彷徨えるジパング~バルチック艦隊編~

花田 一劫

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第1章 敗軍の将の如く

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時は西暦1905年(明治38年)2月、ビュルル~ン。ヒュルル~ン。ヒル~ン。ヒル~ン。ビュルル~ン。
その場には耳をつんざくような潮風が渦巻いていた。

極寒の日本海には冬ざれとなった想いにくれ…、一人…甲板で悲哀感に佇んでいる初老の仁(将校と見える人)がいる。
旅順港を船出して、その仁の想い(気重い)とは違い、大日本帝国軍の旗艦三笠は気勢(黒煙)を吐きつつ海原へ威光を放ち悠然と進んでいた。

その仁とは、人となりからして海軍大将の東郷平八郎なのか?

許しておくれ…。
如何にお国(日本)の為にとは申せ、御家族の大切な人(勇兵)達を…。1万5千4百人もの英霊兵(死者)にしてしもうた。

その仁は203高地の方角へ、跪き顔を甲板につけ詫びた。ひたすら詫びた。詫びた…。
が…、想いとは違い涙が出ることもなく、表情がお面のように全く変わらない。何故変わらぬ。何故だ。あの日から…。か。

西暦1904年(明治37年)11月26日夕刻より、
鉄壁の旅順要塞203高地(標高203m)に籠る赤鬼コロシア帝国軍(4万4千人)へ向け突撃し、何度も撤退を繰り返した大日本帝国軍(5万1千人)は特別予備隊、通称 白襷隊3113名を編成し突撃敢行を行った。
この白襷隊とは兵達は皆、白い逆さ襷をかけ、敵(コロシア帝国軍兵)の銃へ向け標的にばってんのついた胸を的(ターゲット)にさせることで、急所の頭を撃たれることを回避させ、丘を上り一歩でも敵に近づく決死(死人)隊であった。

バーン、バーン、ダダダダーン。ドガーン。
要塞からは、登ってくる白襷隊に対し、銃や、ガトリング砲、野砲が止めどなく撃ち出された。
白襷隊員の生身の身体から赤い花火が咲いたように、コロシア帝国軍から観えた。
幾つも、また、幾つも…。
「あ、あ、そりゃあっ。」「う・あ・あ~。」「天皇陛下~バンザ~イ。」「お母ちゃん~。」
「よし~お。元気でな。」「ゆう~こ。」
色んなところから白襷隊員達の最後の言葉が辛く響き渡った。
そんな日本陸軍の作戦は見事に当たり、白襷隊員達は、心臓を撃ち抜かれ停止しても脳は約15秒間動いている間に、コロシア帝国の要塞に取りつきコロシア帝国兵の身体へ銃剣を突き刺してから亡くなった。
コロシア帝国兵は生きたまま死に体となった日本兵に恐れおののいて、一人また一人逃げ出し旅順要塞陥落と繋がり、日本帝国軍の大勝利になった。

このことを回顧している敗軍の将の如く佇んでいる仁は、東郷平八郎ではなく旅順攻防戦の大日本帝国軍司令官の乃木希典大将であった。

その姿を三笠の艦橋の側から、静かにそっと見守っているのが海軍大将の東郷平八郎に他ならなかった。。

陸海軍の両巨頭が、何故、旗艦三笠にいるのか…。それは。
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