彷徨えるジパング~蒙古襲来編~

花田 一劫

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第19章 穏便の橘田

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モンゴル帝国との会談後、首相官邸では、モンゴル帝国軍の対応について秘密裏の会合を開いていた。
出席者は、橘田首相、矢橋内閣官房長官、川原防衛大臣、森上陸上幕僚長、山町海上幕僚長、外倉航空幕僚長、津行警察庁長官、瀬川海上保安庁長官達と、web参加としてモンゴル帝国軍と会ったことのある海上保安庁長の船長の上野浩之を入れての計9名が出席した。

「ご多忙のところお集まりいただきありがとうございます。本日の司会を務めさせていただく官房長官をしております矢橋です。どうぞよろしくお願い致します。さて、皆様方のご挨拶については急を要するため割愛させてさせて頂き忌憚のないご意見をお願いします。それでは、橘田首相から口火のご挨拶をお願いします。」
「ん…ん。橘田です。今、日本国は未曾有のタイムスリップに遭い国家存亡の危機に瀕しています。蒙古襲来、沖縄県の離反、資源調達の危機等々。全て難しい事案ばかりですが、まずはモンゴル帝国との今後の対応をどうすべきかです。モンゴル帝国からは資源調達について協力をしてもよいと嬉しいお言葉を頂きました。モンゴル帝国に対し、これから軍事を含め同盟国として認め交流を進めるべきかご意見を賜りたい。」
「午前中に行われたモンゴル帝国とのお見事な駆け引き、(総理に)感服しました。私はモンゴル帝国と同盟を図るべきと存じます。」閣僚の川原防衛大臣は胡麻を擂りつつ言った。
「発言しても宜しいですか。森上と言います。川原防衛大臣の前で恐縮ですが、現場としてはモンゴル帝国に信を置けるかです。歴史書によれば元寇は我が国の祖先の民達に対しひどい仕打ちをしたのが明白ですが、それでも今のモンゴル帝国は違うと言える根拠があるのでしょうか。」
「海上保安庁の瀬川です。web参加している上野二等海上保安監がモンゴル帝国軍人達に直接会っていますので、意見を聞いては如何でしょう。」
「上野さん、会話が聞こえてますか?矢橋です。君の考えを教えてくれるかな。」
「はい…。(モンゴル帝国副総帥の)洪茶丘元帥にお会いしましたが、彼は日本語も話し理知的な人物ですが、私は剣を少々やってきましたが、彼の気(オーラ)には殺気と言うか淀みが見えたのです。モンゴル帝国は必ず日本国を
攻めに来るとしか思えませんでした。」
橘田のこめかみに青筋が出ていた。
「上野さん、思いだけでは道筋を間違うことが大いにある。政治を司る総理としては、モンゴル帝国との和平を模索し日本国民へ生活の資源を供給することが肝要です。和平をするには先ずは我が国から自衛隊(軍)等を引き上げるのが一番と考える。自衛隊、警察、海上保安庁は全て壱岐の島近辺から引き揚げて欲しい。それとモンゴル帝国の兵達に対し取材等をやることによって、逆なでしたくないのでマスコミも島内立入禁止にしてください。…すぐに対応してください。」
この会合は結果ありきで、この裏にはモンゴル帝国からの資源提供の条件として、現地から自衛隊(軍)の引き揚げることがあり橘田がその条件を既に飲んだのであった。
「異論が…異議があります。14万人のモンゴル帝国の兵がいるのですよ。国民を守るため国防を司る自衛隊としては、引き揚げに賛成できません。」「森上陸上幕僚長に同意します。」「森上陸上幕僚長に同じく。」森上陸上幕僚長、山町海上幕僚長、外倉航空幕僚長は強く反論した。
「例えとして、モンゴル帝国が攻めてきたとします。弓矢、剣しか持っていないモンゴル兵に対し自衛隊はミサイル等を発射し人間14万人を皆殺しにするつもりですか。」と矢橋がかみついた。
「まあ、穏便に。穏便に…。警察と海上保安庁のみは一部残りモンゴル帝国の方や住民達の警備するのはどうでしょう。」橘田が折衷案を出し、渋々幕僚長達は頷かざる負えなかった。

橘田首相、矢橋内閣官房長官、川原防衛大臣が早々に帰った後、上野がモニター越しに「津行警察庁長官、瀬川海上保安庁長官、お待ちください。お話がございます。」と帰りを押し止めた。
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