あ、あぁ。フレンチトーストを食べたいな」
    好きなんだ、フレンチトースト。まぁ、パンプディングも好きだが。
「フレンチトーストですネ?17番目ですワ」
    17番目まで数えて、出てきたステータスみたいなのを文字を押す。



ポンッ



    そう軽い音をたて湯気がたっているフレンチトーストが皿に現れた。
    ルナも10人の知恵を手に取り、苺のタルトレットを出した。ティアは、何の肉かはわからないがステーキを出していた。適当に押したら、ステーキになったらしい。

    それぞれが出した物を食べながら、色んな話をした。
    暫く話していたら、ティアのどもるような喋り方も直ってきたし、ルナの変わった喋り方だった理由も分かった。使っている言葉は、お嬢様言葉で何かカタコトっぽいのは、ルナが日本語を喋っているかららしい。普通はオプション的な感じで付いている杖の自動翻訳機能的なので伝わるらしいが。ルナは、全言語が喋れるらしい。…凄いな。



    暫く話していたら、段々と眠くなってきため、ベッドのある部屋に移動し、懐中時計を見た。汽車販売のおばさんの言っていることが正しいなら、あと、2時間ぐらいで着くはずだ。
    それまで眠っておこう。大きく欠伸をし、ベッドに身を預け、学校のことを少し楽しみにしながら目を閉じた。











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